学校内の様子
最近忙しくて……就活や課題がなぁ……(´・ω・`)
学校の下駄箱ーーーそれは靴を履き替え、校内を歩くための上靴、またはスリッパに履き替える場所。1年生は1番奥、2年生は真ん中、3年生は手前の下駄箱を使う。
生徒一人一人が持っている学生証には小型のチップが埋め込まれている。
下駄箱から右側。教室や職員室がある方向にゲートがあり、そこをくぐると床のセンサーが反応してゲートが開く仕組みだ。
仮に学生証を無くしてしまった場合は再発行する必要があるが、その日は欠席扱いとなる。
2階に上がってすぐ右に曲がると手前にトイレと別室が。奥側には1組から3組までの教室がある。
宗二は1番奥にある1組の教室に入り、琉斗は2つほど手前にある3組の教室に入る。
「琉斗じゃん!!おはようさん!!」
「おはよ〜」
廊下で追いかけっこしている男子生徒に挨拶を返す。
挨拶を終えた男子生徒は後ろから追いかけている人を確認して面白いものを見つけたような笑顔で走り始めた。
引きつったような笑顔で男子生徒を見届けるとロッカーの中にバッグを入れてノートを取り出し、窓側の机に座る。
「ふぅ……」
席に座り、一息つくと机に搭載されているコンピュータを起動させ、インターネットで結晶機について調べ始めた。
「おおっ!!やっぱりファントムの基本スペックはファルコンよりも格段に上だぁ♪」
目をキラキラさせて夢中で読み上げる。
全長、重量、武装、スラスター、装甲など、載っているもの全てをノートに書き写し、全身画像を見てそれも模写する。
「こういうのは紙に書くから映えるんだよね〜……まぁ、最重要な所は名前しか知らないけどね。『コア』とか『PSジェネレータ』とか」
ブロック状の下書きをしてバランスを取り、そこから顔を本格的に書く。
上手いとも下手とも言えない中途半端な出来だが、絵にするだけでも、形にするだけでも満足感が得られるものだ。
「ふぅ〜頭部は描き終わったし、一旦終わろ」
ぐい〜っと両手足を伸ばして背伸びをする。10分で大体の形は出来上がった。画力の問題なのか所々歪な部分があるが、本人は気にした様子はない。
「後で微調整すればいいしねぇ〜」
そんな独り言を言いながら空中モニターをスライドさせて検索エンジンを使用する。
「……は?」
検索サイトのホームにあるニュースの見出しを見て琉斗は石化したように固まった。そこにはこう書いてある。
【EUNの軍事基地がUIにより襲撃】と。
琉斗は放心しながらも無言で記事を指で押した。
「ええと……襲撃された軍事基地は……スカーチフェルド!?嘘でしょ!?EUNでも第2位の戦力だよ!?」
周りに人がいるのに思わず大声をあげる琉斗。周りで話をしていた女子生徒達や読書や勉強をしていた男子生徒達も「何事!?」と言わんばかりの形相で琉斗の方を見る。
無論、琉斗は周りの反応なんて知らないし、「そんなこと知ったことか!」とでも言うだろう。
「日本は今のところ1度も襲撃を受けてないけど……大丈夫かな……?」
琉斗はボソリと呟いた。
今のところ、異星人は軍事施設や戦争のある所を多く襲撃している。
「でもさ~、異星人は1回も日本に攻めてきてないから安心だよね」
「そうだよ。ニュースでもそういった事は見たことないし、もしかしたら作り物なんじゃない?」
「映画とかアニメとかの創作物って事?それが1番しっくりくるよね~」
クラスメイトが噂を広めるように、くすくすと笑いながら駄弁っている。
「そもそもUIってさぁ~、えーと……なんの略だったっけ?」
「そんなことも知らねぇのかよ。UNKNOWNなんちゃらかんちゃらだよ」
「ブッフォwお前も言えてないじゃんw」
ゲラゲラと笑いながら異星人の事をネタにして会話を盛り上げる3人の生徒。
それは友達だけで集まったパーティーのように騒がしかった。
「Unknown・Invaderなんだよなぁ……」
遠くで聞いていた琉斗が誰にも聞こえないような声で訂正を入れる。
日本にも軍事施設はあるものの、片手で数えられる程度でそこまで数は多くはないのが原因なのか、はたまた1度も戦争行為をしてないからなのか、襲撃を受けたことはないのだ。
だからなのか、はたまた学生だからなのか、この話を現実だとは思っていない。
創作物、もしくは他人事だと思っているのだ。
「UI?だっけ?そいつら、マジでこっちに来んなよなぁ~」
「ほんとほんと。平和が1番ってね」
そのため、皆いつも通りの日常を送っている。学生に限らず、多くの日本人が持つ結晶機の考えは「軍関係やロボット関係のオタクが興味のあるもの」という認識だ。
ニュースもやれ有名人や政治家が不倫しただのやれ要らない、くだらない法案が通っただのと「ふざけるな!!」や「くだらな!!」と思うようなニュースが多くテレビに流れている現状。マスコミも捏造や印象操作を勧めているため自分で考えるか全貌を見るかしなければならない。
