第二区 『木に囲われた謎』 奏者 はとむぎ
事件のはじまりは、ほんの一週間前でした。こんなに早く探偵事務所さんが見つかるとは思っていなかったけど……あ、探偵事務所ではないんでしたっけ。すみません、話が逸れましたね。
私は大学の演劇部に所属していて、今年の秋の文化祭でもいつも通り演目をやるつもりで話を進めていたんです。
それが、出し物の場所決めの日にパンダくん……あ、うちの部長のことです。彼が元々白い顔をさらに白くして戻ってきたものだから、みんな驚きました。
「どうした? もしかして教室?」
「いや、講堂は取れたんだけど」
真っ先に立ち上がったのは今回の主役を張る小林くんでした。教室というのは一番のハズレくじで、できなくはないけれど大した設備は整えられないし、暗幕も垂らせないし、演劇部にとっては最悪のポジションなんです。だから、講堂が取れたという言葉にみんな安堵していました。
「ただ、旧講堂の方なんだ」
その言葉に首を傾げたのは私だけではありませんでした。旧講堂なんてあっただろうか。誰もがそう考えていたはずです。
「大講堂から五分もしないくらい歩くと、壁のように木が植えられているだろう。あの奥にあるんだ。大講堂の方は根こそぎ音楽系に取られてね。今年は新しい部もできたとかで」
「じゃあ、集客は見込めないか。ビラ配り、気合い入れないとなぁ」
パンダくんと小林くんの話を聞きながら隣でずっと下を向いていたアカリちゃんが、こわごわと顔を上げたので、部員の視線は自然とそちらへ集まりました。
「きゅ、旧講堂って、お化けが出るって噂があるじゃないですか」
*
アカリちゃんの言葉を確かめるべく旧講堂の下見が行われたのは、その翌日でした。
木で囲われたその場所はたしかに見つけにくかったですが、行ってみればそんなに遠くはありませんでした。それに、設備自体はきれいに保たれていて、外はきちんと改装され、基本的な内装は木造のまま昔の空気を感じられるというような趣のある建物で、こんな場所がこれまで使われていなかったということが不思議でした。
「いいじゃん。あんまり広くないから舞台と客席が近くて緊張するけど」
小林くんの言葉に、何人かの部員がうなずいて答えていました。
私も、ひと目見たときからその講堂が気に入りました。木で囲われている利点もあり、講堂の窓を開けると涼しい風が通り抜けて心地よく、まるでその空間だけ切り取られて別世界に居るような気持ちになるんです。
「お化けも出てこなさそうだし、雰囲気も良いじゃない。どう、アカリちゃん?」
アカリちゃんは今回初めてヒロインを務めるので、彼女の不安は特にできるだけ取り除いてあげたいというのが、私を含め全員の気持ちでした。私は、部員の輪から少し離れた所で講堂内を見渡す彼女のそばへ寄って様子を窺いました。
「うん、そうだね」
ここへ入る前は緊張した面持ちだったアカリちゃんの表情が柔らかくほころぶのを見て、この場所で演技をするという決意が固まったと思われたその時です。
「ねぇ、何か……」
部員のひとりが突然声を震わせたので、全員がそちらを振り向きました。彼は視線を一点に集中させるようにじっと壁の方を向いて、両耳を(あるいは頭をかばっているように)押さえて顔を青くしていました。
つづく
まず、(形式など)これで良いのか不安です。間違ってたら教えてください(そこから)。
Mu さんの第一話を読んで、「なぜわたしは純粋な読者じゃないのだろう」と悲しい気持ちになりました。
読者だったら、続きどうなるんだろう〜〜ってわくわくな気持ちで楽しめたんですけどね! それ書くの自分ですからね!
とはいえ、何とか書いたので(止まらなくなりそうだったのであえて中途半端に)、このあとは皆さんが何とかしてくれるでしょう。
お題→「お酒は20歳になってから」
成人式だからね。
よーくんならきっとなんとかしてくれる。よろしくおねがいしまーす