8枚目・タイムトラベル研究者⑤
小説の構成順番を直すために投稿し直しました。
2024年7月15日
服を着た猫
「なるほど、それでDNA検査キットなんて持ってたって訳か・・・で、結果はどうだったんだ?」
「もちろん、この周辺地域のネズミじゃなかった。それどころか日本のネズミでもなかったらしくてな、鑑定後に質問攻めになったんで正直に話したが、まったく信じなかったな。
その後、ネズミは全・・・・・ネズミは研究用にするってんで全部持ってかれたがな」
「なんだネズミは居ないのか、さっきのイタズラじゃないけど異世界から来たネズミなんて発表したら大発見になりそうなのに、残念だったな」
「ハッ!
面倒なるだけだ。そもそもオレの研究の目的とは違うから、多少残念だったが痛くも痒くもねぇよ」
茶化すような泉水の言葉を、博士は軽く往なしニヒルに笑った。
「パラレルゲートがこの世界の出入り口になりえる!それがオレにとっては最重要事項だったからな!」
ドヤ顔で笑う博士に、イズミ達は話が見えず困惑するばかりだった。
「どういうことだ?パラレルゲートがなんだって???」
「パラレルゲートが世界の出入り口になる、だ。
パラレルゲートでパラレルワールドに行けるなんて言うのは、研究過程でたまたま知れた事実にすぎん。オレの真の研究目的はゼロクロックワールドの存在証明、そしてその空間にたどり着く方法の確立だ」
「えっと・・・博士の研究の目的はパラレルワールドじゃないってことですか?」
泉美の言葉に博士はジト目で彼女を睨む。
「頭でも沸いたか?玄関の看板見直してこい!!
オレはタイムトラベル研究者だ!!」
「そ、そうだったっけ?
パラレルワールドの説明が永遠と続いたから忘れてました」
苦笑いを浮かべて誤魔化す泉美に、博士は小さくため息をついた。
「お前らが一番聞きたがっていそうなことから話してやったんだ。
さっきまでの話なんて、前置きにすぎん。本題はこれからだ!!」
博士はホワイトボードのストッパーを外すと、ボードをひっくり返し、真っ白なボードに向かい話始めた。
「さっきも言ったが、オレの真の目的はゼロクロックワールドの存在証明とたどり着く方法の確立だ。ゼロクロックワールドとはこの世界の外側、ワールドツリーが鎮座している時間の概念のない空間だ。
オレ達の居るこの世界や女イズミが居た世界なんかが形成しているワールドツリー、そこには当然時間の流れが存在している訳だが、流れがあるという事はその周りには当然流れのない空間が存在していると言える」
「ん???
世界が木みたいな形でワールドツリーって博士が名前を付けて、その世界に時間の流れがあるって言いたいことは分かったんだけど、なんでそこで時間の流れがない空間があるって話になるの???」
「時間の流れを支えるためには、時間のない空間が土台となる必要があるという事だ」
「時間が・・・えっと??・・・うん???」
博士の説明を理解しようと努力してみるが、理解が追い付かず泉美はポカンとしてしまう。
「時間の流れを動く物・・・例えば川の流れに置き換えて考えてみろ」
「時間の流れを川の流れに・・・」
「時間という川が流れるためには、どうすればいいと思う?」
「えっと・・・高低差が必要かな?」
「過去から未来へ、確かに流れを生むには高低差が必要だが、それだけだと滝のようになるな」
「え?」
博士の指摘に泉美は頭の中で想像してみる。
たしかに高い所から低い所へ、ただ水が移動するのであれば、それは滝だ。
だが川は流れているつまり・・・。
「水が滝じゃなくて川になるには・・・・・う~ん???」
「もっと基本的なものが必要だろ?」
「もっと基本的なもの???
