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タイトル無し  作者: ルル
17/75

17話 

真城アリス

「そのケガどうしたの?」


アリスが音羽の擦りむいた膝を見て聞いた。


清水音羽

「転んだ。」


予想通りの答えだった。

本当のことなんか言えるわけがないだろう。


アリスはなんの疑いもなく「気をつけなよ。」と言った。


鈴木伊緒

「清水さん!」


突然話しかけられると音羽は「ビクっ」と肩を震わせた。


鈴木伊緒

「そんなに驚かなくてもね・・・ちょっと話でもしたいなって。」


なんでわたしなの?お前に群がる奴らとでも喋っとけよ。

 

真城アリス

「転入生仲間だもんね!話してみたら?わたしちょっとトイレ行ってくる!」


やばい。初めてアリスに怒りを感じた。

まあしょうがないけど。


大石大地

「よお!音羽!坂下先生が呼んでたぜ!」


すると隣の席にいた大地が音羽にそう言った。


清水音羽

「え?なに?怒られんの?」


大石大地

「早く来いって言ってた!職員室!」


大地がそう言うと音羽は疑問を感じながら教室から出た。


清水音羽

「こわいわ。なんかやらかしたのかな。」


思い当たることが全然ない。

まさか「成績悪いからお前だけ補修だ!」とか?

でも私より馬鹿なやつなんているし。


大石大地

「嘘ついた。」


清水音羽

「え?」


教室を出てしばらく歩いた先で言われた。


大石大地

「あいつと話すの嫌でしょ。」


清水音羽

「・・・」


真城アリス

「あれ、ここでなにしてんの?」


トイレを済ませて廊下に出たアリスが聞いた。


清水音羽

「わたしもトイレ行きたくなったの。」


音羽はそう言ってトイレに駆け込んだ。


真城アリス

「・・・・」


アリスは何かを疑うような目で音羽を見ていた。

 

―――――(放課後)


あいつは誰にもどうにも出来ない。

今までだってそうだった。


鈴木伊緒 

「明日までに1000円持って来い!」


清水音羽

「・・・持って・・ないです・・」


放課後の誰もいない教室で

音羽は震えて涙目になりながら壁により掛かり伊緒は両手で壁に手をついて音羽を鋭く睨みつけていた。


鈴木伊緒

「嘘つけこのクズ女!!」


伊緒は怒鳴って音羽の頬に往復ビンタをした。

音羽は痛くて涙を流し始めた。


清水音羽

「ごめんなさい・・ごめんなさい・・ごめんなさい。」


泣きながら謝ってしゃがみはじめた。


鈴木伊緒

「誰がしゃがめって言ったんだよ!!とっとと立てよオラ!」


伊緒は音羽の髪を引っ張って無理やり立たせた。


鈴木伊緒 

「伸びてきたな。また切ってやろうか?」


伊緒は音羽の肩に届く黒髪を触ってニタニタと笑ってそう言った。


鈴木伊緒

「絶対持って来い!!じゃないとアノ時撮った動画ばら撒いてやる!」


まだ持ってたの?!


清水音羽

「イヤ!!それだけはやめて!!お願いします!!」


音羽は伊緒に土下座してお願いした。


鈴木伊緒

「頼むね。」


その音羽を見て笑いながら背中を踏みつけてそう言いこの場から去った。

 

清水音羽

「どうしよう。」


伊緒が教室から出てしばらくして呟いた。


これもまだ優しい方だ。

あの時はいくらだったか。


音羽は辛くなって泣き始めた。


これからどうなるの?

また同じ運命を繰り返すの?


私の居場所なんか何処にもないの?

 

そのとき教室のドアを開ける音が聞こえた。

音羽は慌てて涙を吹いて立って何事も無かったかのように振り向いた。


清水音羽

「なんだ。大地か。」


大石大地 

「もう部活終わってる時間だから人来ちゃうよ。とっとと帰ろうぜ。」


大地は教室に置いてあるカバンを持って教室を出ようとしたので音羽もそうした。  


大石大地

「顔腫れてるよ?」


清水音羽

「えっと・・赤くなってるだけだと思うけど。教室は暖房効いてて暑いし。」


なにをキツイ言い訳をしているんだろう。

あいつと関わらせないようにしないと。


あいつらみたいに汚い人間になって欲しくないし反感買って傷つけたくない。


大石大地

「いいよ。そんな嘘つかなくて。殴られたんだろ。」


清水音羽

「いいや、往復ビンタ」


大石大地

「どっちにしろ最悪じゃねえかよ!あいつに何いわれたの?」


清水音羽

「・・・・」

 

大石大地 

「なんで黙るんだよ。」


清水音羽

「大地に話して私になんかメリットあるの?」


お願いだから踏み込んでこないで。

我慢するのは私一人だけで充分よ。


大石大地

「助けてやるから!・・先生に言いたくないんだろ?俺じゃあんまり頼れないかもしれないけど。誰も傷つかない方法でね。それにお前には信用出来る友達がいるだろ。あいつなら絶対お前の言うこと信じてくれるから。」


涙が出てきた。 

今まで出してきた涙は悲しかったり絶望したり痛かったり苦しかったり

暗いことでしか出さなかったのに。 


なんで涙が出るの? 

わたしは何で泣いてるの?


大石大地

「え?!・・ちょっ・・なんで?!気に触るようなこと言った?!」


大地が動揺して聞いた。


清水音羽

「違うの。悲しくないのに涙が出るの。むしろ嬉しいの。」


嬉し涙だ。

こんなのはじめてだ。  


清水音羽

「ありがとう。・・それで頼みたいことがあるんだけどさ。」


大石大地

「なに?」


清水音羽

「あいつに1000円持って来いって言われたの。だからこれから放課後になんか理由つけてあいつから引き離してくれない?先生に呼ばれてるとか言ってさ。アリスが部活行かない時はアリスと帰るようにするから。」


大石大地

「わかった。」


人間はもっと残酷なんだよ。











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