【声劇】悪の組織採用説明会
声劇台本
登場人物
就活生…普通の大学生(男)
怪人サメホタテ…人事担当の怪人(性別不問)
小物くん…おバカな戦闘員(性別不問)
怪人ブラックカマキリ…喋り方の癖が強い(男)
地獄ドクター…じじい(男)
怪人ネコミミサキュバス…えっちなお姉さん(女)
就「ここか…えーと、悪の組織…株式会社ブラックカンパニー採用説明会会場…ふざけてんのか?」
就「まあいいや、どこ受けてもちっとも内定もらえないし…この際多少ブラックでも、後々転職すりゃどうにでもなるか…にしても本当変な名前の会社だな…何して儲けてんだ?」
サメ「あ、お待ちしておりました。本日は弊社の採用説明会にお越しいただき、まことにありがとうございます。私世界征服を目論む悪の組織、株式会社ブラックカンパニー人事部採用担当の者です、あ、どうぞ」
就「あ、名刺…どうも……って、え?……世界征服を目論むゥ?しかもお姉さん、名前…え?怪人…サメホタテ…ですか?」
サメ「はい、悪の組織ですので」
就「どう見ても人間…」
サメ「怪人って人間の姿にもなれるんですよ。えーと…仮面ドライバーとか観たことありませんかね…?」
就「ああ…いや、わかりますけど…」
サメ「まあまあ、詳しいお話はこれから始めますので、どうぞお掛けになってください」
就「はあ……って、あの、説明会、僕一人ですか?他の参加者は…」
サメ「いませんよ、悪の組織は秘密結社と相場が決まっていますから、あまり大っぴらにはこういうのやらないんです。とはいえ新しい人員も必要ですから、とりあえず後先なさそうな就活生に狙いを絞って採用説明会をやらせてもらってます!」
就「…あの、帰っていいですか?」
サメ「まあまあ、お気持ちはわかりますが、せめて弊社の福利厚生だけでも聞いていってください。悪の組織って…名前によらず実はか〜な〜りホワイトなんですよ?それに、他に就職先も見つからないのでしょう?」
就「!?…何でそれを!余計なお世話だよ!」
サメ「まーまーここで熱くなっちゃうから面接に落ちるんですよ、…(咳払い)さて、気を取り直して…まず単刀直入に、初任給で50あります」
就「へ!?ご…ごご50ですか!?…い、いや!そんなの絶対裏があるに決まってる!だって、悪の組織だし…!」
サメ「ええ、悪の組織だからこそ、これくらいやらないと離職率が高くなっちゃうんです」
就「離職率?」
サメ「わかりやすく言うと裏切り者ですね、せっかく改造したのに組織を裏切ってヒーローになっちゃうアレ、当時の給料も原因の一つだったんですよね〜」
就「え!?ヒーローってそんな理由でヒーロー始めてたの!?いや何それ!?すげー知りたくなかった!」
サメ「まああくまで理由の一つですよ。それから色々給与体系を見直して、危険手当とか危険手当とか危険手当とか…諸々の手当を重ねて今の給料まで引っ張りました。」
就「全部危険手当じゃないですか!…え、やっぱり、怪我したり…その、死んだりすることもあるんですか?」
サメ「あー…そうなる社員もいますね…ヒーローと戦うんで……あ、でもちゃんと労災降りますよ?」
就「そうなる社員もって…いや、労災云々の問題じゃないですよ!ていうか!そもそも犯罪者の集まりだし!!入るわけないじゃないですか!!」
サメ「おや、面接に落ちまくってる割には正義の心がしっかり残っていたんですね。ですが、犯罪者の集まりとはいささか心外です。世界征服って、頭ごなしに悪い事だと断じていませんか?」
就「違うって言うんですか!」
サメ「もちろん、考えてもみてください。世界中では飢えた子供達がいる傍らで彼らを搾取する大人がいたり、肌の色やら信じる神様の違い程度で殺し合いが繰り広げられている。そんな世界を誰かが1つにまとめ上げることができたなら、負の連鎖を断ち切れると思いませんか?」