えーーーっと・・・」
「そうか!!地面だ!」
眉間にしわを寄せて考えこむ泉美の横から、声を上げたのは泉水だった。
「正解だ。川が流れるためには地面が必要だ」
「泉水ずるい!!私が答えようと思ってたのに!!」
「別にいいだろ?懸賞金のかかったクイズ番組じゃあるまいし」
「・・・そうだけど」
不満そうに口を尖らせる泉美。
そんな彼女を見て博士はジト目で見ながら、話しかけてきた。
「ガキかよ・・・いやガキか、はぁ~・・・
地面もだが、他にも重要な部分があるだろう?」
「地面の他に重要な部分?」
「地面の一部ともいえる・・・」
「地面の一部?う~ん・・・・・あ!岸?」
「ああ、岸だ。
川は地面の上を流れる水が、岸という区切られた範囲のくぼみを流れていくことで生まれる事象だ。
ここで重要になるのは、地面や岸は動かないという事、つまり流れを生むためには、流れのない、動くことのない土台が必要という事。
もう分かるだろ。オレ達の居る時間の流れが存在する空間があるという事は、それを支える時間という概念のない空間が存在するという事だ!!」
「それが・・・ゼロクロックワールドって言う空間っていう事?」
半信半疑で聞いてくる泉美に、博士はニヤリと笑いながらうなずいた。
「そういう事だ。
時間という概念のある空間を支える時間の概念のない空間、それがゼロクロックワールドだ」
ドヤ顔で言ってくる博士。
そんな博士に、泉水はジト目で言った。
「でも、それ博士は見たり、行ったりしたことあるのか?」
「いや、あくまで推測だ」
「推測って、あるかどうかも分かんない物を研究してるのかよ」
「存在するか分からいない物をあると信じたり無いと証明したり、可能か分からない事象を出来るあるいは出来ないと信じて試行錯誤を繰り返す、それをオレ達は研究って呼んでるんだよ」
「・・・その持論があってんのか間違ってんのか、俺には分かんねぇけどさ。
そんな空間が存在しているってどうやって証明するって言うのさ?
そもそも、そのゼロ・・・ゼロ、クロック、ワールド?それとタイムトラベルとどういう関係があるんだよ」
「ゼロクロックワールドが実在するという研究結果と、タイムトラベルとの関連性か?
説明してやってもいいが・・・」
博士はニヒルに笑った。
「少々難解だぞ」
博士の笑顔を見て、泉水は自分がとんでもない発言をしてしまったのではないかと気づいたが、時すでに遅し。
説明し始めた博士の話は、先ほどの話の何倍、いや何百倍も難解で、専門用語や難解な数式が飛び出す高レベルな話だった。
「そもそも相対性理論において、時間とは不変的なものではなく実に変異的で、非常に重力の強いブラックホールや中性子星の周囲では、惑星や恒星の表面では宇宙空間よりも時間の進み方が遅いのは有名な話だが―――」
まず、大樹が頭を抱え。
「y値が502000であるという推測では、空間軸のa’の値がマイナス値になってしまうで、これはあり得ない。
つまり、y値は502000のx乗であることは絶対条件であり―――」
鈴蘭の頭部から煙が噴き出し。
「オレ達が居る3次元とは異なり、ゼロクロックワールドは4次元で構成されていると思われ、3次元の世界の住人であるオレ達には知覚が出来ない可能性がある。
そもそも、ゼロクロックワールドに降り立つためには、3次元物質である肉体を4次元に適応化して―――」
最後に残ったイズミ達が遠い目になり、思考をシャットダウンした。
「―――つまり、時間があるこの世界から、時間のないゼロクロックワールドに移動し、過去や未来に当たる空間軸まで移動してからパラレルゲートで元の世界に戻れば、タイムトラベルは可能という事になるって訳だ」
そこまで言って、博士はペンを置いて、イズミ達の方に振り返った。
「・・・まっ、予想通りぶっ壊れたな。
オイ!話は終わったぞ!!」
博士は【パンパン】と手を鳴らし、イズミ達を起こしにかかる。
最初に目を覚ましたのは鈴蘭、ガクンと後ろに倒れた頭を前に戻すと、寝ぼけた様子で博士に話しかけてきた。
「フェ?授業終わった?先生?」
「先生じゃねぇよ!博士だよ!・・・・・いや、博士でもねぇよ!!」
博士は思わず変なツッコミを入れてしまう。
「はぇ?そうだっけ?」
「めんどくせぇなぁー・・・おい坊主、お前もいつまで頭抱えてるんだ?」
博士が話しかけたのは、頭を抱えたままの大樹。
「うーーーん・・・時間は4次元がy値で、普遍的な502000がゼロクロックワールドの3次元においての―――」
「はぁ~・・・オレの説明がごちゃ混ぜになってるが、聞いてただけ及第点か・・・」
大樹を正気に戻すことは後回しにして博士は、イズミ達に視線を移した。
「オイ、男イズミ、女イズミ、話し終わったぞー、戻って来い!!」
「はっ!ここはどこ?俺は誰?」
「はっ!ここはどこ?私は誰?」
「お前らなぁ・・・コントでもしてんのか!?」
イズミ達の反応に、博士はジト目で思いっきり呆れてしまった。




