66話
って言っても誰もいない。
自分でそうさせたんでしょ。
「バカみたい。」
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花井亜矢
「あら、久しぶり!」
「どうも・・」
夕方の4時頃
一人の男が来た。
花井亜矢
「清水さんビックリしたでしょ。」
清水涼太
「まあ・・」
彼の名前は清水涼太
8年前から他県にある会社で働いていて今では社長をしている。
花井亜矢
「でもどうしてここへ?出張かなにか?」
花井亜矢は音羽の叔母
清水涼太
「はい。それで今日は時間があったのでちょっと懐かしいところでも散歩しようかなって。」
花井亜矢
「なるほどね。でもぶっちゃけ気になるでしょ?娘さんのこと。」
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清水音羽
「こんにちはー!」
白澤光輝
「お!きたきた!昨日は珍しく来なかったね。」
放課後はいつも学校から塾へ直行していた。
清水音羽
「昨日はちょっと具合が悪くて。あ、でも休みながら勉強してたので進度は問題ないですよ?」
白澤光輝
「言われてみればちょっと顔が赤いね。でも無理して体調崩したら元も子もないからね。」
清水音羽
「そうですね。体調崩さない程度に頑張ります」
やっぱり睡眠時間が足りなさすぎたか。
最初の模試でE判よりのD食らったから危機感を感じて3時間しか寝てなかったし。
白澤光輝
「そうそう。清水さんは努力家だから成績伸びて合格するよ。」
わたしはそれで悪くてもCくらいかと思ったけど現実は甘くなかった。
それに偏差値60以下の高校なんて最初の模試がどんなに酷くても頑張れば受かる気がする。
実際わたしは3年生になるまでは40も無かったと思うけど夏休み中の模試でさえ良い教科だと60越えてたし。ただ5教科を平均した偏差値は60にも満たない。
実際あそこレベルの高校だと公立中学だけでなく進度が早い私立中学から受験する人もいる。
そんな人達に私が勝てるのか。
わずか半年しか頑張ってないわたしが3年間頑張って来た人に。
白澤光輝
「ああそうだ。11月の末に特色のテストあるからね。」
そう言って白澤先生は私に分厚いテキストを渡した。
清水音羽
「これは、過去問ですか?」
白澤光輝
「特色検査が初めて行われた年から去年までのね。8年分だよ。」
わたしは過去問の中身をざっと見た。
なんだこれ、訳わかんない数学の図形
その他にも想像力を働かせるような問題ばかり
白澤光輝
「頭を使わないと解けない問題ばかりだからね。今までみたいに数学以外解法がある訳でもない。」
すごく難しそうだ。
わたしは1年目のページを開いた。
清水音羽
「・・・・」
―――――――
清水涼太
「全く気にならないと言えば嘘になりますね。」
花井亜矢
「安心して。しっかりしたいい子に育ってるから。このままだったら性格は桜子に似なさそう」
もう8年も会ってない。
最後に会ったのは音羽が小学二年生位の頃だ。
今は中学三年生か。色々大変な時期だな。
と、他人事のように心の中で呟いていた。
清水涼太
「しっかりしたいい子・・・ねえ。」
花井亜矢
「受験生だから今は勉強を頑張ってるかな。て言うか頑張りすぎ。成績だって良い方だし。」
清水涼太
「実は大事な用があって来たんですよ。」
花井亜矢
「あら、何かしら?」
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大石大地
「・・・まさかね。」
昨日の夜見たあの女の人
忘れかけていた誰かさんに似ていた。
俺はその日は塾の授業があるので6時頃に家を出て歩いていた。
最近はすぐに日が沈むようになり5時半くらいでもかなり暗くなっていた。
大石大地
「あ、・・」
歩いていると偶然なのか本人が歩いているのが見えた。でも変だな。
あいつの髪は茶色だったしストレートヘアーでもなかった。
でもあの声は・・・
「なんですか?」
大石大地
「えっ・・」
見てるのバレた。
女の人は俺を見てる。
でも俺は相手の顔が見えない。
目が隠れる長い前髪で隠れているから。
大石大地
「いいえ・・・あの、ごめんなさい!」
とりあえず謝って逃げようとした時のことだった。優しめの風が拭いてきた。
その人の前髪が揺れてふと俺はその人の目を見ることが出来た。
驚いた俺は手の力が抜けたかのように持っていたカバンを落とした。
大石大地
「・・・・」
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こんなことで償いきれるものじゃない。
花井陽菜
「ただいまー!!」
夜の七時頃
元気な声が聞こえた。
清水涼太
「帰り遅いんですね。」
花井亜矢
「塾に行かせてるからね。おかえりー!」
花井陽菜
「あのね途中で音羽ちゃんに会ったの!今いるよ?!」
二人は動揺した。
清水音羽
「帰ろうとしたら無理やり・・」
花井陽菜
「今日は一緒にご飯食べていいでしょ?!ほら早く上がって!!」
花井亜矢
「ひな!!」
陽菜は音羽の手を引っ張ってリビングに連れて行った。
そして・・・
花井陽菜
「あれ、この人だれ?」
清水音羽
「・・・・・」
人生最大に気まづい瞬間
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大石大地
「・・・・」
驚いて声も出ない。
こいつは・・・
「・・・・」
あいつは俺の表情を見てニヤリと笑った。




