63話
よく分からない感情が俺の中に込み上げてきた。
清水音羽
「それ、恋心じゃないでしょ。」
大石大地
「・・・」
あっさり振られた。
なんで?!音羽の今の言動からしてあんなの・・・
大石大地
「いま自分がどんな残酷な振り方したか分かってる?」
清水音羽
「大地は勘違いしてるよ。ただ私と奴との問題に絡んだだけでしょ。それが大きな問題だったから私のことが可哀想に思って恋愛感情だと勘違いしただけ。」
だってそうでしょ。
それ以外になにか特別な接点があった?
ただのクラスメートってだけ。
奴がいなかったらお互いにその他大勢と変わらなかったよ。
大石大地
「よくそんなこと言えるよな。」
清水音羽
「だって事実でしょ?」
大石大地
「勘違いしてんのはお前だよ!!勝手に人の気持ち決めつけてんじゃねえよ!!」
夜空に大地の怒鳴り声が響き渡った。
清水音羽
「・・・・近所迷惑」
俺が感情的になってるのとは逆に音羽は冷静でいた。確かに近所迷惑だ。
清水音羽
「こんな女のどこがいいんだか。」
――――――――
清水音羽
「ああっ!!集中出来ない!」
あまりの身の入らなさに頭を抱えてイライラしながらペンを投げつけた。
「人の気持ち勝手に決めつけてんじゃねえよ!!」
だったら何なの?他になにかあった?
その場では必死に冷静を装ってたけど私はかなり混乱していた。
私だってそんな風に見てたよ。
あんな格好いいことされたら誰だって惚れるでしょ?私は奴に2年間苦しめられていた。それを解き放ってくれたのはあんたなんだよ。
それがどんなやり方でもかまわない。
どんな結果でもかまわない。
かけがえのない親友でさえしてくれなかったことをたかが1人のクラスメートの為に身体張って守ってくれた。それで私は救われたよ。
でもこれ以上の感情を抱いてはいけない。
こんなの単なる吊り橋効果
私のどこがいいんだろう。
今まで大地に迷惑しか掛けてこなかったでしょ?
私がいなければ今よりもっといい人生になっていただろうに。
大地みたいな人わたしには勿体な過ぎるよ。
これ以上わたしと関わって不幸になって欲しくない。
酷いことを言ってでも突き放すしかない。
―――――――――
清水音羽
「先生!ここ教えて下さい!」
白澤光輝
「おお・・これは難しい問題だよ。」
次の日の夜
いつものように自習室で勉強していた。
白澤光輝
「去年似たような問題出たんだけど正答率すごい低かった!」
清水音羽
「ええ・・なんか解説見てもよく分からないんですけど。」
白澤光輝
「他にわからない問題ある?」
清水音羽
「いいえ。今日やる分の数学はこの問題で最後です。あとは理科が残ってますけど。」
白澤光輝
「じゃあ先に理科やりな?その間に分かりやすく解説書くよ。このあと授業あるから10時くらいになるけどいい?」
清水音羽
「はい。ありがとうございます!」
こういうのを嫉妬って言うんだよな。
大石大地
「先生助けてください!理科分かりません!」
授業を終えたので俺は白澤先生がいる自習室に行き理科のテキストを持ってそう言った。
白澤光輝
「どこ?物理系?」
大石大地
「はい!中1理科の光の屈折とかそういうのです。作図とかよく分かりません。」
白澤光輝
「わかった!じゃあ授業の後に教えるからその間に他の教科とか自習してな。」
大石大地
「はい!」
白澤先生がそう言って教室へ向かい
俺は隣の自習室に入って勉強を始めた。
実際に勉強なんてほとんど集中出来てない。
昨日のことが頭から離れない。
音羽はあんなこと言って本当は白澤先生に気があるんじゃないかとか思ってしまう。
でもありえないか。
あいつは白澤先生みたいな背が高くて筋肉ありそうな男は苦手だし。
ただ勉強のために教え方が上手い白澤先生を利用してるだけ。
他の生徒より明らかに二人でいる時間が長いけどそれは音羽が勉強熱心なだけで・・・
大石大地
「・・・・」
ダメだ。そんなこと考えちゃダメだ。
忘れるんだ。
自分にそう言い聞かせてペンを早く動かしノートに社会の用語に書き続けた。




