46話
「ごめんなさい!言うこと聞くから許して!」
「ダメよ!!そこで朝まで反省してなさい!」
おれが五歳の頃
母親に駄々を捏ねたら怒られて庭の倉庫の中に閉じ込められたことがあった。
「なんなら凍死してもいいのよ?あんたなんかいらないから。」
当時の俺は母親の言葉が冗談に聞こえなかった。
倉庫の中は真っ暗で怖かった。
しかも12月の真冬の時期なのですごく寒くて次の日には意識を失っていたらしい。
父親はいつも母親の味方ばかりしていた。
あの後だって「お前が悪い」の一言で片付けた。
それでも俺は親を嫌いになれなかった。
まだ幼かったこともあり親に甘えないと生きていけなかったのだ。
幼い頃は親に叱られたくないからずっといい子にしていた。
でも小学5年の頃からちょっと早めの反抗期が来た。
何をしても叱られる。褒めてくれたことなんか一度もない。
そんなのにウンザリしてきたんだ。
「ちょっと大地!皿洗っとけって言ったじゃん!」
「黙れババア!!」
元々体力があまりない母親は当時の俺が本気を出せば負けていた。
「ねえ!大地がグレたんだけど!私に暴力振ってくるの!」
「はあ?!そっちから殴ってきたんじゃん!」
「女に暴力振ってんじゃねえよ!」
そんなときは母親が俺が悪いかのように告げ口して父親は俺に殴りかかった。
だから小学生の頃は毎日傷だらけだった。
そして中学生になったとき
「ねえ、どこ小?」
「おれ?」
気の合う友達が出来た。
それが琢磨だ。
「えー!それ虐待じゃん!」
「酷えよな。早く一人暮らししたい。」
琢磨には親の愚痴も話していた。
そして俺が一年の頃の冬頃
母親が浮気して離婚した。
もともと共働きだったため父親はより忙しくなり会話する回数も減っていた。
て言うかほぼない。そんな生活にも慣れた中2の夏
大石大地
「なあ、お前夏休みの宿題どこまで進んだ?」
清野琢磨
「もう全部終わった。」
大石大地
「はやっ!」
清野琢磨
「はあ?今8月の半ばだぜ?終わってないほうがおかしいだろ。」
大石大地
「まだ終わってねえやついっぱいいるから!おれは毎年前日に徹夜スタイル」
部活を終えて話をしながら歩いていた。
「ねぇ、あの子さ、私服だけど小学生かな?」
「今日なんかあったっけ?」
どこからかそんな会話が聞こえたので
清野琢磨
「もしかして転入生とか?二年の方の乗降口に向かって歩いてるし。」
大石大地
「えー。ちっせ。俺よりちっせ。」
「あ!ボール見つかった!投げるぞ?」
「バカ!お前!そこに人いる!」
その女の子を見てそんなふうに言っているとテニスボールが彼女の方へ向かっているのが見えた。
大石大地
「あぶねっ!」
俺はとっさに彼女のほうへ走りテニスボールを掴んだ。
大石大地
「ちゃんと周りみろよ!テニスボールとか人の頭にあたったら死ぬよ?」
ってどこかで聞いたことがある。
大石大地
「怪我してないよね?」
清水音羽
「だっ・・だ・・だいっ・・大丈夫・・です。あっ・・ありがとう・・ご・・ございました。」
なんだこいつ。
めちゃめちゃ人見知りなのか。
大石大地
「あ・・うん。」
まさか同じクラスになるなんてね。
それから色々あって普通に話せる仲になった。
その時にあいつが現れた。
音羽が最初の頃に異常なまでに男を怖がっていたのはあいつのせいだ。
だからあいつからの暴力を阻止するために先生に相談したりして解決したと思わせた。でも実際は違った。
大石大地
「はあ?!逆恨みも程々にしろよ!!」
あの次の日に俺に八つ当たりしてた。
鈴木伊緒
「いいのかなあ?!」
大石大地
「なにが?」
鈴木伊緒
「あいつの秘密バラしちゃっても。これバラされたらあいつの人生終わるよ。」
その時は音羽の秘密を知らなかったけど
こいつのデカい態度を見て相当ヤバイことだと察した。
大石大地
「マジで下衆野郎だな。」
鈴木伊緒
「教師なんて信用しない方がいいよ?あいつらはイジメを無くしたいわけじゃなくて隠したいだけだから。無くしたいなら俺の親になんか言ってるはずだし。」
大石大地
「一回目だから軽く注意で済ませてんじゃねえの?」
鈴木伊緒
「うちの親はモンスターペアレントだからな。」
大石大地
「転入したばかりなんだからそんなこと知らないじゃん。」
鈴木伊緒
「お前何もわかってねえんだな。生徒に隠してるだけで教師たちは日々クレーム対応してるの。道端で広がって歩いてるだとか。うるさいだとか。買食いしてるとか。成績に不満があるとか。教師は親が怖いんだよ!!」
大石大地
「・・・・」
馬鹿な俺は騙されてしまった。
それからずっと暴力を振るわれた。
あいつは他人には見えないところに傷をつくるように暴力を振ってたから誰も気づかない。親も俺に関心がないから知ったこっちゃない。
そしてあの日・・・
大石大地
「鈴木お前いい加減にしろよ。あいつの次は琢磨か?」
鈴木伊緒
「・・・・・・バーカ。」
俺が怒ると鈴木はいやらしく笑ってそう言った。
大石大地
「意味分かんない。琢磨帰ろうぜ。」
俺がそう言って琢磨の手を引いた直後
大石大地
「・・・・・え?」
顔を殴られた。
今誰が殴った?!
鈴木は偉そうに立ってる。
大石大地
「な・・・なに・・・」
俺は殴られた頬を抑えてそれしか言えなかった。
鈴木伊緒
「アハハッ!!すげぇバカ面!!」
清野琢磨
「触んじゃねえよ。気持ち悪い。」
鈴木伊緒
「言っとくけど今の全部お芝居だからね!!お前を引き寄せるための!!本当にお前ってバカだよな!!行こうぜ琢磨」
清野琢磨
「ああ。」
それから琢磨と二人で話せる機会を何度も作った。
ラインをしたり学校行く時に待ち伏せたり。
でも・・・
清野琢磨
「近づくんじゃねえよクズ!!二度と友達面して話しかけんな!」
言われることは同じだった。




