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タイトル無し  作者: ルル
73/75

73話

―――(3週間後)


合格発表から1週間

結果を聞いて安心する時期


「数学分かんない。誰か教えて。」

「たすき掛け超めんどくさい。」


そして気が抜ける時期

受験が終わった瞬間みんな恐ろしい程に集中力が切れる。毎日3時間は余裕で勉強していたのに1時間も持たなくなった。


「大地もうここまで進んでるの?早くね?!」

「おれ数学得意だもん。」


「そう言えば彼女いなくない?喧嘩したの?」

「いや、付き合ってねえからな。」

「うっそ!あんなにイチャイチャしてたのに?!」


「イチャイチャ?!」

「まあ釣り合わないか。音羽ちゃんって希望ヶ丘だよね?」


すると誰も口を開かなくなった。


「・・・・・」

「え?・・落ちたの?」


大地は黙って頷いた。


「マジで?・・めっちゃ頭良かったよね?希望ヶ丘まじヤバっ!」

「もうこの雰囲気嫌なんだけど。」

「でも併願が楠木学院でしかも特進ならね。」

「やっぱ頭いいじゃん」


――――――(合格発表日)


落ち着いてと言われても落ち着けない。

ほとんどの受験生がそうであろう。


合格発表の朝

校門の中で約630人の受験生が受験番号順に並ぶ。私の受験番号は中間ら辺なので早すぎず遅すぎず結果を知ることが出来る。


「不合格の人いなくない?」

「なんか嫌だ。落ちたら泣くよ?」


受験生の人数は654人で定員は318人

何故今年はこんなに嫌がらせのように倍率が高いんだ。合格者のほとんどが夏目や清嵐から逃げてきたんじゃないのか?


序盤は不合格がいなかった。

でも・・・


泣いて足って後ずさる者が見えた。


「大丈夫だよ・・・とりあえず学校行こ?」

「結果だけ報告して帰ろ?」


ああはなりたくない。

でも合格者の数以上にああなる者がいる。


「ヤッター!!写メ撮ろ!」

「親に報告だー!」


自分の番がやってきた。


「浜ヶ丘中学校の清水音羽さんですね?」

「はい。」


この県では合格発表は掲示板ではなく合否が書いてある紙が封筒の中に入っていてそれで分かる。

先生から聞いたが合格者の封筒は不合格の封筒に比べて見た目ではわからない程度に厚いらしい。


氏名や学校名、受験番号が書いてある受験票を見せて封筒と当日の試験の答案用紙を貰った。

答案用紙は学校が採点したものらしく合否関係なく貰うことが出来る。


清水音羽

「あ、・・」


封筒を貰い確認しようとすると前の方の受験番号の人に目を向けた。


真城アリス

「・・・・」


もう結果を見終わり入学手続きをする所へ歩いていた。受かったんだ。当たり前だ。元々清嵐に余裕で受かるような学力があったんだ。どんなハンデを受けようと希望ヶ丘には受かってるはずだ。もしかして主席じゃないのか?


なんて他人の事を考えてる余裕はない。

早く封筒を開けよう。

私は丁寧に封筒を開けた。

そして紙を出した。


そして手の力が抜けるように封筒ごと落とした。


――――――――


「良かったね。合格して良かった。」

「嬉しすぎるんだけど!」


私はいまどんな顔をしてるんだろう。

帰りの電車の中で涙を必死に堪えていた。

合格者の喜びがとても辛い。


「どうだった?」

「落ちたよ。封筒見る?」

「えー?まじで?」


――――――


白澤光輝

「大石君おめでとう!あそこ倍率高いのによく頑張ったね!」


大石大地

「なんか一気に気抜けたんですけど。」


今日はなんでこのブースだけ3人だけなんだ。

あと2人の生徒はどこ行った。


大石大地

「なんかここだけ人数少なくないですか?」


白澤光輝

「・・・結果聞いたんだ。」


イヤな雰囲気が漂ってきた。

サボるなんてズルいよ。

私だって劣等感とか罪悪感とか色々あるからサボりたかったけどそんなことしたら心配かけるし。


白澤光輝

「まあこうなるよ。来れたら相当メンタル強いよ。清水さんもおめでとう。」


このブースだけがシーンとなった。

私の結果は塾長にしか伝えてない。

自分の口から言いたくなかった。

1番一生懸命に勉強を教えてくれた人にこんな最悪な結果なんて。


合格したら1番に報告してたくさんお礼を言うつもりだったのに。


大地は呆然とペンを止め

白澤先生は「しまった」という表情でいた。


清水音羽

「やめてくださいよ。その雰囲気・・もう落ち込み疲れたので。それよりここ、分からないんですけど。」


必死にその雰囲気を変えようと本当は分かってる計算問題を聞いた。


――――――――


夜の8時半

塾の授業を終えて家に向かっていた。

これから何をすればいいんだ。

勉強?やってどうするの?

