50話
南沢胡桃
「暑いね。クーラーつけようか。」
夏休み一日目の朝
夏期講習前に胡桃の部屋で勉強していた。
清水音羽
「ごめんね。こんな朝早くから勉強教えてもらって。」
南沢胡桃
「気にしないで!わたしの学校は中高一貫だから受験無いし!むしろ教えかた下手だったらごめんね?」
清水音羽
「いいや、分かりやすいよ!」
胡桃は優しくて明るくて頭が良い。
南沢胡桃
「なら良かった!ほかに分からないところある?」
清水音羽
「今のところは大丈夫!」
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内村陽大
「ああもう!!いやあ・・・」
昼の部活が終わり昼食のとき
内村先生が憂鬱そうな表情をしながらパックのお茶を飲んでいた。
坂下真理亜
「またですか。」
秋花真理子
「どうしたの?」
近くで昼食を食べていた秋花先生が聞く。
秋花先生は音楽担当の教師で優しくて話しやすいため生徒からの人気は高いがお説教が長く世話焼きのため一部からは嫌われている。
坂下真理亜
「お兄さんの子の面倒を見るように頼まれたらしいですよ。」
秋花真理子
「ええ・・・内村先生こども嫌いなの?内村先生のお兄さんって言ったらよほど歳が離れてない限り子どもは赤ちゃんから小学校入る前くらいの年齢でしょ。」
坂下真理亜
「いろいろ複雑でそのこ中学三年生なんです。」
内村陽大
「しかも女子」
秋花真理子
「ああ・・それは気まずい。」
内村陽大
「両親は夏休み中は遠くで仕事らしいです。もう地獄ですよ。」
秋花真理子
「でもそこまで嫌っちゃかわいそうよ。」
内村陽大
「あいつが僕を嫌ってるんです。」
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清水音羽
「ずっと気になってたんだけど胡桃の両親ってどんな仕事してるの?」
南沢胡桃
「うちの両親?なんで?」
午前中の夏期講習が終わり次の時間は夜で時間があるため
胡桃の家で昼食を食べていた。
清水音羽
「いや、中学生を一人暮らしさせるくらいだから特別な仕事なのかなって。」
南沢胡桃
「よくわからないの。でも年収は二人合わせて1800万くらいらしい。」
清水音羽
「すごっ!!」
南沢胡桃
「一人暮らししてるのはまあ色々あってね。両親はちょくちょく家に来たり電話したりする感じだよ。両親が忙しい時は親戚の人が来たりする。」
そこまで過保護にするなら一人暮らしなんかさせなきゃいいのに。
まあ人には言えない理由があるのだろう。
南沢胡桃
「て言うかそれ言うなら音羽だって。」
清水音羽
「ああ。うちは父親は元々いなくて母親と暮らしてたんだけどその母親が海外出張することになって親戚に引き取られる予定だったんだけど母親が他の人と暮らすと混乱するからって元々売らずにいたマンションの部屋を使ってる感じだよ。生活費は毎月けっこう貰ってる。」
南沢胡桃
「その親戚も相当お金持ちなんだね。でも知らない人と暮らすよりはいっそ一人になったほうがいいかもね。でも確か高校生の人がいたよね?」
清水音羽
「うん。でも帰ってくるの超遅いの。帰ってこない時もある。」
南沢胡桃
「それは男がいるね。高校生にもなるとねぇ。」
清水音羽
「ええ!でも夏目大学附属の優等生だよ?!」
南沢胡桃
「関係ないよ。受験終わったら勉強しない子いるし。進学校の偏差値って言うのは遊びまくってる人がいるなか天才と努力家が上げてる奴だし。うちの学校だってネット上では偏差値60ってことになってるけど実際そんなに無いよ。でも夏目附属はな・・・遊んでるとしても天才肌って可能性もあるし。」
清水音羽
「でもあのひと真面目そうだしなあ。」
南沢胡桃
「猫かぶってるかもしれないよ。ていうかそう言う子の方が落としやすいし。」
清水音羽
「そうなの?!」
南沢胡桃
「らしいよ。」
清水音羽
「でも胡桃が共学行ってたらモテそうだな。コミュ力あるし。」
南沢胡桃
「うちは親が厳しいから。中高生のうちはとにかく勉強って。」
