第十八話:知る危機
伽那達はベンチに座っていた。
「なんか……諸星達、随分遅いね」
座ってからゆうに1時間は経過していた。
しかし、一向に諸星達の姿は見えない。
「広いから、探検に時間がかかっているんじゃなかい?」
少し不安げな伽那に対し、久遠は呑気に答えた。
「でも、1時間も音沙汰なしだよ?……流石に不安じゃない?」
伽那が言うと、隣でベンチに座っているナナが真剣に頷いた。
「私もそう思う。そろそろ行ったほうがいいんじゃない?」
「ナナはもう動けるのかい?さっきまでひどい様だったのに」
「うん、もう大丈夫だよ。ありがとう、二人とも」
ナナが感謝の意を示すように軽くお辞儀をすると、伽那が慌てて手を振った。
「いやいや、全然気にしなくていいよ! 無事に体調戻って良かったよ」
笑顔で伽那がそう言うと、ナナも応じるように笑顔を向けた。
「うん。もう元気だよ! だから行こうよ!」
ナナが元気よく声を張り上げると、久遠が面倒くさそうに肩を竦めた。
「えー……もう少し待ってからでよくないかい?
私は今、作業しているんだ」
「作業? 何もしてないように見えるけど」
「私もそう見える」と、杏花が首を傾げる。
ナナと伽那、杏花が訝し気に久遠を見る。
事実、久遠は立っているだけで、特に作業と呼べるような行動をしているわけではなかった。
「考えるという作業さ。考えるというのは時に相応の労苦を伴うものだ」
「……考えるだけでしょ。どこでもできるじゃん」
「お姉ちゃんの言う通り」
ジト目で見られても、久遠はどこ吹く風のような表情を崩さない。
「兎に角、もう15分くらい待とうのでどうだい?」
「なんで15分?大して変わらない気がするんだけど」
「感覚ってやつさ。これで大きく変わるかもしれないじゃないか」
それを聞いた伽那は深い溜息を吐いた。
「分かったよ。あと15分だけだよ。僕としてもこれ以上は待てないよ」
「感謝するよ、赤坂」
久遠は満足気にナナの隣へ強引に腰を下ろす。
白衣のポケットに手を突っ込んだままという器用さを発揮していた。
三人用のベンチに、ナナは伽那と杏花、さらに久遠に挟まれて少し窮屈そうだった。
言社はというと、一人離れたベンチでぼーっとしていた。
その状況が沈黙と共に続くこと暫し。
「……暇だね」
伽那が雲を見つめながらそう呟く。
「私は忙しい」
久遠が即座に返答する。
しかし、ナナと杏花も同じく暇そうに不満げな表情を浮かべた。
「私も暇……」
杏花がぼそりと呟くと、ナナが勢いよく賛同した。
「私も暇! 何かしない?」
その時――
『――なら、しりとりはどうかな?』
「ひゃッ⁈」
突然背後から聞こえた声に、ナナだけが飛び跳ねた。
伽那と杏花は知っているような表情で、久遠は僅かに驚きつつも平然としていた。
「那岐さん、起きたんですか?」
『あぁ。恥ずかしながら、寝ていたよ』
那岐は笑みを浮かべながら言う。
「後ろで寝ていたのか。
それで、”しりとり”というのは何だい?」
久遠が知らないな、と首を傾げる。
すると、伽那が驚愕の表情を浮かべた。
「え⁉ しりとり知らないの?」
「ああ、知らないな。昔の遊びか何かか?」
「そうだけど……今でも結構有名なハズなんだけどね」
伽那がそう言うと、ナナが声を張り上げた。
「私も知ってるよ!しりとり」
ナナが張り切ってルールを説明する。
『――うん。そういう感じ。暇つぶしにはちょうど良いと思うのだけど』
「確かに、ちょうどいいかも。折角だしやろうよ」
「私はしりとり好きだからやりたい」
杏花がそう言うと、隣で久遠が深く頷いた。
「そうだな」
「いや、久遠は”考え事”で忙しいんでしょ?」
伽那に突っ込まれ、久遠は一瞬悔し気な表情を浮かべた。
「くっ……私は今、考え事が終わったから問題ないんだ」
「ふーん……」
ジト目で見られて視線を逸らす久遠。
「ま、折角だしやろっか」
「そうこなくては」
「じゃ、僕からね」
そう言って、最初の言葉の為に口を開こうとした瞬間。
ショッピングモールから一つの人影が物凄い勢いで駆けてきた。
「あれ……石川さん?」
「みたいだな。一人で鬼の形相で全力疾走だ」
やがて、走ってきた人影――石川は加那達の前で膝に手をつき、荒く息をついた。
「ぜぇ、はぁ……ひぃぃぃぃいい……こ、怖かったぁぁぁぁあ!」
作者のインタビュー★★(o^―^o)ニコ
「―――因みに夢は何を見ていたんです?」
『競馬をしていたよ。いやはや、葦毛は怪物というのも頷ける』
「……葦毛?」
『そう。記念レースもあるくらいだ(未来の話です。彼らの時代ではできてるんです)』
「はぁ……」




