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9枚目・告げられた事実②

小説の構成順番を直すために投稿し直しました。

2024年7月15日

服を着た猫



「ウッ!?」


その写真を見た瞬間、泉水は思わず顔を逸らした。

画面に映っていたのは、血の池と化したゲージの中で死んでいるネズミたちだった。


「な、なんだよこれ!?」

「ネズミを観察し始めて7ヶ月目の写真だ。

見ての通りすべてのネズミが()()()()()()()()()()()()()()

「そんなの見りゃ分かる!理由を聞いてるんだ!!」

「前日までピンピンしてたネズミが、一晩経ったらご覧の通りだ。

オレも原因究明のため、急いで知り合いの生物研究者に連絡して調べてもらおうとした。

数時間後、研究室に駆け込んできたのは防護服に身を包んだ知り合いの生物研究者と、その同僚。

そいつらが死んだネズミを厳重に密閉して運び出したと思ったら、別部隊の連中が部屋中を消毒してった上に、オレを強制的に研究施設に連行されて、ネズミ同様オレも精密検査を受けることになった。

結果、オレは問題なかったが、ネズミは全身の組織がスポンジみたいに穴だらけになっていた。さらに精密検査した結果、時間経過と共に細胞組織が消滅していることが分かったんだ。


初めは未知の病原菌が疑われたが、検査の結果、死因となりそうな病原菌はもちろん、未知の病原菌も見つからなかった。ただ、時間経過と共に細胞が消滅していく未知の病気、そう結論付けた研究所はネズミを特殊な密閉容器に入れ、観察機能付きの冷凍室に隔離した。そしてオレに他言無用を言いつけ、秘密裏に観察していくことにしたんだ。

研究所の連中は頭を抱えていたが、オレはその時点で確信した。


ネズミは世界拒絶作用によって全身の細胞を構成する物質が消失し、同様に血管壁の細胞が消失していった結果、全身から血を噴き出して死んだのだとな。

オレの予想通り、6ヶ月後、ネズミの死体は毛一本残さず消滅らしい・・・


おそらくだが、異世界から来たものは、世界にとって世界の均衡を保つのに邪魔な存在なんだろう。

異世界の物質が長く留まると、世界に不具合が生じ世界が崩壊するのかもしれん・・・だから世界は異世界からの異物を1年かけて排除しようとする。

岩のような鉱物も、水のような液体も、ネズミのような生物さえも・・・な」


真顔で語る博士の説明を泉水は黙って聞いていた。

いや、言葉を失っていたというべきであろう、真っ青な顔で泉水は言った。


「まさか・・・6ヶ月後、泉美も同じことになるって言うんじゃないだろうな?」

「7ヶ月目に入った瞬間に・・・恐らく・・・な」

「そ、そんな・・・どうにかならないのか!?」

「6ヶ月以内に元の世界に戻ることが出来れば、恐らく問題はないだろう。

だが・・・」

「それなら問題ないじゃないか!?6ヶ月ギリギリになるけどゲート発生装置は作れるんだろ!?」

「発生装置はな・・・問題は座標指定だ。

言っただろ座標指定の方法はこれから考えると、ゲートの座標がどう決まるのかは全く調べてこなかった。

よく考えれば分かったはずだ。今からゲートの座標が決まる仕組みを解明し、座標指定するシステムを確立する・・・

そんな物を実用化するのが如何(いか)無謀(むぼう)か・・・とてもじゃないが6ヶ月で出来るはずがない。


6ヶ月後、ゲートは開いてやる。だが、無事に通れるゲートを発生させられる可能性は限りなく低いだろう。

ゲートが繋がった先が人里離れた山奥や森の中かもしれん。だが、それでも地上である点でマシだ。

遥か上空につながる可能性や地下深くの地下空洞に繋がる可能性もあるだろう、そもそも地球に繋がるという保証がない。

遠く離れた名も知らぬ惑星に繋がるかの可能性も十分にあるんだ。


それでも異世界で死ぬか、(わず)かな可能性に欠けてゲートに飛び込むか・・・6ヶ月後、あの(むすめ)には選択を迫らんとならん」

「他に方法は・・・」

「無い」


きっぱりと言い切る博士。

泉水はうつむきながら必死に考えをめぐらす、本当に他に方法は無いのかと・・・


「1年後・・・1年後、世界拒絶作用で排除された物質が元の世界に戻るって話は!

その作用で戻されれば、元の世界に戻れるんじゃ!!」

「一度死んだ人間が、元の世界に戻ったら生き返るなんてことが起きると思ってんのか!?

