Toy-Box
小さな、小さな、子供がいました。
茶色い瞳の、子供がいました。
ぬいぐるみの大好きな、子供がいました。
いつも、いつでも、どこにでも。
手をつないで、連れていきました。
ぬいぐるみは、いつからいっしょか、わかりません。
どこからいっしょかも、わかりません。
ただ、いつも、いつも、一緒にいました。
おしゃべりをして、一緒にいました。
お出かけの時には、リュックサックに入れて。
家にいるときは、お気に入りのピアノの前で。
眠るときは、いつも隣で。
お風呂に入るときには、洗いっこをして。
いつでも、いつでも、一緒にいました。
一緒に居られない時には、きちんとおもちゃ箱にしまいました。
時間がたって、小さな子供は、大きくなって。
時間がたって、ぬいぐるみは、小さくなって。
茶色い瞳は、傷だらけになっていきました。
茶色い瞳は、濁っていきました。
大きくなった子供は、ぬいぐるみと、遊ばなくなりました。
お出かけすることも、なくなりました。
お話をすることも、なくなりました。
お風呂に入ることもなくなって、洗濯機に入れるようになりました。
おもちゃ箱に仕舞われることが、増えました。
大きくなった子供は、時間をかけて。
大人になって。
小さくなったぬいぐるみは、時間をかけて。
ぼろぼろに、なりました。
洗濯機にもまれ、ところどころ、ほつれて。
中の綿が、偏って。
不恰好になったぬいぐるみは、前よりも、小さく、小さく、まとまって。
おもちゃ箱の中に、仕舞われました。
袋に入れて、仕舞われました。
ぬいぐるみの声は、聞こえなくなりました。
いままで、一緒に寝ていた蒲団の中には。
ぬいぐるみではないモノが入るようになりました。
茶色い瞳は、傷ついて、とても、濁って、いきました。
そのまま、何年も、何年も。
長い、長い、年月が経ち。
大人は、おもちゃ箱を開けることはなく。
ぬいぐるみは、もっと小さく、小さくなって。
いつしか、処分されました。
おもちゃ箱は、大人と、大人の人の手で、処分されました。
時間をかけて、時間がたって。
小さな子供と、小さな孫ができました。
時間がたって、時間をかけて。
大人は、箱に入るときが来ました。
もう、大人は、話をしません。
その茶色い瞳は、動くことはありません。
以前は大きく感じた体も。
縮んで、縮んで、小さくなりました。
箱の中には、孫が置いた、ぬいぐるみがありました。
胸元には、花が、ありました。
箱は、窯の中に送られていきます。
周りの人は、泣いています。
箱はふたを閉じられ、釘が打ってあります。
布がかけられ。
真っ白でした。
小さな、小さな、孫が言います。
「とっても、きれいだね。お花が入って、ぬいぐるみも一緒で、幸せそうだね」
大人が聞きます。なんでそう思うのと。
「だって、おもちゃ箱みたいだから」
遠い、遠い、思い出を仕舞いました。
遠い、遠い、箱に仕舞いました。
きっと、開けることは、ありません。
もう、燃やしてしまいました。
僕も、もうすぐ燃やされます。
遠い、箱。