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デスゲーム ~デセプションシンク~ ①

 目を覚ましたら、知らない場所にいた。

 木の椅子に座っている。

 椅子は、円を描くように並べられている。

 私と同じような状況なのか、どうなのかはよく分からないが、並べられた椅子にはすべて人が座っている。

 私含めて10人かな。

 そして、その椅子の中央には一人の人物が立っている。

 白衣を着ている人。緑の髪にはピンクのメッシュが入っている。輝く水色の瞳や黒縁眼鏡。どこにいても目立ちそうな人だ。胸には名札らしきものが付いていたけれど、いまいち読めない。

 その白衣の人が話し出す。

「ようこそ、デセプションシンクのデスゲームへ。簡潔に言うとクイズです。ここでは思考力が試されます」

 私はその言葉を注意して聞いた。

 デスゲーム……

「まず一人一つ、役職を配布します」

 その言葉が放たれるや否や、四台のモニターがどこからか飛んできた。


一つ目の内容。

 探究者。クイズの正解を目指しながら欺瞞者を見つけ出す。

 10人中4人。


二つ目の内容。

 欺瞞者。クイズを正解させないように探究者を欺く。

 10人中4人。


三つ目の内容。

 神託者。一問正解するたびに欺瞞者を1人知ることができる。探究者が勝利すれば勝ち。

 10人中1人。


四つ目の内容。

 道化師。追放されたら1人勝ち。ゲーム終了時に生存していたら処刑される。

 10人中1人。


 なるほど、ちょっと、いや大分変わってるけど、要は人狼ゲームだ。

 ただ、欺瞞者が多い気もする。道化師がいるだけでだいぶ難しいのに。

 そう思ったのは私だけではないようだった。

「欺瞞者が多くないか?あと、道化師は必要か?」

 私の隣に座っている少年が手を挙げて発言する。

「はい、しかし、欺瞞者は、ほかの欺瞞者が誰であるのか知ることができません」

 中央に立つ白衣の人が優しい声で答える。

 なるほど、それならこの数も納得かもしれない。いや、それにしても多いけど。

「これから出すクイズに、皆さんは3分間話し合って答えを出してもらいます。正誤発表後、1人追放される人を決めてください。それは多数決投票です。追放された人はその場で死亡してもらいます」

 そうだった。これは、デスゲーム。

「欺瞞者は探究者を全員追い出したら勝ち、探究者は欺瞞者を全員追い出したら勝ち」

 なるほどな。これなら欺瞞者の数に完全に納得できる。神託者がいる分、探究者がやや有利だ。

 でも、思うんだけどさ。道化師が一番有利だ。最短でも4人追放しなきゃ終わらない。その中に入る。結構簡単な気がする。

「負けたチームの方は死んでいただきます」

 そう。あんまり実感がわかないけど。

 命がかかってるんだ。

「質問はありますか?」

 その言葉に、またもや隣の席の少年が手を挙げた。

「質問じゃないけどさ、開始前に全員に自己紹介してもらいたい。呼ぶ名前がないと超不便なゲームじゃん」

 たしかに、それはそうだ。

「分かりました。自己紹介終了後、役職配布、クイズ開始です」

 認められた。ありがたいね。

「助かる。僕は優希」

 少年が進んで自己紹介する。

「私は美香」

 私もそれに続く。

「武だ」

「昭です」

「あーし夏美」

「俺は誠だ」

「光琉だよ〜。よろ~」

「綾子です」

「大輔っていいます」

「私、真由美」

 そんな風に、一周回る感じで自己紹介をした。

 いや、覚えられないって。

「すみません、覚えられないので、全員発言の前に自分の名前を言ってくれると助かります」

 私は素直に頭を下げてお願いした。

「それな〜。あ、光琉だよ」

 そういう感じなら、いけそうだ。

「役職を配布します」

 白衣の人がそういうと、どこからか飛んできた10台のモニター。ここはどんだけハイテクなんだろう。

 モニターは一台ずつ、一人一人の前で止まり、役職を映し出す。

 私は探究者だった。まあ、可も不可もなくって感じ。

 みんなもそれぞれ役職を確認している。

「確認できましたか?」

 その言葉に全員がうなずく。

「第1問スタートです」

 そう言った白衣の人はいつの間にか椅子の輪の外側に出ていた。

 すると、モニターの画面が切り替わった。

 問題とタイマーが表示される。

『第1問:日本の歩行者信号で使われている色は?』

「綾子だよ、問題の前に、神託者名乗っとくね、追放しないでよ」

 そうか、このゲーム、欺瞞者側に探究者側の殺害手段がない。ゆえに、名乗って問題ないのだ。

「ちょっと待って、神託者は俺だ。あ、誠だ」

「真由美です。神託者です」

 まあ、欺瞞者も誰かは名乗ってくるよね。道化師の可能性もあるけど。

 本物が潜伏してないといいな。後から出て来られると面倒くさい。

「美香だけど、とりあえず、問題に正解しないと神託者は分からないから、考えよう」

 私は発言した。

「優希だよ。そうだね、歩行者信号っていうと赤と青だけど、そんな単純でいいのかな」

「光琉で〜す。ちょっと不穏だよね~」

 考えよう。歩行者信号はどう考えても赤と青だ。この問題のどこにひっかけ要素があるのか分からない。

「大輔です。赤と青な気がしますけど……ごめんなさい、やっぱ自信ないです」

「夏美的には一個あってればボーナス貰えると思うんだけど」

 夏美の思考は楽観的すぎる気がする。

 あ、これから全員敬称略するよ。

 なんか問題が難しいよ。ある程度難しくないと欺瞞者が困るから仕方ないんだろうけど。

「武だ。赤と緑って答えないといけない可能性はないか?」

 それはあり得るけど……?

「真由美です。あの、歩行者信号って一色じゃなかった気がするんです。人の絵のところって何色でしたっけ」

「昭ですが、使われているライトの色なら黄色もあるんじゃないかと思います」

 その言葉に全員が頷いた。確かに、それなら引っ掛け要素もある。

「優希だよ。答えは赤、青、黄色でいいかな?」

 良さそうだよね。

「待ってくれ、武だ。裏の裏みたいな感じで、普通に赤と青だったりしないか?」

 それもあり得るから怖いんだよね。

「美香です。でも、こういう場所で出る問題は直感的に解けるようにはなってないと思うよ。そうすると欺瞞者が不利すぎるから」

 私は意見を言う。

 武は納得したように頷いている。

 これで意見はまとまったかな。残り40秒くらい。

 私たちはその時間を黙って過ごした。

「時間切れです。解答お願いします」

 いつのまにか真ん中に戻ってきている白衣の人がそう言う。

「赤、青、黄色」

 優希がみんなを代表して言った。

「正解です」

 その声に、安堵が募る。

 モニターにも『正解』の文字が表示されている。

 ただ、このゲームの難しいところはここからだ。

「追放したい人に投票してください」


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