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何かと便利なconvenience (意味の重複)

詰まりました(´・ω・`)

時刻は16時。生徒は既に下校しているか、部活をしている時間。

外では野球部がカキーンっと、ボールを打っているいい音が鳴り響き、サッカー部はランニングをしているのが想像できるような声を出している時間。


……なのだが、今日は生徒はおろか、教師も全て帰宅している。

教室も、職員室も明かりはついていない。

運動場にも誰もおらず、シーン……と、風が吹く音と、セミの鳴き声くらいしか聞こえない。

電車の時間は16時30分。学校が終わった時間は16時。そして、駅まで徒歩約20分。


うん、充分に間に合う。寄り道をしなければ間に合う距離だ。


校門を出て、イヤホンを両耳につけて音楽を聴き始める。

シャカシャカと、少しだけ音漏れするような音量で、鼻歌を口ずさみながら歩いていく。

早歩き、大股で進み、股関節への負担はあるものの、スピードは出る。

これのおかげで、約20分かかる通学路を、約10分に短縮できるのだ。


「う〜ん、アニソンやゲームソングはやはりいいなぁ……」


と、そんな事をボソリと呟いていく。

時には音量MAXで、ガンガン鳴らす場合もあるが、そんなことはごく稀だ。

普段は、その音楽の種類、音量に合わせて調節する。


「あとは、これにコーヒーや紅茶があれば最高なんだけどねぇ……」


ふぅ〜……っと、息を吐いて足を進める。


見渡す景色は家、山、海、田んぼ、畑。教科書の写真で見たような田舎の風景。

風に揺れる野原があれば、黄昏て寝落ちしてもおかしくないくらいに。


「でもこの時期じゃあ、ホットなんて売られてないしなぁ……カフェオレにしよ」


疲れを吐き出すかのようにふぅ……と、息を吐いて歩いていく。

心を洗い出そうとするかのように、横目で干潟と海を見ながら歩を進める。

足取りは早いとも遅いとも言いがたく、俯いているようなその表情もあってか、哀愁漂うどことなく疲れている様子を伺わせる。


(まぁいいや。甘いものを飲んで気分を落ち着かせよう)


親指の爪を噛みながらコンビニにある方へと進路を変えた。

海の見える方向、そこにある歩道を通ると遠目だがコンビニが見えてくる。


「あっ、宗二ジャマイカ!!」


琉斗の目線には、普段よりはゆっくりと歩いている宗二の姿が見えてきた。

人差し指に見える程の大きさに見える距離。

宗二に向かって早足になって近づいていく。その時の表情は、まるで久しぶりに会った親友や、初恋の人に会った時のような笑顔を浮かべ、歩く速度を早めた。

動画の再生速度を1段階ずつ上げるように、徐々にスピードが早くなり、それは歩きから走りへと動きを変えていく。



(暑いぃ……なんだってこんなに暑いんだよ……?)


水筒に入れた氷は昼になるまでに全て溶けて既に温くなってしまったお茶を飲む。

雲1つ無い、満天の青空。そこから照っている日差しを浴びることは、まさに虫眼鏡をかざした先の紙のような気分。

ミンミンと鳴いているセミのコーラスはまだ暑さが残っている証拠。温度を見て見てみると、なんと45℃。頭がおかしくなるようなレベル。


(早くコンビニに行ってアイスを買おう)


冷房の効いている建物に入り、その中でアイスを食べる。なんと甘美な響きだろうか。

涼しい所で美味しくて冷たいものを食べる事は、風呂上がりに食べるのとはまた違った気持ちよさがある。

幸いにも、どこのコンビニにも飲食スペースはある。そのおかげで食べることも容易というわけだ。

広さも中々、スーパー2件分くらいの広さがある……って、スーパーマーケットって改名した方が良くない?


「さて、アイス買って直ぐに……」


「宗二ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


え?と振り向いて何事かと見ようとした瞬間、後ろからガバっ!!とカエルが飛びつくようにして背中に引っ付いた。


「や……やめろ暑苦しい!!」


「宗二ぃぃぃぃぃぃぃぃ……」


ウリウリと、懐いた小動物のように頬ずりをする琉斗の顔は、どこか嬉しそうだった。

可愛らしいネコの耳が生えていればぴょこぴょこと動いているだろうが、その役割はぴょこんと立っているアホ毛がブンブンと尻尾のように振られている。

こんなくそ暑い中、そんなことをすれば暑いなど生易しい言葉では語れないことは、想像に固くない。


「ああもう離れろ!!」


がっちりと掴んでいる琉斗の手を、雑草を抜くように力づくで引き剥がしていく。


「おろ?」


片手を離され、バランスを崩す琉斗。

掴んでいるもう片方の手を握り、力を抜いてバランスを保ち、流れる動作で背負投げをかました。


「きゃあああああっ!?」


浜辺に釣り上げられた魚のように叩きつけられる琉斗だが、ギャグ補正でもかかっているのか、何事も無かったかのようにケロリと立ち上がってニッコリと微笑んだ。


「宗二ぃぃぃぃ」


「寄るな暑苦しいだろ!!」


再び甘えたりない子どものように抱きつこうとする琉斗。それを阻止するかのごとく、顔面を抑えている宗二。

傍から見ると、恋人や親子の関係にも見えるのが不思議だ。

そのやり取りは数分続き、電車を乗り過ごしたのは想像にかたくない。

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