第7話
チリンチリン、と澄んだ音が耳を通り抜けた。
お願い、どうか出てきて。
そう願うと鈴が僅かに光を生み出し、その光源からは小さな美しい妖精が現れた。
「お久しぶりです、リリー様」
「こんにちは」
なんだか懐かしいその姿に思わず口角が上がる。
小さな体、尖った耳。
かつては、ほんの数年前までは私もこんな姿でいたのね。
「いかがなされましたか」
「……私ね、子供が出来たの。けほっ…でもね、体はやっぱりどんどん弱くなるの。
ねぇ、お願い。どうかこの子だけでも産ませて。
あと半年…そう、半年でいいから…私とこの子に加護をください」
「半年でよいのですか?」
「……貴方もわかっているでしょう?私たちがここで生きていけない理由を」
「そうですね…、愚問でした」
美しい妖精は恭しく頭を下げると何かを呟きはじめた。
恐らくまじないだ。
彼女がどれ程の力を持っているのかはわからない。
けどきっと、半年は持つでしょう。
それからは自分の運次第だ。
「あなた方に神のご加護があらんことを」
悲しく微笑んだ妖精にありがとう、と告げた私の声が震えていたのは気のせいだろうか。
「リリー様?」
扉を叩く音がする。
シャナがミルクと…きっと焼き菓子もつけて持ってきてくれたんだろう。
あぁ、幸せな時間が過ごせそうだわ。
年が明ける少し前、旦那様が帰還なさった。
「おかえりなさいっ」
およそ2週間ぶりの彼。
嬉しくて駆け寄ると彼は珍しく慌てたように捲し立てた。
「は、走るな!身重なんだぞ、転んだらどうする」
「申し訳ありません」
「なぜ謝罪しながら笑っているんだ。不安だ…君はちゃんとわかっているのか」
旦那様が心配してくださる。
それがとても嬉しくて口許がゆるんだだけなのに。
このお説教は長くなりそうだ。
「旦那様!!今日はご馳走だそうですよ、行きましょう」
「だから走るなと…」
彼は焦ったように私を追いかけてくる。
シャナや他の使用人の方々がなんだか笑いを堪えている。
幸せすぎて涙が出そうだ。




