7話
内村陽大
「普段の字が汚いのに習字だけやたら綺麗な人っているよね。」
大石大地
「なんで俺見て言うんですか。」
3者面談が終わり秋休み明けの授業
国語では習字をやっていた。
「確かに。絶対習字のほうが綺麗だわ。」
「それな。謎じゃん。」
周りの人が大地の字を見てそういった。
大石大地
「でも習字なんて将来使わなく無いですか?」
内村陽大
「結婚式とかで使うよ。」
大石大地
「じゃあおれ海外で葬式しよ。」
大地がそう言うと私を含めクラスの大半が笑い始めた。
内村陽大
「海外で葬式?!ハワイとかで?!今から葬式やるんだけど来ねえ?みたいなチャラいノリで?」
大石大地
「棺桶に貝殻詰めたりしてね。」
清水音羽
「不謹慎過ぎるわ。」
内村陽大
「なんで結婚式とかで使うよって言ったのに葬式に持ってきたんだよ。・・・それより君たちは合唱練習してる?曲なんだっけ。」
大石大地
「平和の鐘です。」
この学校では月末に合唱コンクールがあるらしい。
各学年の各クラスでそれぞれが決めた曲を歌って一番上手なクラスが最優秀賞で二番目にうまいクラスが優秀賞だ。ちなみに学年曲というのもあってそれは学年全員で歌う。
「一組ってなんだったっけ?」
「かなでだって。」
「いやズルー!」
内村陽大
「安心しろ曲くらいで勝敗決まんねーよ!」
大石大地
「いや決まりますから!去年の三年生のあるクラスは赤ペラで歌って優勝したじゃないですか!それと同じです!」
清野拓真
「でも平和の鐘ってけっこう良くない?」
大澤花凛
「他のクラスと被ったけどうちのクラスが歌うことになったんだよね。他のクラスにズルいとか言えないから。」
なんかヤケに熱心だな。
この学校はみんな合唱好きなのかな。
前の学校では熱心なのはほんの一部で大半は練習まともにしてなかったのに。
清水音羽
「みんな合唱好きなの?」
ボソッと隣の席の大地に聞いた。
大石大地
「さあ?でも斉藤先生に聞いたんだけど斉藤先生が担任やってた頃は今練習しましたね?!ズルいですよ!とか。絶対負けませんからね!みたいなことを先生同士で言ってたらしい。うちの学年は普通」
内村陽大
「時計見て。あと10分しかない。まさか一枚も書けてない人いないよね?」
雑談が長く続くと内村先生はそれを止めるようにそう言った。
国語の授業はいつもそんな感じだ。
――――(6時間目)
「赤ペラにするの?」
「最初のLaLaLaのところだけね。」
ここのところ毎日合唱練習をしている。
「喋んなよ!練習出来ないから!」
「もっと優しい言い方あるだろ。」
このクラスは真面目な人とふざけてる人が半々だ。
因みにわたしはどちらでも無い。みんなは一年と半年間くらいこの学校にいて
このクラスになってからも4月からおそよ六ヶ月間同じクラスで絆が深まって優勝したいと言う気持ちが高まってるかもしれないがわたしは一ヶ月と半月しかいないのでそんな情は湧いてこない。
かと言ってふざけるのは違うので空気を読んで練習に参加しているだけ。
「もう時間ないから合わせるの最後にしよう。」
学級委員がそう言うとみんな元の位置に並び直し指揮者とピアノの人の合図で歌い始めた。
――――(放課後)
清水音羽
「僕らの生まれたこの地球に奇跡を起こしてみないか
拳を広げて繋ぎゆく心は一つになれるさ
平和の鐘は君の胸に響くよ」
放課後の教室で私はデッキから流れる音楽と合わせて練習をしていた。
何で・・?
大澤花凛
「ごめんね。無理やり練習させて。」
真城アリス
「ちゃんと窓も扉も閉めてるから私達以外には声漏れてないと思うよ。」
清水音羽
「うん。それは良いんだけどなんで私?合唱練習始めたの夏休み明けだから下手くそってことは無いと思うんだけど。」
どっちかって言うと音痴で困ったことないし。
大澤花凛
「そう言うのじゃないから。むしろ逆で音羽は声出てて歌も上手いからいい合唱をする為には必要な人材なの。うちのクラスはソプラノが少なくてアルトや男子の声に潰されるから音羽がいればカバー出来ると思うし。」
そう言えば昔から声を褒められたことはよくある。
声優向いてるんじゃ無いかとか透き通った声だねとか。
清水音羽
「そんな戦力になれる自信無いけどまあ頑張ってみるよ。」
真城アリス
「ありがとう!それじゃあ今日はもう遅いし帰ろうか。私達は部活行こ。」
清水音羽
「デッキ片付けておくよ。二人は早く行きな。」
私がそう言うと二人は私にお礼を言って教室から出て
私はデッキを片付けてから教室を出た。
校門から出てしばらく歩いていると
清水音羽
「さぼりか。」
大石大地
「うわ!ビックリした!お前何してたんだよ。」
部活をやっているはずの大地が歩いているので声を掛けた。
清水音羽
「歌の練習だよ。」
大石大地
「俺はこの日は毎週塾だから。」
清水音羽
「そうなんだ。」
大石大地
「そういや3者面談の日に親同士がやけに親しかったよな。」
清水音羽
「うちの親の上司かなんかじゃない?」
大石大地
「親なの?!おれてっきりお前の姉とかだと思ってたんだけど。」
清水音羽
「わたしに姉はいないよ。一人っ子だし。」
大石大地
「へえ・・・」




