11枚目・タイムトラベル研究者【前編】②
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
「お前らよっぽどお人好しばっかりに助けてもらってきたんだなぁ~。
世の中ってものを知らなすぎるんじゃないか?」
博士の言葉に、鈴蘭はキョトンとした顔になった。
「それって、どういうこと?」
「少しは人を疑えって話さ・・・・・まっ、おかげで仕事はやりやすかったがな」
博士の言葉に、和やかな雰囲気は一瞬にして張り詰める。
鈴蘭も真顔になり、博士に問い詰める。
「それって、どういう意味ですか?」
「フッ、そういうしゃべり方や顔も出来るんじゃねぇか。
なに簡単な話さ、台拭きを取りに行ってた時に『異世界から来た人間がここに来てる』とか情報をリークしたんだ。
今頃、特殊工作員がこのビルの周りに配備されているだろうぜ。
もしかしたら、扉の前で突入準備中かもな」
そう言って博士はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
その言葉に6つの瞳がキッと博士に突き刺さる。
「泉美、スズ」
左右の2人に目配せをし、泉水はテーブルの脚を掴む。
無理やり外せば少々短いが、木刀だと思えば武器としては十分。
「泉美、場合によっては2人で〖五芒―――」
「博士・・・質の悪い悪戯は止めた方が良いと思うよ?
3人とも水輝流剣術の達人だから、斬りつけられたら怪我じゃすまないよ?」
大樹の言葉に、ピリピリしていた空気は一変した。
「そいつぁ勘弁だなぁ~・・・安易に人を信用しすぎるなって言いたかっただけなんだが、大暴れされた上に怪我させられたらたまらん。
って言うか、オレがウソついてるっていつ気が付いた?」
「・・・そんなのすぐに分かったよ」
博士の言葉に、大樹は少々あきれ顔で答える。
「異世界から来た人間がいるって聞いただけで、特殊工作員送り込む組織がどこにあるのさ?
そもそも日本にそんな組織ないでしょ?警察に言ったところでいたずら電話だって思われてすぐ切られるに決まってるし、万が一そんな組織が日本にあったとしても、連絡の取りようないでしょ?」
「だな、冷静に考えれば普通気が付くわな」
そう言って博士は小ばかにした顔で3人を見る。
小ばかにされた3人は怒りもあったが、それ以上に小学生でも見抜けるような冗談を、鵜呑みにしていた恥ずかしさで顔を真っ赤にしてうつむいてしまっていた。
「付け加えるなら、詳しい話を聞いた今ならまだしも、台拭きを取りに行ったタイミングじゃ何も聞きだしていないのに、そんな状態でリークするなんて情報が少なすぎるしなぁ。
その上、仮に秘密組織なんてものが本当に在っても、オレがリークするメリットがねぇ。
部屋中荒らされた上に、騒ぎを起こしたせいでこの部屋どころか、この町で研究が出来なくなる。ただでさえ異端な研究者って言われて耳が痛いのに、デメリットしか無いことをわざわざする訳がねぇよ」
そう言って博士は肩をすくめた。
その様子を見て大樹は疑問を口にした。
「博士、異端な研究者って言ったけど、それって・・・」
「ああ、もちろん、オレがタイムトラベル研究とかしていることがさ。頭の固い科学者連中の爪弾きなんだよ、オレはな。
タイムトラベルなんざ連中に言わせれば、SF映画の見過ぎと鼻で笑うようなものだからな。だがオレはタイムトラベルが可能だと信じていた。
有名SF作家である【ジュール・ヴェルヌ】
彼の残した言葉『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』その言葉に俺は深く共感するとともに、オレにしか出来ない研究をしようと心に決めて、独り立ちしたタイミングでタイムトラベル研究を始めた。
それから十数年、今日お前らが来た!
正直驚いたぞ!異世界から来たなんて言い出すんだからな!!お前らどこで俺のことを知った??」
ニタニタと歯をむき出しにして笑いながら聞いてくる博士に、気を取り直した泉美が代表して話し始める。
「じ、実は今日このビルの2階にある占いの館で、元の世界に帰る方法を占ってもらったんですが、そこの占い師のウォールさんにこの研究所の研究者が力になってくれるかもしれないと言われて」
「ああ、あの怪しげな占いの館の占い師か!?
超絶当たるという話は聞いていたが・・・なるほど、それでこの研究室に来たと」
「はい。でも初めはパラレルワールドの研究をしている研究室だと思っていたので、タイムトラベル研究室と書かれていたので戸惑ってしまって、占いが外れたのかなって話してたんです。
それでもダメもとで聞いてみようと話してたら・・・」
「オレが出てきたって訳だ」
「はい」
泉美の説明を聞き、博士は「ふーん」と唸ると泉美の顔をじっと見てきた。




