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花火工場を見上げる大人たちの顔にも、やがて疲れの色が見え始めていた。
子供たちはすっかり飽きてしまい、寝入る子や、父母に早く帰ろうとせがんでいる子も多い。
誰からともなく集まったけれど、結局何もなかった。
そう思って腰を上げた瞬間、
どばぱん。
派手な音が鳴った。
何事かと思って村人たちが顔を上げると、花火工場の辺りが黄色く光り、再び、
どがん。
破裂音が鳴った。
どがん。
どがかん。
赤や緑に激しく光って、その都度、空気が破裂する。
ぶばん。
そこからは色彩と音のオンパレードだった。
ぼん。
ぼぱん。
ごばん。
ずぱん。
ぐばばぱん。
工場を彩るように、赤、青、黄、青、緑、赤、白と目まぐるしい光の渦が飛び散った。
村人の驚きの声はやがて歓声に変わった。
どがん。
すぱん。
ぱぱぱん。
そして最後に、一番派手な花火が爆発した。
ばん。
村が揺れた。
ああ、これが花火オヤジの花火だな、と誰もが思った。
今の爆発で花火オヤジもいっしょに吹き飛んだな、とも。
それきり光と音は消え、村は、しんと静まり返った。
火薬の匂いがした。
(完)