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第十区『助助文学サロンは今日も賑わっています』 奏者 JOJO

★★★執筆者への挑戦★★★

 現実世界(・・・・)の星の文壇の皆さん、これまでこの物語を繋いできてくれてありがとうございます。


 この物語はハッピーエンドで終わります。


 そんな皆さんに感謝を込めて、挑戦状を出します。


 世界が崩壊した展開からどのようにして(・・・・・・・)ハッピーエンドになるのか、これを執筆者の皆さんには当てていただきたい。


 最初に言っておきますが、真相はアンフェアです。どうかお怒りなきよう願います。


★★★現実世界の会長より★★★

 会長と私が皆のもとへ戻ると、ここにいるには相応しくない人物がいた。


――”探”を司る格、エラリー・クイーン(・・・・・・・・)


「なんであんたがここにいるの? って顔をしてるわね、デウス……いえ、マツリカ」

 エラリーの言う通り、まさに今の私はそんな顔をしていることだろう。

 皆に暖かく迎えられ潤んでいた目も一気に乾く。


「エラリーさんはね、あっちの方から来たんですよ」

 ミカンさんが窓の向こうを指さしていう。崩壊した街が広がっていた。


「こんな世界になってからわざわざ文学サロンを訪ねに来てくれたみたいだ。ミステリが好きみたいでね、さっきまで私とマスターの三人でミステリ談義で盛り上がっていたんだよ」

 久しぶりにミステリ談義をして教授は興奮が冷めぬ様子だ。


「これで全員揃ったわね。……先輩がいないけど、あいつは気まぐれだしまぁいいわ。あっちの世界にでも行ってるのかしらね」

 エラリーはようやくこれで話ができるといった感じで大きく息を吸う。


さて、皆さん(・・・・・・)

 エラリーがそう言うと同時に、ずっしりと空気が重くなる。


 これ……は……エラリーの能力


――これから真相(不可逆)を語ります(的解決)――

 

 エラリーが能力を使うということは、何かしらの事象がこれから解き明かされる。そして聴衆はこの場から動くことも喋ることもできなくなる。

 ここでは探偵が絶対的な立場となり、探偵こそが最上位の存在となる。


 でもありえない!

 なんでエラリーがこの場にいるの。この世界は他の世界とは切り離したというのに!


「普通の探偵は結論を先延ばしにするけど、私はさっさと言うことにするわ。まず、マツリカ、あなたはデウス・エクス・マキナではない(・・・・)


 え、私がデウス・エクス・マキナではない?


「これは簡単に証明できる……ってこのセリフ、オッカムみたいになってしまうわね。まぁいいわ。なぜなら、あなたが能力を発揮させたにもかかわらず、この世界、いえ、この物語は続いている(・・・・・・・・)。デウス・エクス・マキナが能力を使ったなら、そこで物語は終わるはずのに、これはどういうことからしら? 答えは単純、あなたは星の文壇の別の格なのよ」


――「マツリカさん、君は本当にデウス・エクス・マキナなのだろうか」

 先輩にそう言われたことを思い出す。そして今度はエラリーも私がデウス・エクス・マキナではないと言う。


「マツリカ、あなたは”災”を司る格(・・・・・・・)パンドラ(・・・・)よ。世界をこんな風に崩壊させるなんて、パンドラ以外できないわ」


 パンドラ! あの星の文壇で大人しそうにしていたパンドラが私? ……確かに性格的にはパンドラは私と似ているけど。


「なぜあなたはデウス・エクス・マキナと思い込んでいたのか。それは”修”を司る格、主のしわざ。主はあちらの世界では少年の姿をしていて、イタズラ好き」


 まさか主がただのイタズラで私の記憶を修正したってこと?


「ここまでは、理解した(ドゥーユー)かしら?(アンダースタン?)


