3.通称『万屋』で
人気がある人の隣に並ぶのは、同等の人でなければならない。自分の顔は平凡で、聖さん達の中にいると明らかに浮くことは知っていた。素晴らしい特技があるわけでもなく、同等と言えるはずがない。それは今までの体験でわかっていることだった。そして、中学の時の友人曰く、『比較的容姿の整った人に好かれる性質』らしいということも理解している。今回も例外なく、そのパターンだった。ちなみに、その中学時代の友人もカッコイイ部類に入り、今は芸能人として活動している。自分のどこが良いのかわからないが、今までもそうだったのだから今更気にすることはない、と決心した。嫌がらせには慣れていたが、無いに越したことなない。
その提案を受け入れた。
「わかりました」
「じゃあ、部活の説明をするな。通称『万屋』、ということで決まったことをしているわけじゃない。私は運動神経がいいということから、運動部の助っ人をしている。学人は学習面でのサポートだ。聖はそれ以外、というところかな」
透さん、もとい透先輩は簡潔に淡々と言った。確かに『環境整備』だというのはピッタリだった。この学校は、文化部や一部の運動部は部員が少ない。大会の時に手助けするのは『環境』の『整備』に他ならない。
決まっていることをするわけじゃないなら、何をすればいいのか。無言で学人先輩を見た。
「まだ由宇のことを知らないから、当分の間仕事は回さない。当初の目的として、二ヶ月後にある文化祭の出し物を考えてくれ」
「ちなみに、去年は喫茶店をやったんだよー。紅茶専門で。写真があったはずだけど」
聖さんがきょろきょろと探している間に学人先輩はすぐに引き出しから写真を取り出し、差し出した。
そこにはウエーターとウエートレスに扮した三人が写っていた。真ん中で聖さんは腰に手を当ててモデルのように立って、左には学人先輩が姿勢良く立っていた。容姿が良いため、何を着ても似合っている。
一番意外なのは、透先輩がミニスカートだということだった。すらりと長い足を惜しげもなく晒し、ヒールの高いパンプスを履きこなしていた。長い髪は二つに分けて耳の横で纏められている。
この写真一枚を、何人が欲しがるだろうか。
「あー透を見てるね? このときは言葉も敬語だったから、ちゃんと女の子してたんだよ」