9枚目・告げられた事実①
小説の構成順番を直すために投稿し直しました。
2024年7月15日
服を着た猫
「単刀直入に言おう。
蛍・・・・・泉美は6ヶ月以上この世界に居ると・・・・・死ぬ」
「・・・・・は?」
博士の言葉に数秒経ってようやく答える泉水、だが博士が言っている意味が全く分からなかった。
再び、泉水は呆けてしまう。
だが、段々とその表情が険しくなり博士に詰め寄る。
「泉美が死ぬってどういうことだよ!!」
博士の胸ぐらをつかむと、泉水は怒りに任せて怒鳴りつけた。
頭に血が上り我を忘れた泉水とは対照的に、博士は少しも動揺する様子もなく、ただ彼を見ているだけだった。
やがて博士は大きくタバコを吸うと「フー」と泉水の顔に向かって煙を吹きかけた。
「ウッ!ゲホゲホ!!
な、何すんだ!!」
「ちっとは落ち着けってことだよ。
オレに怒りをぶつけて怒鳴った所で、あの子が死ぬ運命は変わらねぇぞ」
「クッ・・・」
そっぽを向きながら泉水は胸ぐらをつかんでいた手を乱暴に離した。
博士はつかまれた白衣のしわを直しながら、銜えていたタバコを【プッ】とシンクに吐き捨てた。
「今から詳しく説明してやるよ」
「泉美を助けてくれるんじゃなかったのかよ!?」
「協力をするとは言ったが、無事に家へ帰らせてやるとは一言も言ってねぇぞ」
「そんな・・・そんな子供の言い訳みたいな答え、聞きたいわけじゃねぇんだよ!!」
「騒ぐな・・・蛍達に聞こえるぞ」
「グッ・・・分かってるよ!!」
注意され泉水は声を抑えるが、その顔は怒りに満ち歯をグッと食いしばり今にも飛び掛からんばかりだった。
そんな泉水に睨まれながら、博士は淡々と話し出した。
「蛍がこの世界に6ヶ月以上いるとし―――・・・・・6ヶ月以上居られない理由だが、簡単に言っちまうと世界の拒絶反応に似た作用のせいだ。
世界には他の世界・・・異世界から来た物質を、異物として排除しようとする機能があるらしいんだわ」
「それが泉美がこの世界に6ヶ月以上居られない理由・・・」
「まぁな・・・正確には異世界から来た物質は、1年間かけて世界から排除されるようだがな」
「・・・どういうことだ?」
「実例を挙げて説明してやろう。
パラレルゲートについて説明してやったときに、ゲートから水や岩、ネズミなんかがあふれ出したという話をしたのを覚えているか?」
「ああ、研究者仲間の生物研究者にネズミ全部持ってかれたって話だろ」
「そうだ。
ネズミもだが、水も岩もゲートから出てきた日はそれぞれ違うんだが、ネズミ以外は密閉容器に保管してこの研究室で観察していたんだ。
どっちも最初の6ヶ月間は何も変化はなかった・・・最初の6ヶ月はな。
7ヶ月目になったとたん変化が現れた。水は明らかに量が減り、岩はもろくなった、そして変化が現れてから6ヶ月後、つまり発見から1年経った途端、水も岩もそれぞれ消えちまった」
「消えたって、どういうことだよ!?」
「言葉通りだ。
最初から存在していなかったかのように消えたんだよ、完全に密閉してた容器からな。
まるでこの世界から拒絶され消えてしまったかのように、キレイさっぱり消えたその現象を見て、オレは便宜上【世界拒絶作用】と言う名前を付けた」
「世界拒絶作用・・・」
「消えた物質についてオレが立てた推測に基づいて名付けた。
物質が消えてその跡に何の変化もなかったことを考慮すると、物質は世界に拒絶され目に見えない形、即ちエネルギーに変換されて世界の外へと追いやられ、そして、そのエネルギーは元の世界に戻ったんじゃねぇかとな」
「物質がエネルギーに変換?そんなこと起きるのか!?っていうか元の世界に戻れるって言ったか!?」
「元の世界に戻った云々は後で話してやるよ・・・変に期待するな」
眉間にしわを寄せて、博士は大きくため息をついた。
「消えた水や岩がエネルギーに変化したって点だが、こいつに関しては結構有名な話でな。
超有名な物理学者【アインシュタイン】の発表したE=mc²という式で説明できるんだが・・・
まぁ、理論云々はすっ飛ばして、すっげー簡単に説明するとだな・・・
この宇宙に存在する物質は灰すら残さず100%エネルギーに変換することが出来るってことを表す式だ。
物質は100%エネルギー化することが出来、エネルギーは物質化することが出来る・・・理論上はな。
密閉容器の中から水や岩が消えた原因を説明するとしたら、普通は不手際で蒸発させちまったとか、紛失したとか考えるべきだろうが。
保管していたのが異世界の物質で保存していた容器に何の変化もなかったことを加味すると、物質がエネルギーに変換されて、しかもエネルギーがその場で拡散・・・容器を破壊したり周囲を高温にしたりしなかったことを考えると、エネルギー化した物質が元の世界に戻ったという、とんでも説も成り立つんだよ。
まぁ、実際には異物を世界がエネルギーに変換してゼロクロックワールドに排出して、それを元の世界が取り込んだってところだろうがな」
肩をすくませて話す博士を見て、泉水はすがるような声で言った。
「なら、泉美も1年経てば元の世界に帰れるってことなんじゃ!?」
泉水の言葉に、博士は目をつぶり大きくため息をついた。
「結果的には元の世界に戻るかもしれない・・・だが」
そこまで言って、博士はポケットからスマホを取り出し、画面を操作すると泉水に差し出した。
差し出されたスマホの画面を見ると、そこには5匹のドブネズミと思われるネズミがゲージの中に入れられている写真が映っていた。
「もしかしてこのネズミは・・・」
「ああ、例の研究者仲間の生物研究者に持って行かれたネズミだ。
DNAを検査した後、すぐに研究所にしょっぴかれた訳じゃない。しばらくの間はオレが観察するために飼育したんだ。
で、その写真はその時の記録だ。スクロールして見てみろ」
泉水は言われた通り、画面をスクロールし記録写真を見ていくが、ずっと代わり映えのない写真が続いた。
最後の写真までは・・・・・