就「え…ああ、まあ……何?悪の組織って、平和のために活動してたの?」
サメ「その通り!まあ、その為に世界中の人間を怪人に改造してしまおうというのが当面の事業内容にはなりますが」
就「やっぱダメじゃねえか!」
サメ「まあまあ、とりあえず私だけが話していても胡散臭いと思われるところでしょうから、こちら!実際に働く先輩達とリモートで座談会のコーナーを開始します!」
小物くん「あ、どーもどーもこんにちは!今年入社した戦闘員です、はい!」
就「うわあ!何だこいつ!変なマスク!」
サメ「おっと、いけませんよ、あなたの先輩に向かって」
就「先輩でも何でもないですよ!こんなコンビニ強盗モドキ」
サメ「えーと、では戦闘員くん、入社して感じた弊社のやり甲斐や魅力を伝えてあげてくれたまえ」
小物くん「うーんとねえ、えっとねえ…食堂のご飯が美味しい!」
サメ「でしょう!私も大好き!」
就「コメントが浅いわ!!」
小物くん「後はねえ、えっとねえ…ぐふふ、ライオンみたいな強い怪人にしてもらえたら嬉しいなあ」
就「あれ、社員みんなが怪人ってわけじゃないんですか?」
サメ「そりゃそうですよ、あなたヒーローもの観てないんですか?どの組織にも戦闘員はいるでしょう?それに、怪人作るのも楽じゃないんですよ?」
カマキリ「その辺についてはあっしが詳しく説明するでやんす!」
就「うわあああ今度はキショイ奴来た!」
カマキリ「失礼な!あっしは怪人ブラックカマキリ!!今度キショイなんて言ったら、この自慢のカマでバラバラにしてやるでゲス!」
就「う…嘘だろ、ガチの怪人かよ」
カマキリ「あっしら社員はみんなまず戦闘員からスタートするでゲス。それから2年間!良い働きをした戦闘員は晴れて怪人へと改造してもらえるのでやんす!」
就「良い働きって…例えば?流石に戦闘員じゃヒーローは倒せないだろ」
カマキリ「遅刻をあまりしないとか無断欠勤しないとかでやんすね」
就「そんなんでいいの!?」
サメ「ほら、うちって、まず仕事に出たら生きて帰れる社員もそんなにいませんから」
就「え、やっぱりぃ!?」
サメ「あ、口が滑った」
カマキリ「まあそんなこんなで晴れて怪人になったら強くなれるし給料も上がるしウハウハでやんす!この会社が続く限りあっしら社員一同は一生安泰でやんす!クェーッケケケケケ!!」
ドクター「なーにが一生安泰じゃ!浮かれおってからに!」
就「なんだ!?今度は干からびる寸前のミイラみてえなジジイだ!」
ドクター「まったく怪人っちゅうもんは手術台で横になっとるだけでぜーんぶやってもらえるんじゃから気楽なもんじゃわい!わしら作り手側の苦労なんて何にも知らんのじゃけえのう!!」
サキュバス「もう、おじいさまったら…あんまり大きな声を出すと、また血圧が上がっちゃうわ」
就「う…うおぉ何だ…何て度を超えたエロさのねーちゃんだ…」
サキュバス「あら、今日はわざわざ来てくれてありがと♡
このお爺さまは改造手術を担当してくださるお医者様の〈地獄ドクター〉よ。そしてあたしはこの会社の幹部、&(あ〜んど)かわいい新入社員の洗脳を担当している、怪人ネコミミサキュバスよ」
就「こ…この2人の手によって、この世に怪人がわんさかと…」
ドクター「怪人はもうたくさんじゃわい!いい加減ワシの後任をさっさと採用せえアホンダラ!ワシとっくに50年前に定年迎えとるんじゃぞ!!ワシを死ぬまで働かす気か!」
就「やっぱドブラック企業なんじゃねえか!!」
サキュバス「あら、それは誤解よ。ウチの会社は完全週休二日でシフト制の勤務体系。定時にはきっかり上がってもらって構わないし、残業代だってちゃんと出してるわ。さっきのカマキリくんや戦闘員ちゃんも、充実したアフターファイブを過ごしているわ」