これから先の目標なんて・・・


清水音羽

「だれ?!」


なんて考えてると誰かが私の肩を触った。


清水音羽

「なんだ白澤先生・・脅かさないで下さいよ。て言うか今日は帰るの早いですね。」


白澤光輝

「今日は塾が閉まるのが早いんだ。」


清水音羽

「へえ。そうなんですか。」


気まず過ぎる。

でも・・・

言わなきゃいけないよ。


清水音羽

「先生・・・」


音羽は歩くのをやめた。


白澤光輝

「どうした?」


白澤先生も連られて止まった。


清水音羽

「・・・ごめんなさい。」


ダメだ。泣いちゃう。

私は涙を堪えて泣いた時に出る声も抑えて言った。


白澤光輝

「受験のこと?」


清水音羽

「毎日夜遅くまで教えてくれたのに・・・本当にごめんなさい。」


頭を下げて謝った。

そして涙は堪えきれなかった。

もういいかな。泣いちゃって。

どうせ塾やめたら会うことないし。

どう思われてもいい。

無謀な挑戦をした落ちこぼれの生徒だと思われても構わない。


白澤光輝

「清水さん・・顔を上げて。」


白澤先生は一瞬驚いた表情を見せ

落ち着いた優しい声でそう言った。


涙目になり

頬に涙が流れた。

いざこんな醜い所を見られると恥ずかしい。


白澤光輝

「俺の力不足だったのも原因だよ。」


清水音羽

「違います!白澤先生の教え方は分かりやすかったです!私がもっと必死にやってれば・・いや、もっと前から」


白澤光輝

「清水さん。清水さんにそんな台詞相応しくないよ。だって頑張ってたじゃん。こんなこと言うと贔屓とか言われるかもしれないけど。この塾の中で1番熱心に勉強してた。これは自信を持って言えるよ。」


清水音羽

「そんなことありませっ・・」


白澤光輝

「放課後はほぼ毎日塾が閉まるまで勉強してた。一日の自習時間はこれだけでも充分なのに朝早く起きて塾から帰っても勉強してたんでしょ?ここまで来たら超人だよ?」


清水音羽

「それは、自分と志望校じゃそうでもしないと受からないと思ってたからやってただけです。」


白澤光輝

「それでもすっ・・」


清水音羽

「わたし馬鹿なんですよ。去年の今頃は救いようのないくらい馬鹿だったんですよ。毎回のテストはほぼ赤点!得意教科ですら平均点超えられない!成績表はオール2!1がつきそうになった事もありました!そんな人間が1年頑張っただけで3年間努力し続けた人間に勝てるわけ無かったんです。」


白澤光輝

「・・・・・」


白澤先生が喋るのを邪魔して私が大声でそう言うと白澤先生は黙りその場は沈黙状態になった。


清水音羽

「ごめんなさい。」


この雰囲気がきつくて訳もなく謝った。


白澤光輝

「どうして謝るの?」


清水音羽

「分からないです。ごめんなさい。」


白澤光輝

「じゃあ、力不足でごめんね。」


お互いに謝った。


白澤光輝

「そう言えば夏休みくらいにした約束覚えてる?」


清水音羽

「・・・ああ。覚えてますよ。」


白澤先生が出す問題に答えられなかったら私が夏休みに書いた国語の作文を見せる。

てっきり夏限定だと思ってたのに秋、冬と来て冬期講習の時や入試前日まで出してきた。


白澤光輝

「全て答えれてたね。」


清水音羽

「白澤先生が出す問題簡単だったんですもん。」


白澤光輝

「ええ?!けっこう難しい問題出したりしたよ?数学やってる時に社会の問題出したりとか。それ大石君とか他の生徒にやったら3日もたなかったからね。清水さんがこのまま答え続けられてたら悔しいなって。」


清水音羽

「そこまでして見るほど私の作文は面白くありませんよ。」


白澤光輝

「だって気になったんだもん。あんなに熱心に書いててさ。」


清水音羽

「・・・」


白澤光輝

「やっと見れる。」


その言葉を聞くと頭の中にクエスチョンマークが私は浮かび「え?」と言う声を上げた。


白澤光輝

「さっき答えられなかったよね?」


訳が分からなくずっと考えてると・・


清水音羽

「あ!先生ズルいです!」


白澤光輝

「誰も勉強関係の問題しか出さないなんて言ってないからねー!」


白澤先生がそう言うと音羽は悔しそうな顔を白澤先生に見せた。


清水音羽

「もうすぐ捨てようと思ってたのに。」


白澤光輝

「取っておいてたの?」


清水音羽

「白澤先生がいつまでも問題出してくるから捨てるタイミングを逃しただけです!」


白澤光輝

「とか言って本当は見て欲しかった願望あったりしない?」


白澤先生は音羽をからかうように笑いながらそう言った。


清水音羽

「ありません!!今日にでもシュレッダーで細々にしようかと考えてましたよ!」


白澤光輝

「やっといつものテンションに戻った。」


音羽が少し声を大きくして突っ込み

白澤先生は優しく笑ってそう言うと音羽は黙り込んだ。


白澤光輝

「涙乾いた?」


清水音羽

「泣いてません!さっきのは汗です!」


そう言って音羽はまた歩を進めた。


白澤光輝

「明日作文持ってきてね!持ってこなかったらずっと取り立てるから!」


清水音羽

「本当に面白く無いですからね!つまらなくて文句とか言わないで下さいね!」


そして走ってこの場から去った。










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