プロローグ④
森の中に入ってみるとそこは少し薄暗く、そしてやはり人は見当たらなかった。
あぁよかったと思いながらゆっくり歩いていくと、前方に何かよくわからん人型の木のようなモンスターの姿が見えた。まだこちらには気づいていないようだ。
「(やっとモンスターに会えたな……、とりあえず隠蔽使っとくか。【隠蔽】!)」
ぼしょっと呟きスキルを使うとと視界が緑色になり、視界のはしっこに【隠蔽度】80%という文字が出てきた。おそらくこれが0になると【隠蔽】がとけるのだろう。
そんなことを考えつつ木のようなモンスターに近づいていく。そしてモンスターの上にHPバーが見えてきた。そしてそのHPバーの色は黄色。これはモンスターのレベルが自分の適正レベルより少し強いことを示している。
「(うーん……、どうしよう……。【隠蔽度】も55%まで下がっちゃったしなぁ……。)」
と、そう考え込んでいるといきなりあのモンスターがぐるりとこちらを向いた。そして人でいうと右手の部分にあたる枝で攻撃してきた。
「うわぁ!?」
あわてて飛びのく。飛びながら視界の端をぴらっと見ると【隠蔽度】は0になっていた。
今から【隠蔽】を使い直しても意味がないので使わずに、腰に下げてあった初期装備の短剣を取り出し構える。そして、モンスターがこっちに飛びかかってくるのを待つ。
「……?」
だが、いつまで経ってもモンスターは飛びかかって来ない。
「(……RPG系のゲームで木のようなモンスター?まさか!)」
ふいに嫌な予感がしてモンスターの足元をみるとその嫌な予感はあたった。
その木のようなモンスターは立っていたのではなく、地面から生えていたのだ。
「(やっぱりか……。てかこれ投擲系の武器だったら楽だったのになぁ……。)」
仕方がないのでこっちから向かってやることにした。
ーーーーー
「ふう、終わった!」
やっとあの木のようなモンスターをひたすらチクチク攻撃してはよけてを繰り返して倒した。
あのモンスターはドロップ品のアイテム名【トレントの枝】から見るにトレントというらしい。
そんなどうでもいい情報を得つつ、俺はその場に座り込んだ。さっきの戦闘が長引いてしまい疲れたのだ。
長引いた原因は1つ。
「……でもAGI極振りだと回避しやすいけど与えるダメージ、さすがに低いな……」
一応自分の攻撃は入るのだが敵のHPはあまり減っていないのだ。おそらくlevel差の問題もあるが、一番の問題はAGI極振りだからだろう。
フマルの説明では攻撃スピードが相手に与えるダメージに関わるから、AGIも攻撃で相手に与えるダメージに関係するとかいっていたがそれは少々なのだろう。やはりダメージの内の大部分はSTRの値で決まってしまう。
しかもAGI極振りには、もう一つ問題がある。
それは、HPに関わるVITに降ってないので、HPが低いということだ。
さっきの戦闘で一度枝の攻撃がかすったときに思っていたよりも大分多くダメージを受けてしまった。おそらく今のままだと強攻撃を食らうとそのまま死んでしまうだろう。さすがにこのままじゃまずいかもしれんが……。
「……まぁVITはあげるつもりないけどね!回避してしまえば攻撃が当たることもないし」
もちろん反省を次にいかさない俺であった。
と、自己分析をしていると背中に寒気を感じた。振り向くと……
「ガルウウウウウウウウ!!!!!」
狼のようなモンスターがいた。ちなみにHPバーの色は赤に近い黄色。さっきのトレントよりも強いことを表している。
と、観察していると狼が戦闘姿勢に入り始めた。
【ユウガオ は どうする?】
1.戦う
2.逃げる
もちろん2を選んだ。
ーーーーー
「はぁ……、はぁ……。」
荒い息を整えつつ俺は完全にへたりこんだ。ここはフィールド内の安全スペース。さっきの狼から逃げているうちに見つけ飛び込んだ。
「くっそ……。AGI極振りなのに……。ついてくるとかあの狼早すぎでしょ」
と、愚痴りながら俺は仰向けに寝転ぶ。
空はきれいな青色をしていた。
こののどかさにちょっといらっときつつもほっと一息つく。……あぁ眠くなってきたなぁ……。
ゲーム内ということを忘れて寝かけている俺の耳にこんな女の人の声が聞こえてきた。
「きゃああああぁぁぁぁぁああ」
そしてその声は近づいてきた。
うるせえなだまれよせっかく寝かけてたのにと思った次の瞬間。
「うわぁぁぁぁあ!?」
俺の腹にはお腹に強い衝撃が。
そしてなぜか目の前にあるよくわからん赤い物体。
「……なんだこれ?」
とりあえず押しのけようとしたらなにやら柔らかい感覚が。何だろうこr
「へ、変態!!」
頭にすごい衝撃を感じた直後、俺の意識は暗転した。
ぎりぎり毎日更新に間に合いました
……危なかったぁ