1話
きっと前の環境に比べたら全然マシよ。
自分にそう言い聞かせながら校門の中へ入っていった。
清水音羽
「暑い・・」
やっぱり北海道から関東だとあまりの暑さに身体が慣れない。
「なあ、お前夏休みの宿題どこまで進んだ?」
「もう全部終わった。」
「はやっ!」
「はあ?今8月の半ばだぜ?終わってないほうがおかしいだろ。」
体操服を来た男女数人が歩きながら話していた。
「ねぇ、あの子さ、私服だけど小学生かな?」
「今日なんかあったっけ?」
その人たちの話題が夏休みの宿題から私へと変わった。
私は小学生じゃないし私服なのは制服がまだ作り終えてないだけ。
でも中学二年の女子にしては142cmと確かに身長は低い。
それで制服着てないんじゃしょうが無いか。
「あ!ボール見つかった!投げるぞ?」
「バカ!お前!そこに人いる!」
清水音羽
「・・・あっ」
テニス部が練習中にボールを無くしそれを見つけたので投げて返そうとしたボールが勢い良く音羽の方向へと向かった。
清水音羽
「・・・」
あれ、当たらない。
怖くて目を瞑っていた音羽がゆっくりと目を開けると私の目の前にテニスボールを掴んでいる男子がいた。
背は私より少し高い。多分150行ってるか行ってないかくらいだ。
「ちゃんと周りみろよ。テニスボールとか人の頭に当たったら死ぬよ?」
さっき話していた人の一人だ。
「わりいわりい!」
「謝る相手が違うだろ。」
ボールを投げた男子が笑いながら謝ると私の目の前でボールを掴んだ男子が呆れるようにそう言った。
「本当すんません。」
投げた男子が私に笑いながら頭を下げて謝ると走ってテニスコートへ向かった。
「怪我してないよね?」
ボールを掴んだ男子が私にそう聞くと。
清水音羽
「だっ・・だ・・だいっ・・大丈夫・・です。あっ・・ありがとう・・ご・・ございました。」
私は緊張して噛みながらお礼を言った。
「あ・・うん。」
相手は私の緊張ぶりに若干引いてこの場から去った。
「なに威圧てんのー」
「してねえし。」
ああ。やってしまった。
転入したんだから直そうと思ったのにな。
「あの清水さんですか?」
清水音羽
「はっ・・はい。・・」
二年生の昇降口まで歩いてしばらくすると男の先生が現れた。
身長は165cmほどで細く眼鏡をかけている。
見た目はそんなに怖くなさそう。むしろ優しそう。
「待たせてすいません。どうぞ中へ。」
清水音羽
「しっ・・し・・失礼しますっ。」
平常心を保たなくちゃ・・
わたしは出席番号が書いてない適当なところに自分の靴をいれて上履きに履き替えて先生についていった。
「あ、自己紹介しときますね。俺、二年の国語担当の内村陽大です。」
清水音羽
「宜しく・・おねがいします。」
やっぱり怖いや。
内村陽大
「ごめんなさいね。本当は担任に色々と説明してもらうはずだったんですけど今ちょっと手が離せないみたいで。」
清水音羽
「いっ・・いいえ。」
「やだ職員室入るの怖い!」
「じゃあジャンケンで決めようぜ。文句無しの一発勝負だからな。」
「じゃあジャンケン・・ぶっ・・アハハハハ!ダジャレかよ!笑わすなよ!」
さっきの人たちだ。
職員室の前で何してるんだろ。
内村陽大
「お前ら何してるの?」
「来た救世主!内村先生!部室に忘れ物したんですよ。鍵貸して下さい。」
さっきボールを掴んでくれた男子が内村先生にお願いした。
内村陽大
「ああ。いいよ。ちょっと待ってろ。」
「運が良かったな。俺ら帰るから。」
「おう!」
そう言って数人が去り内村先生が職員室の中へ入ったので職員室の前にいるのは私と彼の二人だけになった。
さっきあんな態度で接しちゃったからな。
気まずい。怖い。
なぜなら私は・・・
「・・・・」
清水音羽
「・・・・」
男の人がすごく苦手だから。
内村陽大
「ほらよ。早く取りに行ってこい。」
内村先生が鍵を彼に渡すと彼はお礼を言って部室へ向かった。
内村陽大
「すいませんね。」
そう言ってそのまま私を職員室の中へ入れた。
内村陽大
「これは保護者の方に渡しておいて下さい。それと夏休み明けは8時45分から全校集会があるので自分のクラスの一番後ろに並んでおいて下さい。転入生が来ることはクラスの人には伝えてあるので変な目で見られることはないと思うので。」
清水音羽
「はい・・・。」
私は書類が入ってるファイルを鞄の中に入れた。
「失礼します。卓球部の部室の鍵を返しに来ました。」
内村陽大
「あれ、おれ大石に渡したはずなんだけど。」
「わたしも部室に忘れ物をしてしまったので渡してもらったんです。」
内村先生と話しているのは白いセーラー服に見を包み白い肌と茶髪のフワフワな腰まで届く長い髪が印象的な美少女だった。
内村陽大
「忘れすぎでしょ。でもありがと。・・あと頼みがあるんだけどいいかな?」
「なんですか?」
内村陽大
「夏休み明けに転入生来るの知ってるよね?今、俺の近くにいるこの子がそうなんだけど校門まで案内してあげてくれない?」
「わかりました。」
彼女がそう返事をしてわたしに「それじゃ行こうか。」と言い二人で職員室から出た。最初はお互いに名を名乗り話し始めた。
真城アリス(ましろありす)
「うちのクラスは雰囲気はけっこういい感じだよ?担任の先生も女の人でね。すごい美人なの。でもちょっとクールなひとだから最初は近寄れないかもしれないけど割と慣れるよ。ああ。それと私と話すときはタメ口でいいよ。無理にとは言わないけど。」
清水音羽
「うん。分かった。でもクラスの雰囲気いいって聞いて安心した。前の学校はクソやろっ・・・乱暴な人とかいたし。」
真城アリス
「ならここ来て良かったね。」
なんて話をしながら校門まで歩いて家に帰った。
清水音羽
「うん。」
本当に良かった。