 100%の理解はできないけど、エラリーの言うことにも一理あることは認めよう。


「そして、あなたが思っている最大の疑問。なぜわたしがここにいるのか?(・・・・・・・・)


 そう、まさに最初から思っていた。この世界は全ての世界から隔絶されている。エラリーがここにいること自体がおかしい。


「結論から言うと、あなたが会長にだけ心を許しているから」


 どういうこと? 確かに私は会長に心を許した。それがエラリーとどう関係があるの?


「この世界はフィクションである。しかし、ただのフィクションではない。普通、作品というものは一人の作家が最初から最後まで書くわ。ただ、この世界はリレー小説という(・・・・・・・・)特殊な世界なのよ(・・・・・・・・)

そしてこの物語のリレー小説の最後の執筆者(アンカー)は現実の世界でも会長(・・)と呼ばれている」


 現実世界の……会長?


「あなたはあらゆる世界からの干渉を拒絶した。ただ、会長にだけは心を許している。そこにいる会長はそう、例えるならプラトンのイデア論。イデア会長(現実世界の会長)が顕現しているにすぎない。つまり、会長を受け入れているあなたはイデア会長からの干渉も無条件に受け入れていることになるのよ」


 イデア論。教授が前に語っていたっけ。

 日常にあるあらゆる概念は影にすぎず、それらの概念の実体は天上界(イデア界)にあるという理論。

 三角形を例にしよう。ここに三角形の定規があるとする。見た目は三角形だが、実際よく見ていると使い古されて定規が少し欠けていたり、角が完璧に尖ってはいない。更に原子レベルで見ると原子は丸いのででこぼこしている。完全な三角形ではない。

 この世界に存在する三角形はイデア三角形(完璧な三角形)を顕現している影にすぎない。

 エラリーが言うには、会長もイデア会長の影にすぎないということ。


「イデア会長の意志によって私はこの世界へ入ることができた。マツリカ、あなたが会長を思えば思うほど、他の世界との拒絶は強くなる。しかし一方、イデア会長からの干渉はより強く受けてしまうことになる。この世界ではイデア会長こそが神(・・・・・・・・・)。リレー小説の特殊性についてもう少し補足させて。リレー小説はどれだけ波瀾万丈な展開であろうと最後の執筆者(アンカー)によって、結末を迎える。最後の執筆者(アンカー)が物語をどのようにも終焉させることができる」


 まさか


「そう、最後の執筆者(アンカー)こそがデウス・エクス・マキナ。つまり、イデア会長そしてそこにいる会長こそがデウス・(・・・・・・・・)エクス・マキナなのよ(・・・・・・・・)。マツリカ、あなたはデウス・エクス・マキナとして会長を終わらせようとしたけど、会長が”焉”を司る存在。全てのものを終わらせることができるのは会長だけ」


 まさか、会長がデウス・エクス・マキナだったなんて……。


 その時、エラリーの足元からゆっくりと青白い炎が上り始めた。


「あら、そろそろ時間みたい。私はイデア会長によって終わらせられようとしているみたいね。といっても私はあっちの世界に戻るだけだけど。あっちの世界は今はものすごく大変なことになっているわ。まぁこっちの世界のあなたには関係ないわね。マツリカ安心して、こっちの世界ではオッカムは反乱を起こさない。そもそもなぜオッカムが反旗を翻したと思う? 混沌としたリレー小説に嫌気がさしたからよ。でもこの物語はイデア会長によって終わる。これ以上、混沌が広がることがない。この世界の続きはあなたたち自身が紡ぐことになる。オッカムも皮肉屋ながらも文壇のメンバーたちと楽しんでる世界になるわ」


 かつて私が想像した世界。星の文壇で皆と本について楽しく語り合う。

 ここから私たちの本当の物語が始まる。

 でも、私はこの世界を崩壊させてしまった。これからそんな世界を作れるのだろうか?


「イデア会長には感謝しないとね。もし最後の執筆者(アンカー)が他の人物であったなら、あなたへの干渉は拒否されて私がここへやってくることもなかった。永遠にこの崩壊した世界で過ごすことになっていたわ。私がイデア会長によってこの世界に送られた最大の理由は、あなたにパンドラだということを自覚させること」


 私がパンドラだと自覚したところで何になるの?

