16話
清水音羽
「今日だっけ?」
音羽は新しく設置された机と椅子を見て言った。
11月の後半
すっかり寒くなり教室と廊下の気温の差がハッキリと分かり始めた。
大石大地
「おれ見たことあるけど背高くてかっこ良かったよ。絶対モテるわ。」
清水音羽
「へえ。」
その時は考えもしなかった。
―――――(ホームルーム)
坂下真理亜
「それじゃあ名前と出身地を」
「はい。どうもはじめまして。鈴木伊緒です。北海道から来ました。」
転入生は背が高く
顔もジャニーズとまでは言わないが格好いい方だった。
坂下真理亜
「じゃあ清水さんの時と同じように質問する時間とかあげるけどみんな聞きたいことある?」
鈴木伊緒
「きよ・・みず?」
坂下真理亜
「ああ。彼女も2学期始まってから転入したのよ。真ん中の席の子ね」
真理亜に説明された方を見ると
鈴木伊緒は一瞬顔色を変えたがすぐに元に戻して
鈴木伊緒
「転入生仲間がいて安心しました。これからよろしくお願いします。」
笑顔で音羽に挨拶をした。
清水音羽
「・・・よろしく。」
音羽は暗い表情で鈴木伊緒と目をあわせずに言った。
大石大地
「なんか感じ悪くね?!」
その様子を見て隣の席の大地は突っ込むようにそう言った。
清水音羽
「・・・・私いつもこうだけど。」
―――――――(昼休み)
「部活どこ入る?!」
「運動出来そうだよね!」
鈴木伊緒の周りには沢山の人が集まった。
真城アリス
「まるでアイドルね。」
いつものように音羽と話していたアリスがその様子を見て笑いながら言った。
清水音羽
「・・・・」
真城アリス
「音羽?」
清水音羽
「ああ。ごめんごめん。ちょっとボーっとしてた。」
大石大地
「自分の時と違って注目されて悔しいなーって?」
清水音羽
「そんなんじゃ無いし。」
隣の席で会話を聞いていた大地が冗談のように聞くと音羽は冷たく言い返した。
大石大地
「・・・」
なんか今日おかしくないか。
初対面の相手だったから緊張していただけ?
――――(放課後)
きっと誰も信じないだろうな。
清水音羽
「・・・はぁ。」
音羽がため息をついて歩いていると
鈴木伊緒
「・・・よぉ。」
清水音羽
「・・・・」
まるで知り合いかのように後ろから声をかけてきた。
鈴木伊緒
「こんな偶然あるんだなあ。」
早歩きし始めた音羽を追いかけるように歩き始め
清水音羽
「来ないで!!」
鈴木伊緒
「誰に向かってんな生意気な口叩いてんだよ!!」
音羽が怖がるようにそう言うと伊緒は怒鳴って言い返して
音羽の胸ぐらを掴み突き飛ばした。
ここは通学路で部活をやっている時間帯のため人がいない。
鈴木伊緒
「死ねばいいのに。」
そして鈴木伊緒は音羽の身体を踏みつけて
鈴木伊緒
「あんだけ遊んであげたのにまだ生きてるなんて凄えよな。」
ニタニタと笑いながらそう言った。
清水音羽
「・・・」
散々嫌な目にあってきたのに
どうして・・
鈴木伊緒
「死ぬまで追い詰めてやるよ。」
そう言って伊緒はもう1蹴りして笑いながらこの場から去った。
清水音羽
「・・・」
そのとき何かを落とすような音が聞こえた。
音が聞こえた方を見ると
大石大地
「・・・」
大地が驚いたような表情をしてこちらを見ていた。
大石大地
「・・・た・・立てる?」
大地は手を伸ばして聞いた。
清水音羽
「大丈夫・・」
音羽は蹴られたところを抑えながら立った。
大石大地
「あいつって・・・」
清水音羽
「前の学校で私をいじめた張本人・・・とんでもない下衆野郎だから関わらないほうがいいよ。」
大石大地
「こっわ・・」
清水音羽
「今のはまだヌルい方だよ。これは先生とかに相談しても無駄だから。」
大石大地
「なんでだよ!!普通にやべえだろ!」
清水音羽
「誰があいつが人に暴力振る下衆野郎だって信じるの?!誰も信じないから!あいつ前の学校で散々私に嫌がらせしてきたんだよ!それもあいつ一人だけじゃない!クラスメートも使ってね!それなのに人騙すの上手いから先生はあいつの事信じて・・・本当にムカツク・・」
大石大地
「・・・俺も・・」




