プロローグ③
降り立った広場には人が溢れていた。
一人でフィールドの方へいく人や身内を探す人、パーティーになろうと呼び掛ける人などだ。
「おーい!いまからフィールドいくけど誰かパーティー組まねえか?」
「このクエスト一緒にやってくれる人募集中!!」
「おい!!てめえ、俺の足踏んだだろ!!」
「ふーさんどこー?」
そして聞こえてくるのはそんな怒鳴り声や騒ぎ声、叫び声。
「うわー……、これすげえなぁ……。」
あまりの人混みと熱気に圧倒されかけるが、太平が西の方で待ってると言ってたのを思いだし、俺は移動を始めようとした。
だが、ここで1つ大問題。
「……西ってどっちだよ?」
さて、この世界には東西南北という概念はあるのでしょうか?
……た、たぶんあるんでしょう!うん。と、とりあえず地図見よ!!ええーっと確か地図を呼び出すには……
「《メニュー》!《マップ》!」
と発声すると、視界の端に広場全体が映し出されている地図が見えた。
プレイヤーを示す緑色の点が大量にあって気持ち悪い。それを押さえつつよくよく見ると、地図の端には東西南北がそれぞれ書いてあった。……よかったぁ、さっきナチュラルにフラグ建ててたけどセーフだったぁ。
と、不覚にもこの世界にも東西南北があったことへの安心感からその場に座ってしまいそうになったが、そういえば太平が待ってることを思い出したので西に向かって歩くことにした。
……でも、よくよく考えたら東西南北ってあってもなくてもいいな……。
ーーーーー
「おーい!!たーいへーい!!」
とりあえず歩いて広場の西まで来てみたものの、太平は見つからない。というより、人が多すぎて紛れてしまってる気がする。
迷子の時は動かない方がいいというが、この人混みのなかただその場に立ってるだけなのも大変だ。なので、とりあえず流れにそのまま流されとくかぁと思い、人の流れに乗っていく。
うつむきながら人の流れにふらふらと乗っていくと、あるところで流れが途切れた。
何だろうと思い前を向くと、もう広場の出口だった。
本格的に太平探さないとまずいなと思った瞬間、俺を呼ぶ声がした。
「おーい、泰邦ー!!こっちだーー!」
こっちってどっちだよと思いつつ、声がする方向を向くと太平が立っていた。
急いでそっちに駆け寄っていく。
「悪い、遅れた!」
「マジでな!すげえ待たされたわ!」
「……いやそこはそんなに待ってないっていうとこだろ……。まぁそれはおいといて、こっからどうする?太平。とりあえずパーティーでも組んでフィールド行くか?」
「うーん……。別にパーティーくんでもいいけど、今くんでも効率悪くないか?ほら、モンスターの湧出的に。後ここでの俺の名前はフラットだ。覚えとけよ!」
「うーい了解!……まぁフレンド登録だけしちゃおうぜ」
フレンドは、フレンド申請を出しそれを相手が承認することでなれる。フレンドになると、フレンドのログイン状況とどのエリアにいるかがわかり、またメッセージを送ることができる。
まぁとにかく、フレンドになっといて損はないので俺たちはちゃちゃっとフレンド登録を済ましフィールドに向かうことにした。
ーーーーー
広場から出て、しばらく歩くと町からフィールドに行くためにある【転移門】というものがあった。
そのでかさと人がどんどん吸い込まれていく感じにちょっとビビりつつも、そろーっと門を通るとそこはフィールドだった。やはりここも人で溢れかえっている。
まぁそろそろ別れたほうがいいかと思い、太平……じゃなくてフラットの方を見るとちょうど口を開く瞬間だった。
「そろそろ別れようぜ!俺あっちの方で狩ってくるわ」
「あぁ、いってら!じゃあ俺はこっちいくかな」
言葉を言い残すとフラットは東の方へいったので俺はとりあえず西の方へ歩いていく。
歩いていく
歩いていく
歩いていく
歩いていく
歩いていく
歩いていく
歩いてい
歩いて
歩い
歩
……って全然モンスターに遭遇しねえ!!
どうもモンスターは大分湧出しているが、いかんせんプレイヤーがかなり多いのでどんどん倒されてしまっているようだ。
「……どうしよう……」
ただただ歩いているうちに気づいたら最低レベルのモンスターしかいない草むら部分の端の方まで来てしまっていた。これ以上進むとモンスターが少し強くなる森のエリアになる。俺はまだLevel1なので明らかに草むらのエリアにいたほうがいいのだが……。
「……でも多分入っちゃわないとモンスターに遭遇することねえな」
俺は覚悟を決めて森のエリアに入ることにした。
「Level1短剣使い、ユウガオ行きます!!」
ごめんなさい、一旦ここできります。
便利屋になるきっかけの話は次です!