8枚目・タイムトラベル研究者④
小説の構成順番を直すために投稿し直しました。
2024年7月15日
服を着た猫
「博士、さっきから言ってるゲートってあの光の玉のことだよな?
博士はあの光の玉が何なのか知ってるってことか?」
「ああ、知ってる」
博士は腕をテーブルの上で組むと、前のめりになって話し始めた。
「あの光の玉の名は【パラレルゲート】
この世界と異世界を繋いでしまう光球の門、ゆえにパラレルゲート。
もちろんオレが名付けたんだが、オレはパラレルゲートを調べるためにこの町にやってきたんだ。時間の概念が存在しない世界・・・名付けて【ゼロクロックワールド】その世界を見つけるために!!」
「ゼロクロックワールド・・・」
博士から飛び出した謎のワードに泉水はもちろん、泉美や鈴蘭、大樹も戸惑いを隠せなかった。
「ゼロクロックワールドの説明はひとまず置いておいて、先にお前らが知りたがってるパラレルゲートについて教えてやろう。だが、それを説明するためにはこの世界の形体を説明する必要がある。
先に言っておくが、パラレルゲートやゼロクロックワールドみたいに、色々な事象を区別するために造語の名前を付けているからついて来いよ」
「今の時点で頭混乱しそうなのに、これ以上なんて無理ぃ~。
せめて黒板に文字で書いてください~」
肘を机に乗せ、両手で頬を包むようにして苦言を言ってくる鈴蘭。
そんな態度を見て博士は小さくため息をつくと、部屋の隅に置いてあったホワイトボードを引っ張り出してきた。
「黒板はないからこれに書いてやる。さっきのDNAの件もあるから、出来るだけ分かりやすくな」
そう言って博士はホワイトボードに向かうと、マーカーペンを手に話し始めた。
「まずはさっきも言ったが、この世界の形体についてだ。
これは説明しなくても分かってる通り、この世界にはこの世界以外にたくさんの世界、パラレルワールドが存在している」
「うん、それは・・・ね」
「ああ、最初に説明されたし、実際に異世界人目の前に居るしな」
泉美の言葉に、泉水は彼女の顔を見て答える。
「んじゃ、今俺たちが居るこの世界と別の世界、それぞれはどんな形体・・・姿で存在しているのか解るか?」
「どんな姿?」
「ああ、どんな姿でそれぞれ分かれているか?
お前さんが居た世界とこの世界は、元々1つだった。それが2つに分かれた今、どんな姿になってると思う?」
「うーーーん・・・・・全然分かんない」
一瞬考え込んだが、すぐに遠い目で考えることを放棄してしまう泉美。そんな彼女の横で同じように考えていた大樹は、ぶつぶつと独り言のように考えをつぶやく。
「世界が分岐して、パラレルワールドが生まれるわけだから・・・・・枝みたいな形?」
「おっ!やっぱり坊主の方が冴えてるな。
世界は木のような形態をしているのではないかと、オレは考えている。その木のような形態をしている世界をオレは【ワールドツリー形体】と読んでいる。
全ての世界はその木の枝に当たる部分だとな」
「世界が木みたいな形をしているから、ワールドツリー・・・そのままだね」
「うっせー」
大樹の言葉に博士は不機嫌な表情で答えた。
「オレが研究して付けた名前なんだから別にいいだろ。
それより本題はココからだ。この世界の枝だが、何らかの要因で接近し擦れ合うことがあるようだ。
その擦れ合った世界の次元には空間に傷が発生すると考えられる。その傷が生まれた空間に光り輝く謎の物質が発生するんだが、オレはこれを古代、光の伝達に不可欠と考えられていた幻の物質、エーテルになぞらえて【エーテリア】と読んでいる。
エーテリアは空間に発生した傷を修復する人体で言う血小板のような作用があるようなんだが、その際に傷ついた空間と擦れ合った世界の傷ついた空間を一時的につないでしまう作用が観測されている」
「もしかしてそれって!!」
泉美の反応に、博士は小さくうなずいた。
「ああ、エーテリアによって空間に出来た世界の傷に出来たかさぶた、それがパラレルゲートの正体だ。
パラレルゲートによって他の世界とつながるのは、完全な副作用なのさ」
「そんな・・・じゃあ、私はパラレルゲートの本来の機能じゃない機能で、この世界に来ちゃったってこと!?」
「まっ、そうなるな」
「それじゃあ、またあんな轟音が鳴るような大きな傷が空間に出来るまで待たなきゃいけないの!?
