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8枚目・タイムトラベル研究者③

小説の構成順番を直すために投稿し直しました。

2024年7月15日

服を着た猫

「いや、一卵性双生児ならまだしも、お前らのDNAは一致しないだろう。一致率が50%以上、血縁関係が高いとされればお前たちが同じイズミであるという十分な証拠になる」

「私たちは同じイズミなのに、DNAは一致しないの?」

「受精後に性別が入れ替わる事例があると聞いたことがあるから、絶対に一致しないとは言わないが・・・見た目もそれほどそっくりって訳ではないからな・・・可能性は低いと思うぞ。

知っての通り性別は受精時に決まる。

これは父親からの精子によって運ばれたX染色体、Y染色体この二つのどちらが23対染色体の一対になるかによって決まる。

同時にその性染色体を含む23本の染色体を父親と母親、それぞれから受け継がれることで、受精卵には46本23対の染色体が揃い、その中から優位に働いた遺伝子によって生まれる子供の容姿や性格が決定する訳だが・・・・・聞いてるか?」


博士がジト目で睨みつける先には、遠い目をしたイズミ達と、頭から湯気の出ている鈴蘭、頭を抱えて唸る大樹の姿があった。


「あのなぁ・・・」


博士は目をつぶり、プルプルと震えながら低いトーンで、呆れた様子で言ってきた。


「多少専門的な言い回しで言ったが、今の話は生物学の基礎中の基礎だぞ!!

特に!そこの男イズミと女イズミ!お前ら高校生くらいだろ!!」


ビシッと指を指されながら怒鳴られたイズミ達は、ビクッと震えて意識を取り戻した。


「ふあっ?・・・俺たちか!?」

「ふぇ?・・・わ、私たち!?そ、そうですけど・・・」

「だったら今の話ごとき、すんなり理解しろよ!!両端の小学生が頭を抱えちまうのは分かるけどよ・・・

たく、最近若ぇ奴らの科学離れがヒドイと聞いていたが、ここまでとは・・・」


博士は大きくため息をついて、うつむいてしまった。

そんな博士に意識を取り戻した鈴蘭は、鋭い視線で睨みつけた。


「あたし小学生じゃなくて、高校生なんだけど!!」

「ん?

そっか、悪い悪い」


睨みつける鈴蘭の鋭い視線など全く気にならない様子で、右手でひらひらと適当にあしらうと、博士はあきれ顔のまま話を続けた。


「たく、仕方ない、お前らにもわかるようにかみ砕いて説明してやる」


博士は大きく息を吐くと、面倒くさそうに話し始めた。


「母親の子宮内で卵子に父親の精子が1匹入り込む、これを受精という。ここまでは良いか?」

「はい、それくらいは・・・」


泉美の答えに博士は小さくうなずいた。


「その時に父親と母親、それぞれから半分ずつ合わせて1人分のDNAを受け継ぐんだが、そのDNAはバラバラの状態では存在していない。

畳まれある程度の塊になって存在している、それが染色体だ。その中でも性別に関係する染色体が存在していて性染色体と呼ばれる。

その中の一つがX染色体だ」

「X染色体・・・」

「女の細胞に存在する性染色体はX染色体だけだ。だが、男にだけ存在する性染色体がある。それがY染色体」

「Y染色体・・・」

「染色体は父親から23本、母親から23本、合わせて46本、2本一対で23対、これが俺たち人間の細胞の核に入ってる染色体なんだが、この中の23対目が性染色体でな、この組み合わせがXXなら女、XYなら男になる。

まぁ、染色体異常で男のXYの染色体をもつ女や、女のXXの染色体をもつ男がレアケースで生まれるらしいが、お前らに当てはまる可能性は低いだろう。容姿が違いすぎる」

「X染色体とY染色体の違いで、容姿も違ってくるんですか?」

「いや、男らしい女らしいという違いは出るが、お前たちの容姿が違うのは父親から受け継いだ他の染色体だ。

最初に言った通り、卵子に精子が入り込むことで受精卵になる訳だが、実は男になるか女になるかが決まるのは精子よるものでな、精子によって運ばれる性染色体がⅩかYかによって決まる。

