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欲しいのは林檎とあなた  作者: 天嶺 優香
九 番外編
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とある間諜のはなし

 長い歴史を持ち、大陸一の領土を有する大国・ルクート。その次期王は相当な女たらしで、しかも愚かだと他国で評判である。

 彼の噂は尽きない。彼がまだただの王子であった頃に少し内情を調べてみると、それこそとある未亡人と親しい、下町の看板娘を口説き落とした、他国の姫が彼に入れ子んでいる等、色々な話がすぐに調べられる。

 しかし、そんな中、近年で最も話題となったのが彼が王太子になった頃の愛人騒ぎだろう。各国の貴族令嬢を囲み、王宮で遊び暮らしていたのはどこの国でも知られていることだ。

 だが、それはお互いの国の情報を交換し合う取引のために成されたもので、果たしてこれが愚かと言われる王太子の策なのか、堅実に国を治めてきた王の策なのかは、未だ不明だ。

 わかっている事と言えば、他国での噂は酷いものだが、国民からは最近人気を集めているということ。それは、小国から嫁いだ王女が妃に迎え入れられてからだ。美姫と名高い彼女はどうやら王太子を上手くたらし込んだのだとか。

 お妃様がいるから王子様はちゃんとしてられるのよ、とルクートの城下町にある八百屋の女店主がこぼし、それをきっかけに同意の声が次々に上がった。

 愛人を囲うという名目の情報交換を終えた今、王太子夫妻はとても仲が良いらしい。

 今日も、即位式の日取りが決まったとの事で、夫婦揃って城下町におりて町を見回るのだと言う。煌びやかな金髪を流して颯爽と歩く妃は、噂以上の美姫であった。

 花の散りばめられた柄の赤いドレスを身に纏う姿は今まで見た中でも容姿が圧倒的に群を抜いている。白い肌は日の下でとても眩しく、笑顔を浮かべて手を振る彼女から目を離せない。

 妃ばかり見ていても仕事にならないと思い、隣の王太子に視線を向けると、こちらも淡い茶髪に爽やかな笑顔が似合う美丈夫であった。元から整っている者は羨ましい、と少し嫌みに思う。自分もあれくらいの容姿があれば、あの妃を娶れるのか……と考え、その邪念を急いで振り払う。危ない危ない。

 この国は、次期王も、その妃も同様に人をたらし込む人種のようだ、と手元の紙に書き、自国へ報告しよう、と思った。

 だが、今はもう少しあの妃を見ていたい、と情報を探るという仕事を隅へ置いて、また妃の方へ視線を向けた。




 2014.09.10 天嶺 優香

なんか他の目線で、しかも他国からの立場から見ると……というものを書きたくて。次こそは夫妻の話を書きます。早くて今日中、もしくは今週中up予定です。

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