表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?  作者: 古堂素央


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/49

第39話 格の違い

 税を取り立てる役場の者と領民との間で、小競り合いが頻発している。

 そのたびにポールは火薬の使用の許可を出した。


「ねぇ、ポール。どうしてみんな楯突くの? ポールとライラは未来の国王と王妃なんでしょう? むしろ敬わなきゃいけないのに、なぜそんな簡単なことが分からないのかしら?」

「目先のことしか考えられない愚民どもだからな。安心しろ、奴らにはきちんと俺様の尊さを思い知らせてやる」


 テーブルいっぱいに並べられた贅沢な食事は、あまり手を付けられることなく下げられていく。

 食材にこだわり見栄えを良くしないと、ライラの機嫌が悪くなり結果ポールの逆鱗に触れてしまう。

 これまでも、下げられた食事は使用人の間で分け合うのが慣習となっていた。

 だが食糧不足が顕在化してきている今では、奪い合いの勢いで最下層の者はほぼありつけない状況だ。

 そう言った感じで屋敷内でも、水面下で不平不満の声が上がってきている。

 それでも下町で暮らす者よりは好待遇だ。

 そんな打算の中で、シュナイダー家はようやく機能している状況だった。


「旦那様、本日は西地区で暴動が」

「またか。いつものように火薬で蹴散らせ」

「ですが火薬の在庫が尽きつつありまして……」

「なんだと? なぜ早く仕入れない?」

「それが……取引先の商会が、領民に危害を与えることが使用目的であれば、こちらに売ることはできないと……」


 もっともな主張に、しかしポールは片眉を上げた。

 淡々と報告してくる家令を、不満そうな顔で睨みつける。


「シュナイダー公爵家に物申すとは生意気な。一体どこの商会だ?」

「シュミット侯爵家が営む商会にございます」

「シュミット家が? いいだろう。お前たちでは当てにならん。俺自らが交渉に出向いてやる」


 どや顔で言ったポールは自身の能力を信じて疑わないようだ。


「大丈夫なの? 今外に出たら危ないのでしょう?」

「なに、心配は無用だ。俺は未来の国王だぞ? 誰もが喜んで俺を身を挺して守るに決まっている」

「そうよね! ポールほどこの国に必要とされてい人間はいないものね!」

「ああ、そうだ。それにどちらが上なのかを、シュミット家にはよく分からせてやらねばな。格の違いを見せつけてやる」


 不敵な笑みを浮かべ、ポールは颯爽と屋敷をあとにした。



 ♱ ♱ ♱



 エドガーは驚きもせず、屋敷のエントランスで突然の来訪者を笑顔で迎え出た。

 シュナイダー家もそろそろ動く頃合いかと、ちょうどエドガーも思っていたところだ。

 唯一意外だったのは、ポール本人が直接乗り込んできたことだ。


(それだけひっ迫してきているという証拠か)


 冷静に考えて、そ知らぬ顔で大袈裟に握手を求めた。


「これはこれはシュナイダー公爵。わざわざシュミット家に出向いていただくとは!」


 その手を振り払い、ポールはエドガーを睨み上げてくる。

 自分が軽く扱われるのが我慢ならないのだろう。


(それこそ自信の無さの顕れだな)


 内心そんなことを思いつつ、エドガーは快活な声で両手を広げた。


「本日はどのようなご用件で? 不躾に先ぶれもなく来られたのです。よほどのことがおありかと」

「御託はいい。今すぐ火薬の取引を再開させろ。そうすれば今回に限って俺に対する不敬は不問にしてやる」

「お断りします」


 自分の慈悲深さに酔っているポールを前に、笑顔を保ったままエドガーはすっぱりと返した。

 ポールは虚を突かれたような顔をしている。

 エドガーが泣いて喜びながら、平身低頭でポールに謝罪するとでも思っていたのだろう。


「貴様は何を言っているんだ? 己の立場が見えていないのか?」

「いやぁ、そのお言葉はシュナイダー公爵にこそ必要でしょう」

「なんだと!?」


 激昂するポールに対して、エドガーは軽く肩をすくめただけだ。


「山を切り開くためならともかく、領民に向けて火薬を使うなど……契約違反も甚だしい。そうお思いになられませんか?」

「奴らが先に牙を剥いたのだ! これまでの恩をあだで返しやがって! 正当防衛のために使って何が悪い!」

「これまでの恩、ですか」


 やれやれといった感じでエドガーは返した。

 その恩を地道に積み上げてきたのは、先代のシュナイダー公爵でありアンドレアだ。

 それをこの一年足らずで見事になかったことにしてしまった。

 それどころかマイナス収支で、未だ下落の一途をたどっている。

 財源を喰い尽くすスピードにも呆れたが、ここまでやらかして未だ自信満々でいられるポールの精神がエドガーには信じ難く思えてしまう。


「とにかく火薬はお売りできません」

「こちらの足元を見おって! いくらだ。いくら出せばいい!?」

「ですからどれだけ金を積まれようと、シュナイダー家にはお売りできないと申し上げています。例え一グラムであろうと、ね」

「貴様はそれでも人かっ。この俺自らが頭を下げに来たんだぞ!」


 いつ頭を下げられたのだろうか?

 人を食った態度で、エドガーは小首をかしげた。


「それにシュナイダー家にはライラもいるんだ。貴様の婚約者のライラがな!」

「おや、ご存じありませんでしたか? 彼女とはとっくに婚約破棄が成立しておりましてね。わたしもとうとう運命の伴侶に出会いまして、今は新婚生活を満喫しているんですよ。おかげ様で跡取りにも恵まれて、シュミット侯爵家の家督も継いだところです」


 満面のにっこにこ顔で言うと、ポールは言葉を詰まらせた。

 すぐに真っ赤な顔になって、よく聞き取れない意味不明な言葉を口から漏らし始めた。


「エドガー? 一体どなたがいらっしゃったの?」


 そこに様子を窺いに来たアンドレアが、運悪く顔を出してしまった。

 無防備に出てきてしまったアンドレアは、ポールの存在に驚き歩を止めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