そして、他の染色体、常染色体と呼ばれる染色体も精子1匹1匹ずつ違いがある。これは卵子も同じだ。

じゃなければ生まれてくる子供は、みんな同じ体つき、同じ顔になるからな」

「そう言われれば、そうですね」


泉美は、泉水と大樹の顔を見比べて答えた。


「誕生日が同じだというお前らは恐らく卵子は同じだろう、だが精子が違った。その違いが男と女という違いになり、容姿の違いになった訳だ」

「えっと・・・つまり私たちの遺伝子は50%同じだけど、残りの50%は完全には一致しないってことなんですね」

「恐らくな。

あと正確にはDNAな。DNAの中で実際に機能するのが遺伝子な・・・まあ、学校の授業じゃねぇんだから、わざわざ指摘してやる必要もねぇけど・・・

よく父親似、母親似というが、あれは父親と母親から受けついた遺伝子のうちどちらが優位的に働いたのかによるものだ。

お前らの場合、父親に似ている部分は父親の遺伝子が優位に働き、母親に似ている部分は父親の遺伝子の優位性が低くて、母親の遺伝子の優位性が高かったという訳だ」

「そっか、私はお母さんから受け継いだ遺伝子が優位に働いたから母親似って呼ばれて、泉水はお父さんの遺伝子が優位に働いたから父親似って呼ばれるんだね」

「なるほどな」


泉美と泉水はお互いの顔を見合いながら、納得したように言った。


「ん?俺たちの遺伝子、いやDNAか?

・・・DNAが違う理由は分かったけど、なんで博士はDNA検査キットなんて持ってたんだ?」


泉水の疑問に、博士は眉間にしわを寄せてしばらく考え込んだ。


「ん~・・・それを説明するには、まずはゲートの説明を先にした方が良いかもな」

「ゲート?」

「ああ、特に女イズミ、お前さんは見たことがあるはずだ、宙に浮かぶ光の玉を」

「「なっ!!」」


博士の言葉に、イズミ達は驚きの声を上げて固まってしまった。


「ん?その様子だと男イズミも見たことがあるのか?

空気を引き裂くような音と共に現れ、色は月のような淡い黄色、輝いているが熱はない。

そして最大の特徴は、世界同士の空間を繋げてしまうこと・・・

女イズミ、お前はその光の玉を通ってこの世界に来たんだろ?」


博士の問いに固まっていた泉美は正気を取り戻し、椅子から立ち上がり食い気味に質問を返した。


「は、博士はあの光の玉を見たことがあるんですね!?

どこで見たんですか!?もう一度あれに飛び込めば、元の世界に帰れるんですか!?」


飛び掛かりそうな勢いの泉美に対し、博士は小さく首を横に振った。


「落ち着け。あの光を見つけても、すぐには帰れねぇよ」

「すぐには帰れないって・・・どうして!!」

「発生するゲート自体が小さすぎる。とてもじゃないが人ひとりが通れるような大きさじゃねぇ」

「小さすぎるって・・・じゃあ、どうすれば大きなものが出来るんですか!?どうすれば通れるような大きな光の玉に―――」

「落ち着け、泉美!」


暴走気味の泉美を、泉水は後ろから両肩を掴んで椅子に座らせ、落ち着くように言った。


「泉水!でも!もしかしたら―――」

「占いで言われただろ?今すぐには無理だって、博士の様子を見ても、今すぐには無理だろう」


泉水の言葉に、険しい表情だった泉美は悲しげに伏し目がちになり、やがて博士に視線を戻した。

その様子を見て泉水は小さくため息をつくと、自分の席に戻り博士に話しかけた。


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