64話
清水音羽
「ああすごい!分かった!」
白澤光輝
「おお!よかった!」
夜の10時頃
俺らは自習室で勉強していた。
テスト前で自習室が混んでたので非常に気まづいが同じ部屋で勉強していた。
でもこの時間にもなるとどんどん人が帰っていき自習室には俺ら2人だけになった。
清水音羽
「白澤先生すごいです!本当に教え方わかりやすいですね!こんなバカでもちょっと考えれば普通に解けちゃいました。」
白澤先生のこと褒めすぎだろ。
白澤光輝
「そう?でももう10時だよ?」
清水音羽
「ええ!うっそ!ヤバっ!」
そんなに時間経ってた?
白澤先生の解説付きのプリント渡されてから1時間以上は過ぎてる。
清水音羽
「ってことは私は1つの問題に1時間半もかけたってことか・・」
白澤光輝
「でもこんな難しい問題解けるようになったら数学はそこそこ点数稼げるよ。平均点低い社会とか理科もけっこう上がってるしこのペースで上がれば合格の可能性もある。」
清水音羽
「・・・・だといいですね。」
あの判定で「合格」なんて聞くだけでおこがましい。
清水音羽
「でもここから上がるのが難しそうです。だって私の内申だったら満点取らない限り一次選考じゃ受かりません。そこで合格者90パーセント決まるから二次選考で選ばれる残りの10パーセントに入らないと。」
白澤光輝
「二次選考は同じような考えの人が殺到するからね。二次選考って点数高くないといけないし過去の合格者の中には点数だけ見れば清嵐レベルの人もいる。」
清水音羽
「なんだかなあ・・」
つい最近返された模試の5計が330
希望ヶ丘のボーダーは390
でもこれは一次選考
清水音羽
「二次選考のボーダーどれくらいでしたっけ?」
白澤光輝
「年度によって差があるかな。一昨年までは430とかだったけど去年傾向が変わって400くらいだったし。」
430?!定期テストの点数とほぼ変わらないじゃん。
白澤光輝
「でも特色検査もあるから5教科がちょっと低くても特色で逆転することもあるよ。」
清水音羽
「特色・・検査・・」
白澤光輝
「さっきから圧力かけるようで本当に悪いけど特色は本当に難しいよ。他の学校だったら傾向が決まってるんだけど希望ヶ丘は何が出るか分からないもん。一昨年は難しい数学だったし去年は小学生の運動会のプログラムを作るとかそんなんだったし。」
清水音羽
「どっちも対策しないと出来ません。」
白澤光輝
「今はテスト勉強に集中しよう。これで内申決まるからね。そしたら特色対策しよう。過去問とかあげるから。」
清水音羽
「はい。」
すごく荷が重い。
内申は低い。
二次選考通過しなきゃいけないけど1次のボーダーすら越えてない。その上に特色検査もある。
残りの期間で100点も上げられるのか。
清水音羽
「先生特色検査教えたことあります?」
白澤光輝
「あるけど少ないよ。俺いま大学二年生なんだけど塾講師始めたの1年前からだし。」
清水音羽
「それで副室長やってるんですか?」
白澤光輝
「前の副室長が辞める時だったからね。それでやってみたい?みたいな感じで。」
清水音羽
「すごいですね。」
そこまで言われるってことは本当に優秀な先生なんだ。
白澤光輝
「たまたまだよ。・・それより大石君さっきからペン止まってるけど大丈夫?」
険しい顔をして問題を見つめペンを持ったまま動かない大地にそう言った。
白澤光輝
「理科わかんない?」
大石大地
「いいえ。俺が今わからないのは社会です。時差の飛行機バージョン」
白澤光輝
「それはよく出るよ。基本的なのは分かる?東だったら足すとか」
大石大地
「それは分かるんです。入試チックなのが分からないんです。」
白澤光輝
「なるほどね。明日授業ある?」
大石大地
「ないけど自習しに来ます。」
白澤光輝
「じゃあその時に教えるよ。今日は遅いし二人とも帰りな。もう10時過ぎてるから。」
―――――――――
清水音羽
「・・・・」
わたしは今人の家の玄関の前で立ち止まっている。
清水音羽
「ああ・・・」
何故こうなったかと言うと今日休んだ人にプリントを届けに行くことになったから。
それがただのクラスメートとかだったらそんな問題無いんだけど今日休んだ人は私が一昨日振った男なのだ。
担任の先生に頼まれたけど断れなかった。
頼まれて断ることが出来ない。
「うちに何か用?」
その言葉を聞いた途端わたしは肩をビクつかせて声が聞こえた方向へ顔を向けた。
清水音羽
「あ・・・あのっ・・えっと。た・・大地くんにプリント届けに・・」
ヤバい。人見知り発動した。
相手は多分大地の父親だ。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ!驚かしちゃってごめんね。大地珍しく風邪ひいちゃってさ。・・・ていうか君前に会ったことあるよね?」
清水音羽
「・・・えっと・・」
ああ。覚えてたんだ。
「思い出した!去年の三者面談の時だ!」
清水音羽
「えっと。そうですね。」
そういうのいいから早くプリント渡して帰りたい。
大石大地
「やめろ親父」
そんな風に思ってると部屋着姿で髪が若干ボサボサで顔色の悪い大地が玄関まで来てそう言った。
大石大地
「こいつ人見知りなの。親父みたいなオッサンに話しかけられても困っちゃうから。」
「うわー。こいつとか言ってるよ。男友達ならともかく女子だよ?もっと優しい言い方あるでしょ。もしかして学校でもそんな感じ?それとも彼女?」
清水音羽
「いいえ。」
私はそう言ってプリントが入った封筒を大地に渡した。
清水音羽
「失礼します。」
―――――――
なんかすごいダルいタイプの人だったな。
いい人そうだけど。
そんなことを考えながらいつものように夜遅い時間帯に歩いていた。
これからもっと頑張らないとな。
よし、今日は帰ったら少し勉強しよう。
「・・・・やっと見つけた。」




