17.犯人は四人で
「学人先輩、この三人を調べてもらえますか?」
学人先輩の部屋に敷かれた客用の布団に入り、座った状態で机の前に座る学人先輩に紙切れを渡した。
差し出した紙には三人の名前が書かれている。一見ランダムに書かれた名前で、共通点がないように思える。しかし、一つの糸で繋がっている三人。一つの意図で、繋がっている。
学人先輩は一読して意味がするところがわかったようで、頷いただけだった。
「一人は確実なんです。でも、あとの二人は記憶と一致しただけなので曖昧です。動機は明らかなんですけど」
「わかった。まだ聖には秘密だな?」
「はい。まだ、います。この三人と結び付けた人物が。そして、その人は聖さんに関係している…」
共通点がない三人を結んだ人物がいるのは間違いない。そして、それが出来る人は限られている。有力なのがいるけど、なかなか尻尾を掴ませてくれないだろう。
学人先輩は僕の包帯の巻かれた右手に視線を落とした。
「聖は王子じゃないってことに気付いてない奴が多すぎる。その上、由宇を傷付けるなんて…聖をどうしたいんだ」
「理想にしたいんでしょう。押し付けて、それ以外を許さない。僕は見せしめですね」
嘲笑するように薄く笑うと、学人先輩は痛そうに微笑んだ。それから、椅子からベッドに移動した。もう寝る、という合図だった。
「僕で良かったんですよ。これで理由ができる。この怪我が僕と部を結んで、背後にいる人を引き摺り出せます」
「でも、これを聖は望んでいなかった。この結果が何を導くのか、誰にもわからないな」
電気が消えた。
学人先輩の「これで話は終わり」という合図に、目を閉じた。
意識を失っていた時間は睡眠とは違う。目を閉じた途端に眠りに引き込まれそうになった。明日から本格的に文化祭の準備に取り掛からなければならない。その体力を回復させることに専念した。
眠りに落ちる間際、学人先輩の声が聞こえた気がした。