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欲しいのは林檎とあなた  作者: 天嶺 優香
九 番外編
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人肌のぬくもり

ぱちっ。

暖炉の中で燃える炎がはぜた。

アランシアはほどよい暖かさに調節された部屋で、窓際に立つ。


外は今朝からずっと降っている雪が積もっていた。


「綺麗だわ」


冬の寒さなど構わずに思い切りはしゃぎに行きたい。

疼く好奇心に耐えられず、背後に控えるポーラを見つめた。


「……少しだけでしたら」


主に甘いポーラは、子犬のように縋る目に耐えきれなかったのか、すぐに答えを出した。


「ありがとう、ポーラ!」


すぐにコートと手袋をはめて外へ駆け出した。

庭に積もった雪をブーツで、ざくざくと踏みしめながら空を仰ぐ。


頭上から落ちてくるふわふわの雪に感動していると、背後から雪を踏みしめる足音がして振り返った。


「凄い雪だね。下手したら埋まるかも」


軽口を叩きながらやってくる夫に、アランシアは首を傾げた。


「仕事じゃなかったの?」


「ちょっと休憩してるんだよ」


彼の執務室からここまでは少し距離がある。おそらく休憩という名のサボリだろう。

しかし、忙しい時間の合間にこうして会いに来てくれるのは嬉しくて、アランシアは微笑んだ。


「寒い?」


「いいえ、ちっとも」


寒いと言ったら彼は暖めるという名目でべたべた触ってくるに違いない。

意図を察してにこやかに否定するアランシアに、ゼイヴァルは肩をすくめた。


「寂しいね」


「朝まで一緒だったのに何を言ってるのよ」


ゼイヴァルは暇さえあればアランシアの元へやってくる。

朝も昼も夜も。

それが女冥利に尽きる事だとわかっているから、アランシアも強く拒絶できない。


「アランは寒くなくても俺は寒い。暖めてくれる?」


「お断りするわ。早く仕事を終わらせてきたら?」


遠まわしな言い方に、ゼイヴァルは微笑む。


「仕事を終えたら暖めてくれるって事かな?」


「そうかもね」


確約はしていないと言うのに、ゼイヴァルは実に嬉しそうだ。

輝くような笑みを浮かべている。


外はやっぱり寒くて、人肌が恋しくなる。

二人でベッドの中でぬくぬくと眠るあの心地が、酷く恋しい。


だから、早く仕事を終えて。

一緒に食事をして、寒さなんて忘れて眠りましょう。


雪が止むまでずっと側にいましょう。



 2014,07,18 天嶺 優香

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