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25.文化祭の後で

 聖さんと透先輩が写真撮影に捕まっている中を抜け出し、学人先輩と二人部室に戻った。

 二人きりの状況は、今しかない。残っていた疑問を投げかけた。

「学人先輩は初めから犯人を知っていたんですか?」

「片岸はな。いつか行動を起こすと思っていた。まさか由宇に対してここまでするとは思わなかったが」

 悔しそうに眉を寄せ、学人先輩は中指で眼鏡を押し上げた。

 なんとなくわかった。真弓の忠告は、片岸部長と学人先輩が話していたのを見たことから始まるのだろう。号外発行のタイミングから犯人が推測でき、片岸部長と学人先輩の話の内容がそれを後押ししたのだと考えられた。

「片岸さんと何を話したんですか?」

「聖が由宇を気に入ってるって。大切にしてるって話したな。…だから余計に傷付けられたのかもしれないな」

「学人先輩が助けてくれたから、良いです。それに優勝できましたし。ところで噂の真相は?」

「噂は噂。内申点なんて嘘なのよ」

 いつから居たのか、入り口には緑川会長が立っていた。その横には聖さんもいる。

「噂が変に広まらないように、伊集院くんたちに協力してもらってたの。三年連続優勝したら噂の真相は謎のままだから、過剰な争いはなくなると思ってね」

 会長はそっと僕の右手を取った。優しい扱いに、彼女も後悔していることが伝わった。 この右手は犠牲の象徴になっている。

 この事件は、どこかに捌け口が必要だった。それが僕に向かってきて、右手の怪我だけで済んだのだから、悪くない結果だと思う。

「そういうことだったんですか。だから、会長が部室にいたときは先輩の表情が変だったんですね」

 会長はそのときの状況を思い出したのか愉快そうに笑った。それに対して、透先輩は顔をしかめ、学人先輩はため息をつき、聖さんは会長と同じように笑った。

「二人とも、あからさまだったよねー。今回は自由にやりたかったのはわかるけど、会長に失礼だったよ」

「聖さんも表情は固かったんですけど」

「由宇の責任が重くなるなって思って。優勝なんて考えずに、気楽に楽しくやりたかったから」

「会長のことは信頼してるし嫌いじゃないけど、由宇と一緒の最初で最後の文化祭だったから。まあ、楽しめたけど」

 透先輩のぶすっとした言い方に、思わず吹き出した。なんだか小さな子供みたいだ。でも、それは本当の意見だと感じられた。

 悪意に満ちた文化祭までの道のりが。右手を折られたことさえも。

 全て今日という日のためにあったと思えた。

「僕も楽しかったです。ありがとうございました」

 お辞儀をして顔を上げると、会長を含めた四人の笑顔があった。

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