表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

モノクロメッセージ

夕貴に背を向けたその日の夜、菜摘からメッセージが入っていた。

お風呂上がりの真琴は気乗りしないまま、自室のベッドの上でスマホをいじる。


『足、大丈夫? 今日、稲瀬っちと喧嘩したんだってね。めっちゃ心配してたよ』

『なーに、あいつに何か言われた?』

『言われたと言うか、聞いたと言うか。玄関で喧嘩してたでしょ。真琴の声、響いてたよ。それで慌てて見に行ったら、稲瀬っちが恥ずか死しそうだったから移動させてさー。そん時に聞いた』

『なる。ちなみに何聞いた?』


メッセージをつらつらとやり取りする。先ほどまでぴこぴこと鳴いていたスマホが、急に大人しくなった。メッセージアプリに既読マークもつかない。何かやってんのかなーと思いながら、ドライヤーで髪を乾かしはじめる。

髪が完全に乾くころ、ようやく菜摘から返信がきた。


『真琴が大会出るつもりないって』


真琴はピタリと動きを止める。やっぱ話してたかと舌打ちしたくなった。


『怪我したし、記録でないし、別にいいかなって思ってさ。大会行っても後ろに引っ掛かるだけだから。今年引退だし、ちょうどいいよ』

『……真琴、ずっと悩んでたもんね。やっぱ陸上、つらい?』

『走るのは好きだよ。でも記録に左右されるのがね、ちょっとね、つらいかなぁ』

『そっか』


真琴は返信の手を止めた。

菜摘には前から何度も記録が伸びないことを相談していたから、すんなりと理解してくれたようだ。練習中、親身になってアドバイスもしてくれた。菜摘がいたから、転部もしないで部活をなんとなく続けていたのも大きい。

メッセージが止まってしまった。何て打てばいいのかと思っていると、菜摘から連続してメッセージが入ってきた。


『真琴がそれで良いなら、良いと思うよ。ただ、真琴が大会に出ないのを残念がる子がいるから、その子には謝ってあげて』


予想外のメッセージに、真琴は首を捻る。自分の、隠れファン? 表彰台に立ったこともない自分に?


『誰? そんな子いるの?』

『稲瀬っち。大会応援に行くんだって張り切ってたじゃん』

『あれ、菜摘の応援って意味じゃないの?』

『はぁ? 何言ってんの、明らかにあんたのじゃん』


ますます意味が分からずに首を捻る。

返答に困っていると、またピコンと通知が入る。


『ま、なんでもいいけどさ。あ、来週の火曜日は学校に来なよ』


火曜日。

夕貴に指定された日だ。

ついつい勘繰ってしまい、返信の言葉に刺が入る。


『どうして?』

『部活に決まってるじゃん。足、治る頃でしょ? 大会出ないこと、どうせザキティーにもまだ言ってないんでしょ。明日終業式だから部活ないし、その足じゃ探しに行くのも大変じゃない?』


至極全うな理由で肩透かしを食らった気分になる。

それでも心配をかけているのは分かっているので、『分かった。行くよ』とだけ返信して、真琴はスマホを充電器に差し込んだ。

その後もピコンと通知が入るけど無視する。


火曜日。

夕貴にも来いと言われているけど。

会わせる顔がなくて、真琴は布団を頭から被る。

夕貴にきつく言いすぎてしまったことが、胸に重たく残っているのだ。

寝るには早いけれど、真琴は目を瞑る。

何も、考えたくなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