3話
転入してから二週間経った。
大石太地
「おはよー!なんか提出物あったっけ?」
清野拓真
「英語のプリントだろ。しかも単語テストあるじゃん。ちゃんと勉強したか?」
大石太地
「ヤバい。してない。おれ今まで一度も満点逃したことないのに。」
清野拓真
「当たり前だ。10点満点なんだからな。終わってないならさっさとやれ。」
朝、登校すると隣の席が騒がしかった。
わたしは課題は終わらせたので単語テストの勉強をしていた。
大石大地
「ヤバい単語書いてあるプリントがない!・・ねぇ!すぐ返すから写させて?音羽」
清水音羽
「えっ・・あ、どうぞ。」
私は言われたプリントをさっと渡した。
て言うか何でわたしに言ったんだ。
大地はノートに英単語と意味をササッと書いて音羽にプリントを返した。
大石大地
「サンキュ!」
大地が音羽にそう言うと音羽は英単語の練習をしたまま目を合わせずにコクリと頷いた。
その様子をクラスの女子生徒たちがジロジロと見ていた。
――――――PM1時5分
四時間目までの授業が終わり昼食を食べ終えたので音羽はポーッと本を読んでいた。
真城アリス
「この本好きなの?」
すると音羽の席の目の前にアリスが現れアリスは音羽が読んでる本の表紙を見て聞いた。
清水音羽
「みんな見ずにグロいって言ってたんだよね。感動モノなんだけど。あ、みんなって言うのは前の学校のクラスメートね。」
真城アリス
「アニメなら見たことあるかな。最初よく設定が理解できなかったんだけど。」
清水音羽
「だよね。わたしもそうだったよ。」
「アリス!先輩が呼んでる!」
二人で話していると同じクラスの女子がアリスに言った。
真城アリス
「ごめん。また後でね。」
アリスがそう言い立ち去ると音羽も本を読むのをやめてトイレへ向かった。
「なんかさあ・・感じ悪くない?」
「感じ悪いというかぶりっ子」
トイレの前まで行くと中にいる同じクラスの数人の女子が悪口を言っていた。
ああ言う雰囲気苦手なんだよな。
やっぱりどこにでもいるんだああいう人たち
「音羽でしょ?今朝だってわたし男子苦手ですー。みたいな演技してさ。超キモかった。」
他人事だと思ってたら自分だったし。
演技じゃないし。本当に苦手なだけだし。
「それなー!」
「もしかして転入の理由っていじめから逃げた感じじゃない?いじめられそうな感じあるしねー。」
早く教室に戻ろ。
トイレ我慢できなくないし。
ああ。気分悪い。
逃げて何が悪いの。
――――――(放課後)
大石大地
「次は絶対負けねえし!」
大澤花凛
「はい。はい。もう聞き飽きた。てかあんたじゃ勝負にならないよ。三年生が引退して部長は私になったし。やっぱり誰にも負けたくないな。とりあえずアリスに勝ちたい。」
大石大地
「それこそ勝負にならないじゃん。」
大澤花凛
「お前に言われたくないわ!わたし夏休み部活以外でもめっちゃ練習したから!今日は絶対勝つ!行こアリス!」
ホームルームが終わると帰る人や部活に行く人が次々と教室から出て行った。
教室の中には私とこのクラスの卓球部の人たちがいる。
真城アリス
「ごめん!花凛!わたし今日は塾なの!」
大澤花凛
「そっか。今日は水曜だもんね。それじゃあ明日ね!」
真城アリス
「うん!明日の試合相手が部長でも容赦しないからね!」
大澤花凛
「言ったな?負けたらハーゲン●ッツ奢ってもらうから!」
そんな会話をしてみんな教室から出た。
大地と花凛は部活へ行き私とアリスは学校から出た。
真城アリス
「それでディ●ニー行ったあとにお母さんに買ってもらったんだ。最高の誕生日プレゼントだよ。」
清水音羽
「いいよね。優しそうなお母さんで。」
真城アリス
「うん!でも普段はお互いに忙しくてあんまり話せないの。うちは母子家庭でお母さんお仕事忙しくて。」
清水音羽
「うちも母子家庭なの。わたしが小学二年生くらいの頃に離婚しちゃって。まあうちの母親が働いてる職場ってホワイトだから忙しすぎて会えないってことはないけどね。」
真城アリス
「いいな。」
アリスは一瞬、表情を曇らせてそう言った。
なんかいけないことを言ってしまった気がした。
清水音羽
「うちの親はアリスの親みたいに優しくないから。」
親なんて鬱陶しいッたらありゃしない。
真城アリス
「・・・・」
清水音羽
「あ、やらかした。教室に財布忘れた!」
アリスがまた表情を曇らせて黙ると
ふと思い出した。何でこのタイミングで?
真城アリス
「え?!いくら入ってるの?」
清水音羽
「500円くらい。今日学校の帰りにどうしても買わなきゃいけないものがあったの。取ってくる!先帰ってていいよ!本当ごめんね?!」
そう言いながら音羽は学校の方向へと走っていった。
――――――(教室)
清水音羽
「あ、・・」
大石大地
「お前か。」
財布を取りに教室へ行くと中にジャージ姿の大地がいた。
多分教室に何か忘れたので取りに来たのだろう。
大石大地
「つうかお前、なに机に財布置きっぱなしにしてんの?こんなん持ってって下さいって言ってるようなもんじゃん。」
清水音羽
「ごっ・・ご、ごめんなさい。」
私は机の上の財布をサッと取ってカバンの中へ入れた。
大石大地
「ねぇ!ひとつ言ってもいい?」
私がさっさと教室から出ようとすると少し怒ったような口ぶりでわたしに聞いた。
清水音羽
「な・・なんで・・すか。」
なにこの雰囲気
すごく怖い。
「あーあ。お前の顔見るだけで殴りたくなってきた。」
「もう殺しちゃってもいいんじゃね?」
ヤバい。嫌な過去が・・
いやだ・本当に鬱陶しい。
大石大地
「鬱陶しいんだよ!」
大地は声を荒げて私にそういった。
大石大地
「イライラするんだよね。」
ああ。転入してからずっと怯えた態度で接してたから?
昼休みの女子達みたいに言うの?
大石大地
「そんなに怯えられるとさ。最初は初対面だったから緊張してるんだなって思ってたよ?でもずっと話しかけても頷くだけだし目合わせないしいちいち怯えてくるし。はっきり言って超イライラする。」
清水音羽
「ご・・めんなさい。」
私は涙目で謝った。
大石大地
「うわ・・そんだけで泣くとかヤバ・・・身長だけじゃなくてメンタルも小学生かよ。」
大地は引いたようにそう言った。
ヤダ。この人怖い。
大石大地
「ああ。もしかして転入した理由ってイジメ?・・ならしっくり来るわ。そりゃ鬱陶しくて虐めたくもなるわ。」
大地は笑いながらそう言った。
清水音羽
「・・・・」
こいつウザイ。
そうだよ。こいつはあいつじゃない。
あいつみたいにあんな真似できる訳もないし。
あいつみたいに厳つくない。
嫌な目には散々あってきたんだしもうどうなってもいいや。
清水音羽
「だから何なの?!あんたに関係無いでしょ!鬱陶しいから虐めたくなる?お前アタマ大丈夫?クソ野郎だな。て言うか私のこと小学生だって言ったけどあんたも男子にしては身長低いし今の言動に至ってはもはや人間ですら無いから。」
ヤバい。何されるかわからない。
でもいいや。今更ね・・・・
なんて思いながら逃げるようにこの場から去った。