いえ・・・そもそも、ゲートが発生しても近くに居なきゃすぐに消えちゃうんじゃ!?」
両手で顔を押さえ真っ青になる泉美。そんな彼女の様子に博士は小さく息を吐いて、話しかけてきた。
「時間はかかるがゲートを発生させる方法は、あることはある」
「ほ、本当ですか!?」
「考えてみろ、空間の傷を治すためにエーテリアが発生し、傷口に集まることでパラレルゲートは発生する。
それなら方法は2つ思いつく。
1つ目は空間に傷を発生させる。まぁ、これは空間に傷をつけるなんて技術的に無理だから却下。
2つ目はエーテリアを1ヶ所に人為的に集める。エーテリア自体が空間を繋げる性質があれば、これで異世界への扉が開く。
実はこれに関しては検証済みだ、10cm程度のゲートを何度も発生させることに成功している。だからこの方法を大掛かりにやれば、ゲートは開くことが出来る。
問題は多々あるがな・・・」
博士の説明を聞き、真っ青だった泉美の顔がみるみる笑顔になっていく。
「ありがとうございます!!これで私元の世界に帰れるんですね!?」
「喜ぶのはまだ早い。問題は多々あると言っただろ」
「そ、そうでした。
問題って何ですか?私たちにお手伝いできることですか?」
「いや、そう言ってもらえるのはうれしいが、手伝ってもらえるようなことは何もねぇ。
問題は大きく分けて3つ。
まずエーテリアを大量に集めないといけない。
これはかなりの時間を要する上に、エーテリアはある一定量1ヶ所に集めると勝手にゲートを形成してしまうから、少量ずつ分けて保管しなきゃならん。
次にエーテリアを1ヶ所に集め、パラレルゲートを発せさせる装置を開発しないといけない。これも時間がかかるし、金もかかる。
最後に、発生させたゲートの座標を指定する方法が全く分からない。これが一番の問題だ」
「えっ?ゲートって発生した場所は同じになるんじゃないのか?
俺たちは2人とも桜門神社の社殿の前でゲートを見て、俺が泉美の腕を引っ張ってこっちの世界に引きずり込んじまったんだけど・・・」
驚きながら話す泉水の言葉に、興味深そうに耳を傾けていた博士は少し考え込んでから、持論を話し始めた。
「恐らくだが、世界がこすれ合ってできた傷が偶然にも同じ座標に生じたためだろう。
同じ座標に同時に発生したゲートが、繋がってしまった・・・そう考えるしかない」
「ってことは、他のゲートは違うのか?」
「オレが観測した限り、ゲートの出入り口の座標は違うことの方が多いようだ。
ある時は水が噴き出してきたり、岩がゴロゴロあふれ出してきたり、スゴイ勢いで周りの物を吸い込んできたり、なぜかネズミがあふれ出してくるゲートもあった。
つまり、ただゲートを開くだけではダメだ。人ひとり通れるゲートを開けられるエーテリアを集めて、ゲート発生装置を作成することはもちろん、狙ったところに座標を指定できる方法を見つけないと・・・
どんなに短く見積もっても、6ヶ月は掛かるだろうな」
「ろ、6ヶ月も!?」
驚きの声を上げる泉美に、博士は表情を変えずに答える。
「最善は尽くすが、まぁ諦めろ。
逆に6ヶ月、こっちの世界を楽しむんだな」
「そ、そんなぁ~」
あからさまに肩を落とす泉美の姿を見て、泉水も困った表情になってしまったが、小さくため息をつくと苦笑しながら話しかけた。
「頭を切り替えようぜ。
お爺様の尽力で来週には高校に通えるんだし、一応知ってる顔ばっかりなんだしさ。ちょっと変わった留学でもしてると思って・・・な?」
「人ごとだと思って・・・」
泉水の言葉に、泉美は恨めしそうな声で答える。
だが、すぐに顔をほころばせた。
「でも、そうだね。なるようにしかならないよね。
こっちの瑞希とも仲良くなれたし、向こうの世界の生意気な大樹とは真逆の、素直でカワイイ大樹ともっと居たいしね」
ニッコリと笑顔で見つめてきた泉美に、大樹は真っ赤になってうつむいてしまった。
そんな大樹を見てクスクスと笑う泉美と、ニヤニヤ笑う泉水。
「楽しそうなところ悪いんだが、話を戻して良いか?」
イズミ達に向かって不機嫌そうな声をかける博士に、イズミ達は視線を博士に戻した。
「んで、男イズミの疑問の答えだが・・・」
「ん?俺の疑問??何だっけ???」
「・・・オレがなんでDNA検査キットなんて持っていたかって疑問だ」
ジト目で睨みつけてくる博士に、泉水は苦笑いで答える。
「そ、そう言えばそんなこと聞いたっけなぁ~。
じゃあ改めて、博士の研究には必要なさそうなDNA検査キットなんて、なんで持ってたんだ?」
質問したことを忘れていた恥ずかしさを隠すように、はにかみながら質問してくる泉水に、博士は小さくため息をつくと少しあきれた様子で始めた。
「さっき話したが、ゲートの観察中に水が噴き出したり、岩がゴロゴロあふれ出したり、ネズミがあふれ出すゲートがあったと言っただろ。
それらがこの世界の物ではないと検証するため、その水や岩をサンプルとして採取したんだ、もちろんネズミも数匹捕まえた。
水や岩が周辺の物ではないことはすぐに分かったが、問題はネズミでな。どこにでもいるようなドブネズミだったんで、DNA検査を思い立って知り合いの生物研究者に機材をお願いしたんだ。
そしたらあの野郎人間用の検査キットを送ってきやがってさ!文句言ったら『文句があるなら使うな!』って言いやがって!オレもカチーンときてな、売り言葉に買い言葉で仕方なくそれをネズミ使ったって訳よ。
あのDNA検査キットはその時の残りだ。まさか本当に人間に使う日が来るとは思ってなかったがな」