「真実を伝えるはずの報道なのにさ、ほんと何やってるの?」
はぁ……と溜息をつきながら肘を立てて顎を手に乗せる琉斗。
記事を読み終わり、指でスライドさせてモニターを消す。
身体を曲げ、額を机に引っつけて手を前に伸ばして机の上にぐで〜んと突っ伏した。
「あ〜う〜」
疲れた〜と言わんばかりの声。可愛らしい声を発し、目を細めて前の席をぐらぐらと揺らしてあそび始めた。
キ〜ン〜コ〜ン カ〜ン〜コ〜ン
ゆりかごを揺らすように前へ後ろへと揺らしているとチャイムが鳴り、喋っていた生徒や走り回っていた生徒も一斉に席に座る。
が、チャイムが鳴っても基本的に1〜5分くらい教師が遅れてくるため、座っても近くの人と喋るのだ。
「まぁ、先生が来ても喋るんだけどね」
琉斗は欠伸をして目を擦った。集中が切れるととたんにねむくなってしまう。
後ろから声がしたので、身体を起こして振り返った。
そこには身長が高い男子生徒が座っている。
「おっ、池間くんじゃ~ん」
腰を曲げて後ろへ向く。
腰の音がバキバキっと、関節が外れるような音がなった。これが意外と気持ちいい。
「今日のニュース見たか?」
「うん、見たよ。『UIによるスカーチフェルドの強襲』でしょ?」
200センチ近い身長が特徴の池間晴也。
琉斗とは中学時代から知りあった仲で、宗二と同じような趣味を持っている。
最も、宗二が『結晶機、戦闘機等の軍機』中心なのに対し、晴也は『軍関係』全般という感じがある。
「いつここに来てもおかしくないのに、日本のお偉いさんは何をしてるんだか」
ヤレヤレと、両手を横に曲げて呆れるように言った。
「それが今の情勢だからね。仕方ないね」
晴也は達観したように、棒読みで言う。
それからもお話していくうちに、ウィーンと、音がした。
前を向くように指を前に指してジェスチャーする晴也。
それに反応した琉斗は手を2回ほど横に揺らして前を向いた。
「はいみんなおはよう!!」
前の方から男性の声が聞こえる。
渋いけどどこか華やかさを感じる声。その主は黒のびっちりとしているTシャツにジーパンというスタイルの坂田友和先生。
教卓の上に出席簿を置いてパン!!と手を叩いた。
「ほい、じゃあ朝礼を始めるぞ〜」
間延びしているが、マイクを使って発言したみたいにハッキリ聞こている。
「起立」
女子生徒がいうとみんなが一斉に立つ。
「礼」
「「「「「おはようございます」」」」」
「着席」
と、一連の流れが終わり、坂田が1歩前に出て口を開いた。
「はい、今日の予定は時間割通りですが、皆さん、ニュースは見ましたか?」
先生の言葉に「見た」と返事する声、「見てない」と返事する声がチラホラと聞こえた。
その口調は先生に対する話し方ではなく、友人と親しく話すような口調だ。
「第三世代はかっこよかったよな!!」
「うん、きっとアレでUIを倒してくれるよ!!」
最初のくだりからどんどん話題が広がっていく。
わいわいと喋るその様子は一種のお祭り騒ぎのようにも思えた。たった一言。それで盛り上がっていく生徒達。
(五月蝿いなぁ……)
その中で、1人心の中で毒づいた琉斗。
宗二に話していた時のイキイキしてキラキラしてるような目とは打って変わって、牛乳に一滴の墨を落としたような黒い表情だ。
無論、その顔が人に見えることは無い。座る時に机に顔を伏せているからだ。
そんな時、パンパン!!と手拍子するような音が聞こえた。それは教室中に大きく、激しく鳴り響く。
ゆっくり顔を上げると、次は教卓に激しく両手を乗せた坂田が見える。
「はい、それもありましたね。世界経済連合国・ZEROは第三世代の結晶機を開発しました。侵略者であるUIを追い出してくれることでしょう」
と、前置きを入れて口を開いた。プレゼンをする人のようにハキハキとした声で説明するような口調は授業の時には本当にわかりやすい。
(ま、そんな事で追い出せるなら苦労はしないと思うけどね)
琉斗は再び心の中で毒づく。
自分が思ったのはソレでは無く、軍事基地襲撃の件だ。
画像で見たが、ありとあらゆるものが破壊され、ゴミ屋敷のように施設や結晶機の残骸が散らかっていたのだ。
UIは攻撃を仕掛けた時の生存者は1名だけという情報もある。
実際、いつも攻撃を仕掛けた時は狙っているかのように決まって1人がニュースで報道されるのだ。
自分の力を見せ付け、歯向かう勇気を抑えるように。
自分の力を目の当たりにさせ、当事者の心をへし折るように。
自分の力を知らせて、どうしようもないと思わせるように。
(どうせ何やってもムダなのにさ)
はぁ……と1人ため息をつくと、男子生徒の声が上がる。
「侵略者なんて第三世代があれば1発だよ」
と、気楽な声で言い放つ。
そこで坂田の声が上がった。
「本日は掃除なしの部活は休みの帰りのHR後、すぐ解散という流れになります。じゃあ号令」
「きりーつ」
「礼」
「「「「「ありがとうございましたー」」」」」
└(՞ةڼ◔)」