62話
あんな顔見たかったわけじゃないのに。
大石大地
「・・・」
清水音羽
「・・・」
時間になり自習室から出ると隣の部屋から大地が出てきた。
音羽は一瞬鋭く大地を睨みつけた後に逃げるように塾から出た。
大石大地
「あのさ・・」
大地が音羽に話しかけると音羽はその場から走った。
大石大地
「ちょっと!人の話くらいちゃんと聞けって!」
大地は音羽を追いかけるように走った。
でも昨日とは違って音羽と同じペースで走っている。
清水音羽
「近寄らないで!」
大石大地
「昨日は悪かった!」
清水音羽
「悪いと思ってるなら追いかけないでよ!」
大石大地
「お前が俺を拒絶してんのは分かった!でも理由が分からないんだよ!だから教えてくれ!そしたら二度と話しかけないから!」
俺がそういった辺りで音羽の呼吸が乱れ始めた。
体力の限界が来たんだ。
音羽は走るのをやめて呼吸を整えた。
清水音羽
「拒絶してんのはそっちでしょ。」
大石大地
「・・・あれは、」
清水音羽
「私はねえ。あんたが人殺そうが何しようが拒絶するほどの恐怖心なんか感じなかったよ。」
大石大地
「じゃあなんで?」
清水音羽
「こんなつまんないこと気にしてなかった。だから私はいつものようにあの後もあんたに話しかけた。それなのにあんたなんて言った?」
「無理して話しかけてこなくていいよ。」
清水音羽
「優しく言って誤魔化したんでしょ。お前さえいなければ俺は手を汚す必要は無かった。って。」
大石大地
「そんなこと・・」
音羽は俺を鋭く睨みつけていた。
ああ。これは・・
大石大地
「・・・お前って勘いいよな。」
ダメ。隠しきれない。
清水音羽
「なんで色んなリスク背負ってアイツを殺したの?もしかしたら反撃されて自分が殺られたかもしれないのに。」
大石大地
「ムカついたから。」
清水音羽
「・・・」
大石大地
「ただムカついただけ。音羽だって殺意芽生えたでしょ?それと同じ。」
清水音羽
「そりゃそうだけど。」
実際に殺してやろうなんて思ってても実行できない。だって怖いから。
大石大地
「俺はそういうことが出来る人間だよ。」
大地は音羽の目を真っ直ぐ見てそう言った。
大石大地
「でもね。誤解しないで。音羽のことは恨んでないから。」
清水音羽
「自分で何言ったか分かってる?矛盾してるよ。私が言ったこと認めたよね?私がいなければ手を汚すことは無かったって。」
大石大地
「思ってる。」
清水音羽
「だったらなんなの?私と同じようにいじめられてムカついたから殺ったんでしょ?」
大石大地
「なんでだと思う?」
大地は笑ってそう聞いた。
清水音羽
「・・・・」
大石大地
「そんなこと知ったこっちゃないか。」
音羽が黙り込むと大地はため息をついてそう言った。
清水音羽
「・・・」
私はそこまで鈍感じゃない。
きっとこういうことなんだと察した途端に今まで感じたことない刺激的な感覚が私を酷く混乱させた。
相手の目をまともに見れなくなり
冷静な思考力を失い頭がボーッとし
表情で誤魔化そうとしても赤面する肌は誤魔化せなかった。
大石大地
「・・・」
沈黙が数十秒続いた。
清水音羽
「・・・」
すると大地は私が立ってる方へ歩き出し
距離を縮めてきた。
清水音羽
「たい・・ち・・」
大石大地
「俺は・・・」
どうか私の勘が・・・
大石大地
「音羽が好きだから。」
外れていますように。
清水音羽
「ごめんね。」




