表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

緊急アンケートでチート異世界

「神様に緊急アンケート! 異世界に転生したらどんな能力を身につけたらいいと思いますか?」

「水と火と空間の魔法かな」

「じゃあ、それでお願いします」


私はぺこりと目の前にお兄さん(神様)に頭を下げた。


「神様に緊急アンケート! 異世界に行くときの装備はどんな感じがいいですか?」

「そうだね、君が行く世界は魔法命の世界だから、魔法の杖にショートマントをベースかな」

「じゃあ、それでお願いします」


私はまた頭を下げた。


神様に聞くと楽でいい。

他にも携帯食料や多少のお金をもらった。

異世界の事は異世界の神様が一番よく知っている。神様に聞いた方が間違いないだろう。


「最初にあげた能力でだいぶポイントを使ってるから、火と水の魔法は中級くらいまで、空間魔法は基本までしか力をあげられなかったけどごめんね」


神様であるお兄さんがすまなさそうな顔をする。

しかしその実は、


「緊急アンケート! 自分の不注意で魔法の世界に産まれるはずだった魂を地球に渡してしまった時の気持ちはどんなですか?」

「『あ、やっちゃった。テヘペロッ』。ちょ、僕があげた能力そういう風に使わないで」


そう、私は神様の不注意によって地球に産まれて交通事故によって異世界に還ってくる事となった。

死の悲しさや神様への悔しさは、この神様と会った空間で何日も泣き暮らして解消した。


周りを見渡すと、何故かギリシャ神話みたいな太い石柱が何本も立ったどこまでも白い空間。この空間で感情の折り合いはある程度つけたのだ。


そう、悲しかったけれど永遠と悲しめるほどでもない。

何よりも一緒の空間にずっといる神様が飄々とした態度なら尚更だ。

私は人に左右されやすいし、人の顔色や意見を気にする。


「そうかなー? 今、僕の顔色とか気にしてなかったよね」


私の心を読んだのか、神様がこっちをジトッとしたジメジメした目で見てくる。

能力を貰っただけ良かったと思わないとやってられない。


「私はAB型の繊細な16歳の乙女なんです。だからアンケートをとれる能力をもらったんじゃないですか」


そう、繊細な乙女の私は生前の好みを反映した能力を神様にもらった。

雑誌のアンケート結果とか人気投票とかが好きだった私にふさわしい能力だ。

その名も、


「緊急アンケート!」


私は能力名を高らかに叫んだ。


「異世界の人の無意識に質問です。こんな神様を信じてる? 信じてない?」


私にだけ見えるメニュー画面に続々と集計結果が円グラフで表示される。

『信じてる』が赤。『信じてない』が青。


ちなみにこの能力に対して質問された人は自分の中で真実だと思える事を答える。

大規模質問の時は無意識に問いかける。頭の片隅をちょっと拝借して答えてもらうだけだ。


「そ、そういうアンケートやめてー!」


神様が叫ぶのを無視して、私はアンケート結果を見つめた。


結果、


信じてるは70%。分からないが20%。信じれないが10%。


という綺麗な結果が出た。


「こんなの私が信じれない!」

「いや、君の目の前にいるのが神様だから!」

「だってこんなのおかしいじゃない。過半数だし」


私はアンケート結果を指差して神様に訴える。

神様はその綺麗な顔をムンクみたいに歪ませた。


「君ね、君のこれから住む世界は魔法一色の神秘の世界だから。魔法っていう不思議なものが使えるんだから100%でもいいくらいだよ」


そ、そっか。


私は今までの昂りを抑えて俯いた。

平和な国地球の日本と違って、魔法の世界。しかも聞いたところによると物理や科学はあまり重視されていない。神秘の世界………か。


「ごめんなさい」

「えっ、説得されるのか? 君みたいな子初めて見たよ。流されやすいけど主張激しいっておかしいでしょ?」


思わず顔をあげると「予想外」だったらしく神様は首をひねっている。

不安でいっぱい顔をしているであろう私に、しょうがないなぁと微笑んでくれた。


「僕のミスでもあるし、責任とって異世界に渡った後もしばらく特別に見守ってるよ」

「ありがとう」


そうして旅支度を終えた私は、当初の計画通りある王国の地方領の近くの森に転移した。

いきなり人里に現れる派手な真似はしたくない。


+++++


「緊急アンケート! グリーンゼリー達に質問です。えっと、プルンプルンするのが好きですか? ツルツルするのが好きですか?」


森に転移した途端に薄緑の丸いモンスターが現れた。

透明でつるんぷるんしている。私は早速緊急アンケートの能力を発動して動きを止める。

アンケートの力で対象の名前はちゃーんと見えている。


神様の作ってくれた能力によってある程度の翻訳はされるものの、グリーンゼリー達に質問は伝わっていないかもしれない。


その証拠に「集計不可」という答えが私にしか見えないメニュー画面として中空に表示された。後、親切にも「推測の答え『プルンプルン』」とも表示される。


アンケート能力によって何秒間動きが止まったグリーンゼリー達を、水の魔法を発動して押し流す。


グリーンゼリーは少量の水に乗って森の奥へと消えていった。


水の魔法はぶっつけ本番だったけれど、魔法を発動したいと思うだけでなんなくできた。

グリーンゼリー達の持っていた魔力と経験値が少量ながらエネルギーとして私の体に流れ込んでくる。

本当に一連の流れが魔法のゲームの世界みたいだ。


「近くの町の皆さんの無意識に緊急アンケート! 町を訪問したよそ者が最初に訪問した方がいいのはどこ?」

………

…………

……………

アンケート結果は、

 『町の酒場メランコリー」「冒険者ギルドとかげのしっぽ」「領主様タージ・ノクリスの屋敷」

 に3割ずつで別れた。


私はその中から無難そうな冒険者ギルドに行くことにした。


他にも気をつけた方が良いことアンケートで、魔法を使えないものは処刑か幽閉かがこの世界のルールである事。

 魔法を使えることを早々にアピールした方が良いこと。

 以上の事を知った。


良い宿のアンケートで宿も決めてから、町に入ったのだった。


+++++


神様に『緊急アンケート』というチート能力を貰った結果は、異世界に溶け込むのも魔物討伐も余裕でした。


やったね。

ご覧頂き誠にありがとうございます。

また、評価やブクマ等ありがとうございます。

とても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