清水音羽
「大変だね。親戚の人もそんな感じ?」
南沢胡桃
「いやいや全然!どちらかって言うと緩い人だよ。もう本当に!」
清水音羽
「じゃあ話しやすいね!」
南沢胡桃
「男の人だけどね・・しかも私お父さんと血が繋がってないしその弟さんだから他人なんだ。」
清水音羽
「ああ・・ごめん。」
南沢胡桃
「全然大丈夫!でもそのひとそう言うこと気にしない人だから!本当に嫌な顔とかしないし。」
清水音羽
「じゃあいい人なんだね!」
南沢胡桃
「・・・・うん。すごく優しいよ。あんな人が父親だったらいいのになって思っちゃうもん。」
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本日の夏期講習が終わり時刻は午後9時頃
清水音羽
「ああ・・・本当バカ。」
前日寝なさすぎて塾から帰る電車の中で思い切り爆睡してよくわかんない駅まで来ちゃった。一駅くらいで電車なんか使うんじゃなかった。
まだ夕飯食べてないしとりあえずコンビニで何か買お。
お腹減りすぎて我慢出来ない。
「だから余計なお世話!!」
「子供を一人にするわけには行かないだろ。」
女の人の声と男の人の声
でも聞いたことあるような声だ。
いや、絶対どこかで聞いたことある声だ。
私は気になって声が聞こえる方へ歩いた。
清水音羽
「うっそ・・・」
目の前の光景にめちゃめちゃ驚いた。
南沢胡桃
「うるさいなあ!もうとっくに慣れてるわよ!」
内村陽大
「そう言う事じゃなくて今は9時!変な奴がいてもおかしくない時間だぞ。」
南沢胡桃
「あんたよりマシよ!」
こわい。こわい。
いつも優しく話してる声はどこにいった。
ていうか親戚って内村先生だったの?!
内村陽大
「相変わらず口が悪いな。それでタクシー代持ってるの?」
南沢胡桃
「ここからタクシー使ったら料金高くなるから電車でいい。」
内村陽大
「あそこ駅から遠いだろ。危ないからタクシー使え。金なら払うから。」
南沢胡桃
「いやよ!わたし人からお金借りるの嫌いなの!」
内村陽大
「子供に取り立てるわけ無いだろ。金ならお前の両親に請求するから。」
南沢胡桃
「そしたら帰ったのバレるじゃん!て言うか私だって両親からお小遣い貰ってるんだから同じじゃん。」
内村陽大
「イヤなら言う通りにしろ。別にたかが数千円返せなんか言わねえ・・よ。」
そのとき私と内村先生の目が合った。
南沢胡桃
「最後の間はなによ!やっぱり電車で帰る!」
胡桃はそう言ってその場から走った。
ヤバい。建物の影に隠れてたから・・
南沢胡桃
「あれ?音羽じゃん!!なんでここに?」
胡桃はいつもの様に私に話しかけた。
清水音羽
「電車の中で爆睡しちゃったの。帰るついでにコンビニ寄ろうかなって。夕飯まだだからお腹空いちゃって。」
南沢胡桃
「そっか。じゃあ早く栄養補給しないとね!私もこれから帰るから一緒に帰らない?買い物終わるまで外で待ってるよ!」
清水音羽
「分かった!でもわたし優柔不断だから選ぶの遅いよ?」
南沢胡桃
「大丈夫だよ!ほら早く行こ!」
胡桃は私の手を引っ張ってコンビニまで歩いて行った。
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内村陽大
「・・・・ビックリした?」
そのあと内村先生もコンビニへ入り音羽に話しかけた。
清水音羽
「かなり・・・」
内村陽大
「て言うか俺もビックリなんだけど。」
清水音羽
「同じマンションに住んでるんです。それで何か親しくなって。勉強教えてもらったりしてるんです。胡桃は頭いいし。それにすごい優しいし。さっきは驚きましたけど。」
内村陽大
「おれには暴言吐くのにな。なんか嫌われるようなことしたかな・・・」
「すごく優しいよ。」
「あんたよりマシよ!」
どういう事なんだろう。
内村陽大
「でも友達には優しく出来てるんなら良かった。」
清水音羽
「なんかお父さんみたいですね。」
内村陽大
「それあいつの前で言ったら殺されるよ。」
どっちが本音なんだ。




