登校時の風景
課題地獄に一時的に解放されたが次は受付と就活……何が向いているかもわからないし何が出来るかもわからない……(´;ω;`)
琉斗と宗二は一緒に登校する。今日は恋人のように腕を組むスタイルのようだ。
「めんどくさい」とも言いたげな視線で琉斗を訴えるが、当の本人はニコニコしていてお花のオーラが見える程だ。こんな顔をされたのでは「離れろ」とは言えない気持ちになっている。
ポケットの中に入れていたスマホの通知音が鳴る。見てみると、ニュースアプリの通知だった。
「……!!」
「ねぇ、今朝のニュース見た?」
琉斗は宗二に訪ねる。が、宗二はスマホを見て真顔になって固まっている。
「ねぇねぇ」と子どもが親に頼み事をする際に腕や服を引っ張るような仕草をしたのだが、宗二は真顔のまま歩いていく。
「え?ちょっと待って!?」
琉斗が静止するが、宗二は止まらずに歩き続けた。腕を思いっきり引っ張るが、力も大してないためそれは子どもが1人でタンスを持ち上げようとするのと同義である。
そんな力で止められるはずもなく
「ふべ!?」
電柱に顔面をぶつけた。宗二のメガネの素材は強度の高い素材を使っているため電柱にぶつけた位では傷一つつかないが、本人にとってはそうはいかない。
鼻血を流し、指で鼻を抑えながら上を向く。琉斗はポケットの中からティッシュを渡す。
「どうも」
若干照れながらもティッシュを受け取り、鼻血が出た鼻の中に突っ込む。
琉斗が心配そうに見つめるが、宗二は顔を赤らめ、右手でポリポリと頬をかきながら左手で頭を撫でた。琉斗はいいことをして褒められた時の子どものように「えへへ〜」という幻聴が聞こえそうなほど嬉しそうだ。
「あ……あぁ、なんだっけ?」
「今朝のニュースだよ!!世界初の第三世代結晶機!!」
合コンで話題を変えることに失敗した男のようにしどろもどろになって聞き返す宗二に琉斗は答える。
第三世代結晶機の活躍。長時間空も飛べる。ニュースに流れていたお披露目会は大喝采を呼び、ロボット好きの琉斗自身の心を大きくゆさぶった。
「ああ、見たよ。凄かったよな!!特に鍔迫り合いの所が好きだな!!」
「だよねだよね!!ボクは空を飛ぶところが好きだけど!!」
そうしてどんどん話は盛り上がっていく。
最初の起動からターゲット撃破までの過程から時間まで。
第二世代結晶機の最高タイムはファルコンの
4分25秒。次によかったのがラファールの4分50秒。ファントムはそれよりも1分も早く終わらせているのだ。
動きから何から、武装やファルコンへの戦い方など、それら全てが2人を夢中にさせた。
2人は幼い頃、結晶機の活躍をテレビで見ていた。模擬戦や警備、国の周りの巡回。それを見て「カッコイイ」と思った事が何度もあった。
人は興味を持つと調べたがる者だ。調べる数や質は違えど、本やインターネット、人やテレビからの情報が頭に残りやすい。特に徹底的に調べた者はそれが顕著に現れるものだ。
「はぁ……夏休み終わってすぐにテストはキツいよ……」
「お前、赤点とったことないから大丈夫だろ」
先程の明るさから一転、琉斗は下を向いてため息をつく。
テスト。それは学生が逃げることは出来ない道。学んだ事をどれだけ覚えているか、自分の実力を測るものでこれが成績に影響してくる。
宗二は琉斗を励ますが、彼にとってそうはいかない。
「でもさ〜!!歴史と国語は問題ないけど理数系は赤点ギリギリなんだよ〜!!そんな事より結晶機について調べたいのに〜!!」
おもちゃ売り場で親にねだる子供のように宗二の腕をグイグイ引っ張る琉斗。
自身の言うとおり、琉斗は理数系がてんでダメだ。この学校の赤点は30点だが、琉斗は理数系、特に数学が30点台ばかりだ。
反対に歴史と国語は70点以下を取ったことがない。結晶機やロボットアニメの事については別でエンジンや武装、作られた経緯などを調べるのだ。歴史系は好きで得意なため、2つの好きが相乗効果を生み出し、いまやロボットオタクと呼ばれるほどとなった。
宗二は琉斗と比べて歴史系を除いて全てが平均的だが、琉斗と同じくロボットが大好きだ。知識に関しては琉斗よりも詳しい。
「ん〜!!それにしても気持ちいいね。空気も美味しいしサイコーだよ!!」
ぐ〜っと手を大きく上にあげて背伸びをする。目を細め、気持ちよさそうにするその様子は夜お風呂に入るように見えた。
子供のようにコロコロと表情が変わる琉斗を見て思わず口で笑みを作ってしまう。
明波町は最新技術は最低限。それも建物内にのみ限定された珍しいものだ。辺りにはあと1〜2ヶ月ほどで収穫を迎えつつある稲穂やトマト、キャベツ、みかんなどの畑。
その畑は【エフェクター・プラント】と呼ばれ、大きく透明なカーボンで出来た袋で囲われている。
それぞれの農作物に1番最適な温度、湿度に自動的に調整され、決まった時間になるとスプリンクラーの要領で水が噴出されるのだ。水の原材料は近くにある海。地下ポンプで海水を組み上げ、噴出される時は既にろ過されて農作物に提供される仕組みだ。
近くには煙突のような大きな筒がある。それは雨水を貯水することにより農作物に与える水や飲水の提供が出来る。
橋にたどり着くと見えるのは壮大な海。その周辺にあるのは砂浜ではなく干潟だ。休日は子供たちが元気に泥だらけになって遊んでいるのを見るとどこか微笑ましく思える。ちなみにそこで釣りをするとハゼやセイゴが釣れる。唐揚げにしたら骨まで美味しいが、下ごしらえを怠ると冷めた時に生臭くなってしまうためしっかりと下ごしらえをしよう!!
学校の近くの武道館にたどり着くと男性が立っている。見た目は良くいえばふくよかな男性。黒のスーツを着こなしてメガネをしている優しそうな風貌だ。胸元には名札がぶら下がっていて【教職員・原田剛典】と書かれている。
「おはよ〜ございま〜す」 「おはようございます」
琉斗と宗二が挨拶をすると「おお、おはよう」と原田も挨拶をする。
この場にはこの3人しかいない。他の人は自転車で既に着いているか、まだ登校しているかのどちらかだ。駅から学校まで着くのにかかる時間はだいたい20〜25分。今の時間は9時5分。ここまでに約5分ほどしかかかっていない。
挨拶をして直ぐに歩く2人は9時8分に校門を通過する。
「おはよ〜ございます」 「おはようございます」
校門にいる青年のような風貌の男性。黒と赤のジャージを着ており、学校のマークが書かれている帽子を被っている。そして胸元の名札には【教職員・坂田友和】と書かれている。
「おはよう!!今日も頑張ろうな!!」
笑顔で肩をパンパンと選手を励ますように叩く坂田。琉斗は笑顔で応え、バイバイするように手を振って玄関にたどり着き、靴箱に靴を入れ、スリッパに履き替えた。
多分今回は短めです(´・ω・`)