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タイトル無し  作者: ルル
54/75

54話 

内村陽大

「偉いね。小学生でこんなに勉強するなんて。面倒くさいって思わないの?」


南沢胡桃

「そんなこと・・思いませんよ。」


両親と違って優しい人だった。 

母親は昔から厳しいしこの人の兄である新しい父親も母親と似たような人だし。


内村陽大

「そっか。ならいいけど。ほら、こんなこと本人に言えないけど君の両親ってすごい厳しい人だから苦労してるんじゃないかなって。俺の兄貴なんて昔からガリ勉で学歴主義者だから。」


南沢胡桃

「私の為を思ってのことですから。」


内村陽大

「・・・・」


しっかりしてそうな子だと思った。

礼儀正しくて頭が良くて。

でも我慢してるようにも見えた。


南沢胡桃

「・・・うち・・むら・・さん?」


内村陽大

「ああ!ごめんね。なんか癖で・・嫌だった?」


自然と彼女の頭を撫でていた。

彼女は戸惑って持っていたペンを離した。


南沢胡桃

「いっ・・いいえ・・そういうことされたことなかったので。」


内村陽大

「両親にも?」


南沢胡桃

「はい。」


うちの親がそんな優しいことするわけ無い。

むしろちょっと気に触っただけで暴力振るうんだから。


内村陽大

「俺は小さいころよくやられてたりしたけどな。でも気をつけるよ。流石にね・・」


背が小さいから意識してなかったけど彼女は小6だ。

あと一年すればもう一つ上の人に毎日会うわけだし。

マジで訴えられかねない。


南沢胡桃

「おもしろい人ですね。」


胡桃は一瞬子供のように笑ってそう言った。


内村陽大

「おもしろい先生目指してるんだ。」


南沢胡桃

「先生になるんですか?」


内村陽大

「教員採用試験に受かればね。おれ人生で一度も第一志望に受かったことないし。」


自分の過去を思い出して自信なさ気にそう言った。

俺は高校も大学も第一志望に受かってない。


南沢胡桃

「内村さんならなれますよ!!」 


こんな私を心から笑わせてくれるんだから。


内村陽大 

「ありがとう。」


何だかすごい自信になった。

そして俺は教員採用試験に受かり母校で教師になることが出来た。  


南沢胡桃

「これをやればいいの?」 


「わたし今日塾なの!本当にごめんね!」


南沢胡桃

「大丈夫!任せて!」


中学生になりまた友達も増えたけど。


「あんた任せ過ぎじゃなーい?」

「だって何でもやってくれるじゃん!本当に便利!」


いや、友達じゃない。

パシられてるだけだ。

本当にあいつら殴ってやりたいけどそんなこと出来ない。


捨てられたくないからいい子でいなくちゃいけないの。


内村陽大

「なんか疲れてる?」


南沢胡桃

「え?・・わたしなら元気ですよ!」


貴方はお見通しなのね。


南沢胡桃

「文化祭の出し物の準備が捗り過ぎて!」


明るくいなくちゃいけないのよ。


内村陽大

「やっぱ私立だからすごいのかな。どんな感じ?」


南沢胡桃

「うちの学校は生徒が自主的に決めるので毎年けっこうバラバラなんです!」


中1くらいまではこの人にも猫被ってた。

でも段々と疲れてきた。


「この成績はどういうことなのよ!」

「ねえまたお願いしてもいいー?」


うるさい。うるさい。うるさい。


もうぶち撒けてしまいまい。

でもぶち撒けられない。


内村陽大 

「ちょっと休んだら?」


この人は私が疲れてる時とか苦しい時とかを知っている。

でも優しくされると余計辛いの。よくわからないけど。


南沢胡桃

「放っといてよ!!」


思わず大声で怒鳴ってしまった。 


内村陽大

「・・・わるかったな。」


なんなのこの人

普通怒るでしょ?


それからこの人が怒らないのをいい事に好き勝手当たり散らしてしまった。


内村陽大

「ねえ・・なにか嫌われるようなことした?」


南沢胡桃

「あんたが生理的に無理なだけよ。嫌いな人に嫌いって言って何が悪いのよ。」


ごめんなさい。ごめんなさい。

貴方は悪くないの。

罪悪感を感じながら暴言を吐いていた。


でも中学二年になった頃

これにも耐えられなくなった。


「なんでこんなに成績下がってんのよ!」

「うるさいわね!!圧力かけられると余計ダメになるのよ!」

「なんなの?!その口の聞き方は!」


やってしまった。


南沢胡桃

「猫かぶりなんかしたくないのよ!そんな私が嫌なら捨てればいい!未来って人みたいに殺せばいい!!あんたはそういうことが出来る人間なんでしょ?!」


「・・・・分かったわよ。あんたみたいな子いらないわよ!!」


そして今の家に住むようになった。

でも・・


「ちょっとでも成績下がったら生活費渡さないから。私はこういう事が出来る人間よ。あの時の発言を許してあげるから精々頑張ることね。」


結局あの親から離れることはできたけど

そんなに変わらない。意味なんか無かった。

 

もう死にたい。死んで楽になりたい。


私はリストカットをするようになった。

切るときのチクッとした痛みとか

汚い血の色とか


これが死に変わるなら快感にすら思えてくる。

でも何度やっても死ななかった。



















 






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