19.クラスメイトたちが
教室に入ると、一斉に視線が集まった。同情する目が多数の中、明らかに負の感情が混じったものがあった。それは当然に受ける罰だと言っているようなもので。
そんなことに動じるほど、決心した事は軽くなかった。
クラスメイトの反応を無視し、一人の生徒の方へと向かった。
「妹尾さん、ちょっといいかな?」
声をかけられた妹尾は大きく肩を震わせた。しかし、それはすぐに軽蔑の表情に変わった。
「何?」
「妹尾さんは今日の号外を知ってた? 新聞部に入ったんだよね」
何故それを知っているのか、と顔に出した妹尾に、笑みで答えた。
情報網を甘く見てもらっては困る。『万屋』はほぼ全部といっていいほど部活のことは把握していた。誰がどの部にいるかなんて些細なことだ。
妹尾は溜息を吐いた。
「知らなかったわよ。朝部長に聞いたら、昨日急いで二、三年生で作ったって」
「ありがとう。記事を書いた人は知らなかったみたいだけど、僕の利き手は左手なんだ」
妹尾はそう、と弱い笑みを返した。その笑みの理由はわからなかった。「利き手を怪我したんじゃなくてよかった」なのか、「情報をありがとう」なのか。それ以外かもしれない。
しかし、はっきりしたことがある。
昨日のことに関わったのは二、三年生。そして、検討をつけていた新聞部員。
犯人の一人、佐川が確定した。
放課後、いつものように部室へ向かおうとした僕の肩を真弓が掴んだ。
「真弓くん…何か用?」
問いかけに、真弓は逡巡した。言うのを躊躇っているようだったので待った。少しくらい部活に遅れてもかまわない。
真弓は重い口を開いた。
「一宮さんには気を付けてください」
「学人先輩に? 何で?」
「…あの人は須賀くんの怪我に関わっていると思うんです」
思う、と言ったが、表情からはそうに違いないという確信があるように感じた。また「何で?」と返しそうになったが、聞いたところで真弓は答えてくれない。
ただ頷くことで答えた。真弓は安心したのか、いつもより少しぎこちない笑みを浮かべて去っていった。
発見されたときのあの学人先輩の心配そうにしていた様子は嘘だったのか。治療して家にまで泊めてくれたあの人が。
学人先輩を信じると、真弓が嘘を言ったことになる。しかし、真弓は何もなしにあんなことは言わないだろう。
どちらも信じたい。しかし、どちらも信じると結論は出ない。
複雑な思いを抱いたまま、部室へ向かった。