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デスゲーム制作所 ~クイズ課×???課~

 その後、50人ほどがループクイズに参加した。

 さすがにラフィは疲れてそうだ。

 キョウは途中で何度も休憩を促したのだが、ラフィはぶっ続けでやってのけた。

「生存者1名……もっとみんな頑張れよ」

 ラフィが悪態をつく。制限時間内にゴールできたのは、最初にデスゲームをした人のひとりだけだったのだ。

 現実を受け入れられずスタートにとどまり続ける者。

 5問目、7問目で正しい道を見つけられない者。

 最後の問題の答えに戸惑い、倒れる者。

 なお、キョウはドッペルゲンガーなので、生存『者』ではないらしい。

 ドッペルゲンガーって何なんだろう。

 キョウは納得がいかない。他の参加者はみんな同じ問題だったのに、自分だけなんか変だった、と。

 ラフィは報告書を書いている。

 参加者の様子、生存率。結構大変そうだ。

 キョウは手伝いを申し出たが断られた。

 ラフィは報告書の裏にこっそりとつづった文字を見られたくないようだ。

 裏に書いてあるのは、エニグマに頼まれた、キョウについての話。

 そんなこんなで報告書を書き終えたラフィは立ち上がり、伸びをする。

 そして、その辺に置いちゃった眼鏡を探す。

 エニグマはうるさいから、ゲーマス中は絶対外す、とラフィは心に決めている。

 そして、ラフィは思い出す。勢いのまま三つ編みをほどいてしまったことを。

 ラフィは髪を結んでいたリボンを拾い上げ、キョウに渡す。

「三つ編みほどいちゃった、戻して」

 ラフィはキョウに言い放つ。

 キョウは顔を顰めている。

 ラフィはそんな彼にイライラとしたのか、追い打ちをかける。


「私の命令がきけないの?」


 キョウは驚いた。ラフィの圧力が思いのほか強かったからであろうか。

 仕方なく、ラフィの髪を二つに分け、三つ編みをする。

 そして、ラフィは満足したのか、キョウの手を引き、軽い足取りで部屋を出る。

 もちろん、向かった先はデスゲーム製作所のクイズ課。

 クイズ課の扉を開くと、ミラが誰かと喧嘩していた。相手はなぜか甲冑の金髪の女性。

「あなた、一問も解けないとは、今までよく生きておられましたね」

「なめんな、もう一回じゃんけんするか?」

「うるさいです。それはただの運ではありませんか」

「だから何?お前が全敗だっていう事実は変わらないけど」

 そして、エニグマの横には見慣れない人物がいた。

 水色の髪を一房だけ頭の横で結んだ少女。爛々と輝く紅の瞳。黒を基調としたドレスのような服。

 クイズ課の人じゃない。

 キョウはクイズ課じゃない人がこの場にいるのを初めて見たようで、不思議がっている。

 ラフィは違った。

「ママ!」

 そう言いながら、ラフィは少女に飛びつく。

「ラフィ」

 少女はそんなラフィを優しく抱きしめる。

 エニグマは呆れている。そして、ますます不思議そうな表情をするキョウへ説明した。

「彼女はフィレシ……」

 そこでエニグマの口が止まる。少女が鋭い目でエニグマを睨んでいた。

 そして、少女は自ら口を開く。

「我の名はフィレシア。理不尽課の課長である。ドッペルゲンガーに会うため、わざわざ出向いてやった。光栄に思え」

 キョウの疑問は深まっていく。理不尽課?聞いたことがない。

「ラフィ、ちょっとフィレシアと……様と遊んで来い」

 エニグマがラフィに話しかける。フィレシアに睨まれる中では、彼女を呼び捨てにすることができないらしい。

「やった!ママ!行こう!」

 ラフィがフィレシアを連れて部屋の外へ出ていく。フィレシアも嬉しそうに付いていく。

「ミラ!」

 エニグマが大声でミラを呼び寄せる。

「はい、また私の勝ち系だね。ん?呼ばれた?」

 ミラが不思議そうにエニグマのもとへ。

「あいつ自身が言ってたが、あいつはフィレシア。ラフィの母で、理不尽課の課長だ。って、理不尽課って言っても分からないよな。理不尽課っていうのは、一言でいうとゴミ課だ」

 ミラがその言葉に吹き出してしまっている。

「そこまで言われるレベルっていうのも気になるw」

 理不尽課の印象が強すぎて、ラフィの母であるということはスルーされたようだ。

 エニグマは説明を始める。

「理不尽課のデスゲームはな、ルールなんてない。ゲーマスが気に入らないやつを殺す。以上だ」

 キョウは思う。たしかに、理不尽だ。

「つまり、あいつ自身が理不尽の塊ってことだ。そして、あいつはお前らドッペルゲンガーに会いに来た。何の用事かは私も知らないが、厄介ごとには変わりない」

 ミラは首をかしげる。

「私らはたしかにドッペルゲンガーだけどさ、人間とあんまり変わんなくね?てか、記憶ないし」

 そう、キョウもミラも、自身が鏡のドッペルゲンガーのデスゲームに参加させられる以前の記憶を消されている。

 名前も、エニグマが鏡っぽい名前って言って、適当につけた感じだ。

「記憶ないのは普通じゃないと思います」

 キョウはミラに反論する。

「記憶……」

 ミラは何やら考え込んだ。

「私としても疑問です。さっき、ループクイズをやって思いました。なんであんな知識を持っていたんだろうって」

 キョウも過去に思いをはせる。

「おい、話逸らすな、来るぞ!」

 そんな二人をエニグマが叱責する。

 その次の瞬間、クイズ課の扉が外から開かれる。

「我は用事があってここに来た。それは、ラフィにあうことだけじゃない」

 そう言いながら中に入ってくるのはフィレシア。ラフィもその後ろを付いてきている。

 キョウとミラは思わず身構える。

 そうさせるくらいの力が、彼女の目にはあるのだ。

「我らを手伝え」

 ミラが一歩前に出る。

「悪いが、私はじゃんけんであいつを負かさなきゃいけない」

 ミラが悔しげな顔で新たなクイズを考えている甲冑の人、アイカを指さす。

 すると、フィレシアの目が冷たくなった。そして、一言。


「我の命令が聞けぬと申すか?」


 それを見て、フィレシアの頼みを断れるものなどいなかった。

 さすがのミラも萎縮し、キョウは冷や汗を流している。

 キョウの中で、ラフィの言葉がフラッシュバックしたのだ。

『私の命令がきけないの?』

 本当に、親子だ、と思った。

 とにかく、キョウもミラも、フィレシアに促されるまま部屋を出て、どこかへ連れていかれた。

「ママ、また来てね」

 ラフィはそれを名残惜しそうに見送っていた。

「……」

 他の者は、静かにしていた。

 理不尽課に連れていかれれば、何されるか分からない。

 生きて帰ってくる保証なんてない。

 でも、フィレシアを断ることはできない。

 つまり、目をつけられた時点で終わりだったのだ。

 二人は、どうなってしまうのだろうか?


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