毒と薬
私が小説を読むようになったきっかけは、ある女性だった。彼女は私の人生にもっとも大きな影響を与えた人物だろう。彼女はエミリーといった。
私は中学二年生のとき、彼女と同じクラスになった。そのころの私は、彼女の顔と名前は知っているが、その人物像までは一切知らなかった。ただ、放課後、誰もいなくなった教室に一人で残り、何らかの書籍を読んでいる姿を幾度か見かけたことがあった。そのため、おとなしい人だろうと思っていた。
私が初めてエミリーと接点を持ったのは4月。同じ委員会になってからだった。特に図書に興味があったわけではないが、私は図書委員になった。そこで彼女と話す機会が少しだけあった。
彼女と話して驚いたことは幾つもあった。その一つは、彼女の知識の豊富さだ。彼女は小説に限らず、あらゆるジャンルのエンターテイメントに精通していた。そして、そのどれについても大好きであるようだった。好きなものについて語るエミリーはとても魅力的だった。
しかし、私と彼女の関係はそれ以上のものにはならなかった。
「警察だ!」
彼女は唐突に逮捕されてしまった。彼女は大麻の常用者だったのだ。
今、私はドラッグをこの上なく憎んでいる。