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 そんな花火オヤジも、一丁前に女に惚れ、所帯を持った。

 二十二の夏。相手は、二つ年上の初江はつえである。

 初江は幼い頃から遊び相手だったこともあり、唯一花火オヤジの気性についていける女だった。

 花火オヤジの作る花火が好評を博し、傾きかけていた身代しんだいを築き直したのは、結婚から十年が過ぎた頃だった。

 四十の正月には、村じゅうに手ずから振る舞い酒を配った。それだけ羽振りが良かった。

 しかし生来の性分が災いして、弟子は一人、また一人と減っていった。

 六十を越えた頃には、最後の弟子にまで逃げられてしまい、花火オヤジの周囲はひっそりと静まり返るようになった。

 やがて女房の初江が、肺をわずらってあっけなく世を去った。肺に火薬が積もって死んだのだと、口さがない噂が立った。

 花火オヤジは否定も肯定もせず、ただ人付き合いを断った。

 子供もおらず、女房もおらず、弟子もいない。

 花火オヤジは一人で黙々と花火を作った。

 その花火も、しだいに売れなくなっていった。花火職人たちの技術が向上し、大量生産できるようになったからだ。

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