 パンドラは”災”を司る格。世界を崩壊させることしかできない。


「パンドラの箱って知ってる? 昔、全ての災いが封入した箱があって、それを開けてしまったパンドラという名の女性がいたの。それによって世界にはあらゆる災い解き放たれてしまった。でも箱の底にとあるものが残った」


 パンドラの箱。なんとなく聞いたことはある。

 教授やマスターが好きそうな話だからそれが耳に入っていたのかも。

 そして残ったものとは?


「それは――希望(・・)。マツリカ、あなたは今、イデア会長によって"転変"させられた。《災》を司る格から、《希》を司る格へ!」


 希望! そして転変?


「星の文壇のメンバーは色々な格を司っているけど、格が変わることがある。それを転変という。そういえば老子もかつては”道”を司っていたけど、今では老いたとか言って”老”を司っているわ。あれだけ元気な爺さんなのにね」


 私は”希”の格へと転変した。

 心の底から温かい何かが湧いてくる感じがする。これが希望?


「にゃぁ」

 と声がしたと思ったら、我が輩がソファーの下から出てきて大きなあくびをした。


「あら、猫ちゃん。実を言うとこの子が私をあっちの世界からこっちの世界へ送ってくれたの。不思議な猫ね。私が――これから真相(不可逆)を語ります(的解決)――を発動させているのに、動いているし」

 エラリーを包んでいる炎が全身を多い尽くそうとしている。


「さぁ、マツリカ。”希”の力を使って、この世界を再生させて。それでは私はこれで、お別れね(アリーヴェデルチ)


 探偵としての責務を果たしたエラリーは微笑みながら消え去った。


「……エラリー」

 星の文壇が誕生するとき、また会えるだろうか。

 彼女は割と古くから星の文壇にいたはずだ。もしかすると今この文学サロンにいるメンバーの誰か?

 女性はミカンさんかユメさんしかいないけど、二人はどうも違う気がする。


「ところで、マツリカさん。今のは一体どういうこと?」

 エラリーの能力から開放され喋れるようになって、マスターが訊く。サロンのメンバーたちもうんうんと頷いている。


「そうですよね。全くわからないですよね。では最初からお話します――」

 私はこの文学サロンが後に星の文壇と呼ばれること、そして星の文壇で争いが始まったことを皆に伝えた。



「星の文壇、すごいですね。僕は”食”を司る格とかになってみたいなぁ」

 料理が得意のオーナーがワクワクしながら言う。


「マツリカさん、僕がデウス・エクス・マキナって本当なのかな?」

 会長が困惑した表情をする。

「本当だと思います。我は偽でも真にさせてしまいますけど、エラリーは真を見抜く能力があります。エラリーがそういうのならそれが真実なのです」

「そうかぁ。”焉”を司るってかっこいいけど、そこで物語が終わってしまうのは悲しいことだ。でもきっとイデア会長は現実でももっと楽しい物語作ってくれるはずだよ。って自分で自分のイデアに語りかけるのはなんか恥ずかしいね」

「イデア会長がどういう方かわかりませんが、会長のイデアだとしたら素晴らしい方だと思います。でも私にとってイデア会長より、会長の方が好きです。だってこうして触れ合えるんですもの」

