51話
人には普段見せない闇がある。
それは普段優しい人ほど暗い。
それを最近知った。
内村陽大
「そういや夏休みの宿題進んでる?まだ初日だけど。」
清水音羽
「夏休み前に配布されたのもやってるので八割終わってます。」
内村陽大
「はや!めっちゃ早!作文も?」
清水音羽
「はい!わたし国語の作文自信ありますよ?!六枚目突入しましたし。」
内村陽大
「ネットの情報だけで稼いでないよね?」
清水音羽
「大丈夫ですよ。ネットの情報使ってませんから。全て自分の考えです。」
内村陽大
「へぇ!やるじゃん!読むのが楽しみだよ。でも本当に宿題の進み早いな。」
清水音羽
「復習とかもしたいですからね。それにテスト勉強もありますし。」
内村陽大
「三年生の先生清水には期待してるから。あれだけ伸びたんだからな。」
清水音羽
「プレッシャーを与えないでくださいよ。復習とかの勉強忙しいし期末は9教科もあって余裕なくて自信ありませんから。」
復習が忙しいのは単純に二年間サボっていたせいなんだけど。
内村陽大
「体調崩さない程度に頑張ればいいよ。体調崩したら元も子もないからな。」
清水音羽
「そうですね。頑張ります。」
内村陽大
「じゃあ頑張ってる清水にアイス奢ってやる。あ、ハーゲンダッツみたいな高いのは無しな?」
清水音羽
「丁度食べたかったんですよ!」
音羽は冷蔵庫からガリガリ君のソーダ味を取り出した。
内村陽大
「みんなには内緒だからね。胡桃にもね。」
清水音羽
「大丈夫ですよ。そういうこと話すような相手いないんで。」
内村陽大
「・・・・」
清水音羽
「ごめんなさい。自分の会計してきます。」
余計なことを言ってしまった。
――――――――
清水音羽
「日帰りトレーニング?」
白澤光輝
「お盆休み前に三年生がやるの。12時間ひたすらプリントをやり続ける。内容はこれまで習ったことの全範囲だよ。合格しなければ帰れないから覚悟しててね。」
清水音羽
「鬼畜ですね。」
夏期講習中
問題を解いていると雑談が始まった。
白澤光輝
「12時間なんてする人いないからね。清水さんは最高何時間くらい?けっこうやってそうだけど。」
清水音羽
「24時間です。」
「はあ?!マジで?!」
「ヤバ!体力ありすぎ!」
その時間を聞いて同じブースの人たちが驚いてペンを止めた。
清水音羽
「あの時は社会をやっていましたね。全く手を付けて無い状態だったのでやばいと思って栄養ドリンク大量買いしてひたすら覚えてましたね。眠い時は目に保冷剤を当てたりなんかして。」
白澤光輝
「え?!本当に?!」
清水音羽
「嘘です。」
白澤光輝
「ああ。ビックリした。本当にやってそうだったから。」
清水音羽
「そんな体力あったら苦労しませんよ。休みの日だとせいぜい10時間くらいですかね。」
白澤光輝
「やっぱり多いじゃん。」
清水音羽
「元の学力低いですから。」
―――――――――
「無理して話しかけないでくれる?」
あの時俺はあいつにそう言い放った。
あいつは小さな声で「ごめん。」と言った。
それからは一度も会話を交わしてない。
大石大地
「おう。どうした?」
清野琢磨
「自習室にノート忘れてたから渡しておいてって白澤先生に言われた。」
オレは今次の授業まで自習室で勉強していた。
大石大地
「ありがとな。」
俺はそれを普通に受け取った。
琢磨は驚いた表情をして隣の自習室へ移動した。
別に和解したわけじゃない。
むしろ憎い。じゃあ何でだろう。
自分でも分からないや。
―――――――
こんな日々いつまで続くの?
南沢胡桃
「・・・・ああもう!!わからない!!」
自分の部屋で一人で勉強していた胡桃は頭を抱えてイライラしながらそう言った。
そのとき電話の音が鳴り響いた。いつもは親が掛けてくるけど掛ける時間ないって言ってたし友達には家電の番号なんか教えてないし。
南沢胡桃
「・・・もしもし?なんの用?」
あれしかいないか。
南沢胡桃
「え?!・・いやあの・・違うんです!!・・えっと・・・」
やばい。
南沢胡桃
「はっ・・はい!分かりました。」
もういっそのこと自由になったほうが良いのかもしれない。