そもそもエネルギーに変換された物質が、元の世界で元の物質に戻るとは到底思えん。熱エネルギーとなって世界に吸収されるのが考えるのがオチだろうな。

万が一にも物質に再変換されたとしても元の肉体に再構築されずに塵になるのが関の山だろうな。

まぁ、万に一つも人間の形に戻ったところで、1年前に行方不明になった女子高生が死体で見つかるだけだろう」

「そんな・・・じゃあ、死ぬ可能性が高い一か八かの大博打に賭けるしかないって言うのかよ!?」

「ああ、残念だがな。

オレがパラレルゲートとあの光る玉に名前を付けても、異世界への転移手段として研究しなかったのは、オレの研究テーマがタイムトラベルを主としているからだけじゃない。

異世界に行ったとしても拒絶作用で6ヶ月以上その世界に居られないからだ。

アニメや映画のようにスーッと半透明になって消えて元の世界に帰っていく、そんなフィクションは起こらない・・・夢物語だった異世界転移を実現できたとしても、結果的に死んじまうんじゃ、研究する意味を見出せなかった。


例え異世界と元の世界を行き来できる技術を開発したとしても、そう何度も世界を移動は出来ないだろう・・・異物をエネルギーに変換して吐き出すなんて大事をしなければならないくらい、世界にとっては他の世界の物質ってやつは排除すべき脅威(きょうい)なんだからな。

恐らく一度でも異世界へいった人間は、その世界に記憶され、再び入り込んだ時には累積(るいせき)で短期間に排除される、下手すりゃ累積で異世界へ入った瞬間死ぬ可能性もあるかもしれん。

まぁ、あくまで推測だが・・・

少なくとも異世界転移したやつの肉体には、何らかの弊害が残る可能性は否定できん・・・

つまり、()()()()()()()()()()()()()()って訳だ。

まぁ、事故で異世界に来ちまうやつが居ることを失念していたのは、失敗だったがな・・・

お前の弟、大樹だったか?

あいつがお前らの関係をドッペルゲンガーに例えた時、内心かなりビビった。



お前と蛍の関係はまさにドッペルゲンガー・・・



まさに泉水(お前)泉美()にとっての死を招く者(ドッペルゲンガー)なんだからな・・・



もしかしたら都市伝説のドッペルゲンガーは、蛍と同じように自分の居た世界と似た異世界に来てしまって、もう一人の自分と遭遇してしまった人間の末路が都市伝説化したものかもしれんな」


目をつぶり、肩をすくませながら言う博士の言葉に、泉水は歯が割れそうなほど食いしばり、爪が食い込むほど拳を握りしめた。


「そんな・・・冗談だったんだ・・・冗談で呪い殺すつもりなんて無いって言ったのに・・・

クソッ!!俺のせいだ!!

ゲートが現れた時、俺が泉美をこの世界に引っ張り込んだから!!俺のせいで泉美は!!」


叫びそうになる声を押さえつけ、苦しそうに言葉を発する泉水。

そんな彼に博士は淡々と話しかけた。


「好きなだけ自分を責めろ・・・泣いても(わめ)いても、一向にかまわん。

罪悪感なんぞ抑え込んだところで、さらに苦しくなるだけだ。気休めの慰めの言葉なんぞ聞きたくもないだろうしな。吐き出せるときに吐き出しておけ、ただし今は止めておくんだな・・・蛍達に勘づかれたら面倒だ。


それにまるっきり可能性が無い訳じゃない、オレも出来る限りのことはしてやる。

可能性は限りなく低いが、蛍を安全に送り届ける技術を研究してやるよ。

何もしなかったら寝つきが悪すぎて悪夢見そうだからな」


わずかに広角を上げながら言う博士に、泉水は小さくため息をついた。


「出来る限りのことをしてくれるって言うのはありがたいです。わずかでも可能性があるのならその可能性に賭けたいから・・・協力を頼みます。

泉美を不幸にさせた自分への怒りは、平静という仮面をかぶって隠しますよ。これでも演劇部所属なんで、勘繰(かんぐ)られない自信はありますよ」


そう言うと泉水は何事もなかったかのように、コーヒーカップをトレーに並べ始めた。

それを見て博士は小さくため息をついた。


(茶化したことを咎める(ツッコむ)気力もなしか・・・)


コンロの火を消し、やかんを掴むと博士はフィルターに入れたコーヒー粉にお湯を注ぎ始めた。


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