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第9話



四月も終わる頃になると、さすがに暖かい風が吹くようになった。


もうそろそろ生まれる頃だとお医者様は心配そうに告げた。

お腹のはち切れそうな私に、シャナも旦那様もあれこれと世話を焼いてくれる。



シャナと一緒に縫い物をしながら、

美しく整えられた庭を見下ろして外の空気を恋しく思っていた時。



「………旦那様、」


「え、どうかなさいましたか?」


窓の外に映った、嬉しそうに笑う彼。

視線の先にはもちろん彼女がいる。


「ううん、なんでもないの。少し刺繍のところを間違えちゃった」


「リリー様が間違えるなんて珍しいですね」


ふふ、と小さく笑うシャナを見て私も口元を緩めた。

でも、確かに笑ってはいるのに心のなかは乾燥しきった頬のようにひりひりと痛んでいた。



あんな風に笑ってくれたことがあっただろうか。


彼が彼女に笑いかける度に私はそう繰り返した。

三年…いや、もう四年共に暮らしているのに、

「夫婦」という一番親い身分であるのに。


彼があんな風に私を見て、笑ってくれたことは一度もない。

絡む視線はいつもそらされた。

微笑むことはなく、いつもどこかぎこちない表情をしていた。


醜い感情が湧いた。

愛してもらえないと諦めていながら、それでも私は彼女に嫉妬してしまうのだ。

ーー頭が、痛い。



「リリー様何を見て…あ、旦那様とアリス様ですね」


「……ええ」


やめて、やめて、やめて。

聞きたくないの。


頭が痛い、胸が痛い、お腹が、痛い。


「お二人は仲がよろしいですよね、やはり……っ!!リ、リリー様!!?」


「……っ、い、痛い……いたい…っ!」


お腹が痛い、痛い、痛い痛い痛い!!


倒れるようにテーブルに額をこすりつけていた。

生理的な涙が視界を歪める。

息の仕方がわからなくなる、意識も混濁してしまって声もでない。



「だ、誰か!!お医者様を…!!早く!!」



シャナが叫ぶ声が聞こえて、意識が閉ざされていった。






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