 私は会長の手を握る。


「ひゅーひゅー!」

 と皆が囃し立てる。


と、その瞬間、世界が温かい光に包まれた。


マツリカのパンドラとしての”希”の能力が発動する。


――私たちの(劇作家や観客はどう)物語はこれ(でもいい役者こそ)からです(が主役なのです)――



 今日は文学サロンのお引越しの日。

 海辺に面したタワーマンションの一室が新しいサロンになります。この物件もどうやら先輩が見つけてくれたらしい。でも今日も先輩はいません。


 世界は再生し、タワーマンションの窓から見える景色はとても雄大だ。

 こんな都会でも緑はたくさんあるし、海が水平線まで見えてキラキラと光っている。


「これで荷物は全部入れたかな? と言っても皆の本が大半だけどね」

 ダンボールの山を見て会長が、全く本好きにも限度があるだろ、という態度で一息ついた。

「今日は引っ越し記念で、マツリカさんの初めての読書会だね! 頑張ろう!」

 そう、ついに私が読書会をやる日がきたのです。

「はい、会長」

 私は緊張のあまり、そっけない返事をしてしまう。

「そんなに緊張することないよ。参加メンバーは全員見知ったメンバーしかいないし」


「あ、あの! ここが助助文学サロンですか?」

 と、入り口の方から可愛らしい声女の子が聞こえた。


「あれ、誰だろう。今日はいつものメンバーしか来ないはず」

 会長は玄関まで行って女の子を出迎えて、リビングまで連れてきた。


「私、九院偉理衣くいんえらりぃと言います! 今日は読メというサイトで『そして伝説へ』読書会があると知って、参りました! よろしくお願い致します! ってここはダンボールの山ですごいですね!」


 九院偉理衣……エラリー・クイーン(・・・・・・・・)


 私は思わず感極まって涙を流してしまう。この子が後に星の文壇でエラリー・クイーンになるに違いない。


「あれ、お姉さん泣いちゃってどうかしましたか? 私、来ちゃいけなかったですか?」

 偉理衣はあわあわと忙しくしている。


「偉理衣ちゃん、大丈夫よ。あなたが来てくれてとても嬉しくて泣いてしまったの。今日は知ったメンバーだけの参加だけかと思っていたけど、初参加の方が来てくれてとても嬉しいです。『そして伝説へ』は好きなの?」

「はい! 何度も何度もひっくり返る展開! なによりも探偵のかっこよさ! 探偵の使う能力――俺様の推理に(天上天下)は誰も抗えない(唯我独尊)――はもうディ・モールト最高です!」

 偉理衣は大はしゃぎしている。


「実は今日はお引越しの日でもあるの。読書会が終わったら、一緒に本の整理とか手伝ってくれる?」

「へぇ、今日お引越しなんですね! 私、本大好きなんでぜひ手伝わせてください!」


 オーナーは皆を労うための夕食を作り

 教授とマスターはまた小難しい話をして

 ボクとミカンさんとユメさんは乙女ゲームの話で盛り上がり

 我が輩はソファーの上で眠っている。


「マツリカさん、そろそろ始める?」

 会長が皆を呼びかけ、ついに読書会の始まりです。


 助助文学サロンは今日も賑わっています。

現実の星の文壇の皆さん


我はデウス会長なりイデア会長なり……ただのJOJOです。


HERO-TAKAさんから他の世界からの干渉を受けない、というバトンを受け取ったとき絶望しました。

でも同時にマツリカと会長が結ばれたようで、マツリカは会長を受け入れてる→会長は現実世界の会長(イデア会長)が顕現している影→つまりイデア会長の言うことならなんでもきく!

という抜け穴を発見しました、こじつけまくってこのような苦しい展開になってしまったことをご容赦ください。


永井消失事件やブギーマン事件はこれまでの執筆者で解決済みということでお願いします。


皆さんは最後どのような展開を予想したでしょうか?

また皆さんが最後の執筆者(アンカー)だったらどのような結末にしたかなど、今度お会いしたときにお聞きしたいです(自分のターンが終わったからってホっとしてるそこの執筆者。あなたもちゃんと考えくださいね!)


読者の皆さんもここまでお読みいただきありがとうございます!

展開がカオスすぎて、きっと全部を理解することは難しいでしょう。だって執筆者ですら理解できずに苦悩しながら書いているのですから笑

この辺はシタンさんの「幕間 其の弐」で詳しく解説されていますね。


最後にMuさん、このような場を作っていただきありがとうございました!

正直、かなり苦しかったですがそれ以上に楽しかったです!(今度機会があるならもっと時間的猶予がほしいです笑)


作中のデウス会長も今後色々と頑張っていくことでしょうが、イデア会長もまた頑張りたいと思います。

その際は皆さんのお力を貸してくださいね!

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