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花火オヤジが産声をあげた日は、家のなかまで火薬の匂いにやられていた。産湯にも火精が混ざっていた。
父親も祖父も、そのまた祖父も花火職人の家系である。花火オヤジも当然のように花火職人になった。
花火オヤジの花火は、人より多く火薬を押し込むせいか、凄まじい爆発力が特徴だった。十キロ先の民家を揺らしたこともあるそうだ。
眉唾な話ではある。
それだけ花火オヤジの花火が凄まじかったということだろう。
やはりというか当然というか、花火オヤジ本人の気性も甚だ荒々しかった。
口より先に手が出る、という言葉があるが、花火オヤジは手が出るよりも先に爆発する。導火線に火がついたと思ったら、もう凄まじい癇癪を起こしている。
村の年中無休の風物詩だった。