就「そんな上手い話今更信じられるわけ…」
サキュバス「だって考えてもみて?ウチは体が資本よ、疲れ切った状態でヒーローと戦って勝てるわけないわ。それに人員だって無限大なんてことはないの、いい仕事の為には、きちっと休みを設けることは必須よ?そう思わない?」
就「そ…それはまあ」
サキュバス「そ・れ・に…私は社員の心のケアもお仕事の内なの、あなたすっごくカワイイから…是非ウチに来てくれたら、たくさんサービスしてあげるけど♡」
就「お…おほっ…え、いや、そんな…うぇへへ」
ドクター「嘘っぱちも大概にせんかい!!なーにが定時上がりの完全週休二日じゃ!ワシのことはどう説明するんじゃ!この定年過ぎて50年も働かされているこのワシは!!」
サキュバス「お爺さま、あなただけは特別ですのよ?現状では世界であなただけが素晴らしい改造人間を作れるんですもの、給料は破格の額だし、あたしのサービスだって…ね♡」
ドクター「おっ…おほっ…え、いや、そんな…うぇへへ」
サメ「はいはい!大人の時間はここまで!いやー幹部が来るといつもこうなるんですよ…で、弊社のことは大体わかっていただけましたか?」
就「え、いや、結局何してるかよくわかんなかったんですけど」
サメ「そうですね、仕事内容について端的に補足させてもらうと、〈ヒーローとの戦い〉〈改造人間、もとい新入社員を集める〉とにかくこの2つが軸になります。詳しくは入社後の研修や幹部からの洗脳もありますので」
就「えーと…何となくホワイトなのかもなってのは多少伝わったし、みなさん楽しそうに働いてるのはわかりましたけど」
サメ「けど?」
就「…やっぱり、僕は普通に就職して、普通の生活を送ります。それに、なんかすごいサラッと言ってますけど、洗脳って!絶対ヤバイやつじゃないですか!」
サメ「あ、その心配はありません、組織の理解度が深まるだけで、性格がガラッと変わるほどのものではありませんので。
まあ、たまに失敗してさっきの戦闘員みたいなアホが出来上がることもありますけど…」
就「ほらやっぱり!あの、ほんともういいんで、すいません!今日はありがとうございました!」
(立ち上がり、足早に歩き出す音)
就「ん?あれ…すいません、出口が、あのえっと…開かないんですけど」
サメ「それは当然です、組織の秘密を知った者を無事に帰すわけにはいきませんからね」
就「え、突然何言って…う、うわあ!怪人!?戦闘員達!どこから出てきやがった!?」
カマキリ「クェーケケケケ!悪く思うなでやんす」
小物くん「ぐふふ〜後輩できるのたのしみだなぁ〜」
サメ「みなさん、貴重な人材ですから、あんまり乱暴にはしないようにお願いしますよ」
就「何で!俺はただ呼ばれたから来ただけなのに!!」
サメ「最近はこうでもしないと人が集まってくれなくて…来年の採用活動は、あなたの就活の意見を活かして、より良い結果になるよう一緒に頑張っていきましょうね」
就「ふざけるな!嫌だ!やめてくれ!!助けて、誰か助けてえええ!!うわあああああ!!!」
ーーー
サメ「こうして、彼も今では弊社の立派な戦闘員として、世界征服に向けてコツコツと頑張ってくれています。何でも最近同期の女戦闘員の彼女までできたとか…いやあ、働くって素晴らしいですね」
サメ「おや、そこのあなた、どうやら一部始終聞かれてしまっていたみたいですね。あなたですよ、スマホの前にいるあなた、あなたに言っているんです」
サメ「そうだ!これも何かのご縁…近日中に弊社の採用説明会のご案内をご自宅まで送付させていただきます。これから就職活動をされる方や、中途採用も積極的に行っておりますので、ぜひ会場まで足をお運びください…うふふふ」
サメ「では、お待ちしております(ちょっと怖く)」
2022年10月2日 作




