8枚目・タイムトラベル研究者②
小説の構成順番を直すために投稿し直しました。
2024年7月15日
服を着た猫
その様子を見て大樹は疑問を口にした。
「博士、異端な研究者って言ったけど、それって・・・」
「ああ、もちろん、オレがタイムトラベル研究とかしていることがさ。頭の固い科学者連中の爪弾きなんだよ、オレはな。
タイムトラベルなんざ連中に言わせれば、SF映画の見過ぎと鼻で笑うようなものだからな。だがオレはタイムトラベルが可能だと信じていた。
有名SF作家である【ジュール・ヴェルヌ】
彼の残した言葉『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』その言葉に俺は深く共感するとともに、オレにしか出来ない研究をしようと心に決めて、独り立ちしたタイミングでタイムトラベル研究を始めた。
それから十数年、今日お前らが来た!
正直驚いたぞ!異世界から来たなんて言い出すんだからな!!お前らどこで俺のことを知った??」
ニタニタと歯をむき出しにして笑いながら聞いてくる博士に、気を取り直した泉美が代表して話始める。
「じ、実は今日このビルの2階にある占いの館で、元の世界に帰る方法を占ってもらったんですが、そこの占い師のウォールさんにこの研究所の研究者が力になってくれるかもしれないと言われて」
「ああ、あの怪しげな占いの館の占い師か!?
超絶当たるという話は聞いていたが・・・なるほど、それでこの研究室に来たと」
「はい。でも初めはパラレルワールドの研究をしている研究室だと思っていたので、タイムトラベル研究室と書かれていたので戸惑ってしまって、占いが外れたのかなって話してたんです。
それでもダメもとで聞いてみようと話してたら・・・」
「オレが出てきたって訳だ」
「はい」
泉美の説明を聞き、博士は「ふーん」と唸ると泉美の顔をじっと見てきた。
「まっ、お前らの予想は半分ハズレで、半分アタリだな」
「半分ハズレで半分アタリ!?どういうことです!?」
戸惑いの声を上げる泉美に、博士は小さく息を吐いた。
「まぁ、そう焦るな。
まず研究室の看板を見てわかるとおり、ここはタイムトラベルの実現性と方法を研究している。つまりオレはタイムトラベル研究者だから、半分ハズレだ」
「それでハズレ・・・ならアタリは!!」
前のめりで聞いてくる泉美に、博士はニヒルに笑いながら答えた。
「だから焦んなっつーの。
確かにパラレルワールドの研究はしていない。
だが、タイムトラベルの研究過程でパラレルワールドが存在することを知った。
だから半分アタリだ」
博士の言葉に四人は驚きの声を上げる。
「パラレルワールドの存在を知った!?」
「それって!他の世界に・・・私が生まれた世界に帰る方法を知ってるってことですか!?」
「待って待って!!そもそもタイムトラベルの研究者のはずなのに、どうしてパラレルワールドがあるって分かったの??」
「タイムトラベルすることと、パラレルワールドには密接な関係があるってことですか!?」
口々に驚きの声を上げる泉水、泉美、鈴蘭、大樹に博士は小さく息を吐くと、頭をボリボリと掻きながら答えた。
「焦んなくても一つ一つ順番に話してやるよ。
まずはパラレルワールドの認識について聞いておくか・・・」
「パラレルワールドの認識?」
博士の言葉に大樹は首を傾げる。
「オレが研究の結果行きついたパラレルワールドとお前たちが考えるパラレルワールドの成り立ちが違ったら面倒だからな。
まあ、一般的なパラレルワールドの考えなら問題はねぇけどな」
「さっぱり分かんねぇ・・・何が言いたいんだよ?」
「ざっくり言っちまえばパラレルワールドの出来方さ」
容量をえないと言った様子の泉水に、博士は小ばかにしたような様子で言った。
「パラレルワールドはこの世界とは違う【もしも】が具現化した言わばIFの世界だ。
もしも魔法があったら、もしも科学がとてつもなく発達していたら、もしも恐竜が絶滅しなくて地上の覇者と居続けていたら、そんなもしもが世界として存在している、それがパラレルワールドだ。
この世界とは違う世界、そこまでは良いか?」
「ああ」
「はい」
泉水と泉美が返事をし、大樹と鈴蘭もそれぞれうなずいた。
その様子に博士は小さくうなずいた。
「でだ、この世界とパラレルワールドは元々一つの世界だったはずだ。
それがある時、選択肢が世界に現れた。その選択肢を辿ったそれぞれの世界が別々の世界となった。そしてまた別の選択肢が現れ、またそれぞれの世界に分かれる、それが無数に起きたことで、無数のパラレルワールドが生まれた・・・・・
オレの研究の結果、パラレルワールドとはそうして生まれ、そして今も生まれ続けている。
まぁ、仰々しく言ったが、オレのこの考えは一般的なパラレルワールドの考えと変わんねぇと思ってる。
だろ?」
博士の問いにイズミ達はしばらく黙り込んでしまった。
やがて、泉美が首を傾げながら話し始めた。
「つまり、もともと一つだった世界が色んな世界に枝分かれしたってこと?
で、合ってますか?」
「簡単に言えばな」
「うーん・・・少なくとも私が元居た世界とこの世界は分裂した物だっていうことは納得できるかなぁ~。
この世界と私が居た世界、違いが全く分かんないくらい似てるし」
「ほ~う・・・なら、お前らの話を聞く前に一つ確認しておきたいことがある」
「な、何でしょう?」
自分を見ながら話す博士の視線に気づき、泉美は少し身構えながら答えた。
「確認しておくが嬢ちゃんの隣の坊主、そいつと嬢ちゃんは同じ名前のイズミだって言ったな?
つまり嬢ちゃんは坊主の泉水が男ではなく、女として生まれた世界の住人。そういう認識でいいか?」
「は、はい。そうだろうという結論になってます」
「根拠は?」
「親や兄弟が同じで、知り合いや友人が共通していることと、水輝家の血を引いているんですが、その水輝特有の特徴を私が持っているから・・・です」
「ほーう、水輝の・・・で、誕生日は?近いのか?」
「えっと・・・」
博士の質問に泉美はすぐに答えようとしたが、泉水の誕生を聞いたことがなかったので助けを求めるように、泉水を見た。
「俺も泉美と同じ、誕生日は5月27日だ。さすがに生まれた時間までは分からないけどな。
ちなみに星座はふたご座だよ」
「誕生日も一緒か・・・あと誕生日の星座が双子座って言うのは、変に洒落が効いてて面白いな。
面白が・・・全体的に異世界を介した同一人物って証拠としては弱いな・・・だが、誕生日が一緒ってんなら恐らく・・・よし!」
博士は立ち上がると、本棚から小さな箱を取り出し、その中から蓋のついた先の尖った太い試験管のような筒の入った袋を二個取り出した。
そして、それをイズミ達に一袋ずつ手渡した。
「これは?」
「DNA検査キットだ」
博士は使い方を簡単に説明してくれた。イズミ達はその説明通り、蓋のついた筒・・・遠沈管に、付属品としてついていた綿棒で口の中から頬をこすり、遠沈管に入れ博士に手渡した。
「ここでは調べられないが、知り合いに生物研究の科学者仲間がいるから、そいつに頼めばすぐに結果が出るだろう」
「これでDNAが一致すれば、私たちが同じイズミであるって証拠になるんですか?」
泉美の言葉に、博士は首を横に振った。




