表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイトル無し  作者: ルル
44/75

44話 

「・・で遺体となって発見されたのは中学3年生の男子生徒で・・」

 

いつもの朝

起きて朝食の支度をしてテレビをつけるとそのようなニュースが流れていた。


内村陽大

「・・・・」


俺はマグカップを落としポカンとしながらテレビを見ていた。


――――――(教室)


「今朝のニュース見た?!」

「あの伊緒なの?!」

「怖くない?!」


昨日の夜の事だった。

通り魔に身体の至るところを複数回刺されて死亡したというニュースは日本ではよくあることだが学校中ではそれ以外の話など聞こえないほどすごい騒がれていた。


坂下真理亜

「ということがありましたので部活はしばらくありません。帰るときは一人にならないようにしてください。あと人気の少ないところは出歩かないこと。」 


日本ではよくあることだけどまさか自分の身の回りで起こるなんて誰も思わない。 


大石大地

「じゃあ塾ある人どうするんですか?」


坂下真理亜

「どうしても行かなきゃならないなら人気の多いところを歩いてください。」


大地は普通に質問した。

まるでみんなと同様いま知ったかのように。


清水音羽

「・・・・」


少し恐怖心を抱いてしまった。


―――――――(放課後)


内村陽大

「ごめんね。すぐ終わるから。」


放課後の学年室


清水音羽

「・・・・」


話は分かっている。このことだ。


清水音羽

「殺してやりたいと思ったことはありますけど私は殺っていませんからね。」


念の為言っておいた。

疑われる可能性が無いとは言えないからだ。


内村陽大

「うん。清水を疑ってるわけじゃないから。」


犯人はきっとあいつだ。

昨日の意味深な発言はこういうことだったんだ。


内村陽大 

「きのうあいつどうだった?なんか変なこと言ってたりしなかった?」


清水音羽

「・・・普通・・ですかね。」


普通じゃなかったのは私の方だ。

バラされたことによってパニックになってあんなことをした。

ただエスカレートするだけと分かっていたのに。


最初にあいつの優しさに甘えなかったら良かった。


内村陽大 

「普通か・・俺と話した時は普通じゃなかったよ。言ってることは正しかったけど。」


教師に限らず人間なんて本当に追い込まれれば自分優先なんだ。 

でもあいつは違った。自分の手を汚してでも友達を優先した。


清水音羽

「・・・聞きたかったのはそれだけ。もう帰っていいよ。」


内村先生がそう言うと音羽はゆっくりとその場から去った。


――――――(教室)


大石大地

「・・・・」


坂下真理亜

「・・・・・」


誰もいない教室

聞こえるのはセミの鳴き声


坂下真理亜

「時間かかるけどいいかしら?まああんた次第だけど。」


大石大地

「べつに・・かまいません。」


話の内容は分かってる。


坂下真理亜

「鈴木くん殺したの?」


大石大地

「はい。それでどうするんですか?俺を少年院送りにでもするんですか?」


「それでどうするの?わたしを警察にでも突き出す気?」


坂下真理亜

「べつに・・」


「べつにそんなことするつもりはないよ。」


大石大地

「変わってますね。」


「変わってるね。」

「だって正当な理由だし・・俺はそう思う。」


何から何まであの時と同じような会話だ。


「ほんと・・日本の法律はおかしいよ。」


大石大地

「日本の法律っておかしいと思いませんか。なんで人を殺しちゃいけないんですか。」


坂下真理亜

「そんなの知らないわ。でも赤ちゃんがどうやって産まれるか分かる?すごく痛いらしいわ。知り合いから聞いたことあるけど鼻からスイカが出てくるような痛みだって。それが一瞬だけじゃない。ずっと続くの。それまでの過程も楽じゃない。何ヶ月間もダンベルを持たされてるように苦しくて食欲はなくて吐き気もして動けない。そんな痛い思いをしてやっと産まれる。」


大石大地

「・・・・」


坂下真理亜

「でも殺すのは簡単よ。ナイフを持って思い切り刺せばいい。ちょっと体力はいるけどそいつが自分にとって憎くて憎くてたまらないような人だったら快感になる。痛みを感じながら悲鳴をあげてるのを見て気持ちいいったらありゃしない。でもだんだん飽きてくる。その時に心臓を刺すの。そしたら逝ってくれる。」


大石大地

「・・・クッ・・・ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


大地は突然笑い始めた。


大石大地

「そうですよ!気持ちいいんですよ!!」


ドアの向こう側から会話が聞こえる。


大石大地

「でもよくそんな分かったような口聞けますね。何も知らないくせに。」


坂下真理亜

「そっちこそ私のなにを知ってそんなこと言えるの?」


大石大地  

「・・・・・」


セミの鳴き声がまたうるさくなった。


大石大地

「ああ・・・そういうことですか。」


何かを察した。


坂下真理亜

「・・・・話はそれだけ。また明日」


そう言って坂下先生は教室から出た。


清水音羽

「・・・・」


昨日と同じ時間帯 

でも二人がいる位置が違う。


清水音羽

「いたの・・」


昨日と同じセリフを吐いて自分のかばんを持ち

音羽はその場から去った。

そのとき誰かの足音が聞こえた。


大石大地

「・・・・」


内村陽大

「ちょっといい?」


昨日と同じように学年室へ入った。


内村陽大 

「坂下先生との会話聞いてた。」


大石大地

「・・・・そうですか。」


内村陽大

「これでよかった?」


大石大地 

「良かったですよ。俺思ったんですよ。世の中には死んだ方がいい人間だっていると思います。あいつがそういう人間なだけです。」


内村陽大

「じゃあ罪悪感はないんだ。」


大石大地

「当たり前じゃないですか!!なんであんな奴殺したくらいで罪悪感を感じなきゃいけないんですか?おれそういうキレイ事きらいなんですよ。」


法を犯しても自分は正しいことをしたと思える。


大石大地

「汚いことして解決していい事もあると思います。むしろ正義だと思えちゃいますけど。」  


内村陽大

「確かに俺はキレイ事ばっかでなんの力にもなれなかったよ。こんなこと言うべきじゃないと思うけど教師だって人間だよ?必ずしも生徒をいい方向へ導き出すことなんか出来ない。これから関わる進路にしたってね。それにいくら他人思いの人でも本当に追い込まれたら自分を優先するよ。よくいじめ自殺のニュースでも学校側はいじめの事実を否定する。それはなんでだと思う?自分のため。もう他人なんかどうでもいいの。」


大石大地

「・・・・」


内村陽大

「でもお前は違かった。自分の手を汚してでも友達を救いたかった。今までお前のことどこにでもいるお人好しくらいにしか思ってなかったけど・・・・・底なしのクズ野郎だったよ。」


大石大地

「はあ?!」


内村陽大

「人の人生終わらせといてなにが正義だよ!!」


内村先生は大声で怒鳴るように言った。


内村陽大

「あいつだって人間なんだよ!!どんなにひどい奴でも人間に生まれたからには人間何だよ!!おまえは悪い方向にしか考えなかったけどもしかしたら更正出来たかもしれないじゃん!!この先人のためになるようなことしたかもしれないじゃん!!清水やお前にも時間かけて償いをしたかもしれないじゃん!!」


大石大地

「・・・・やっぱ俺あんた嫌いだわ。どこまでもキレイ事並べやがって。」


内村陽大

「別にいいけど。お前がマイナス思考なだけじゃない?」

























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