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ジーン・ウォーズ  作者: おおは
第三章:旅路の凱旋
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第十五話:冒険は得てして静かに始まる

冷えきった世界の片隅で、加那達は慌ただしく動き回っていた。

その傍らには、大型バスが停まっている。

エンジンはすでに唸りをあげ、静寂の世界で小さな小さな灯のように音を鳴らしていた。

周囲には、荷物らしき大きな段ボールが積まれている。

勿論――食料や工具などが入っている。

 「さて、大方準備は終わったようですね」

諸星はその区画の一角で、満足気な笑みを浮かべていた。

 「そうだな。しかし、私まで荷物運びをさせるとはどういう了見だ?

   私は非力な弱者だぞ。少しは労われ」

ニヤつきながら文句を言う久遠に、諸星は肩を揺らして笑った。

 「はははっ。老人みたいな事言うのはどうなんです?まだ十代でしょう?」

 「それがなんだというんだい? 非力なものは非力なんだ」

久遠は壁に背を預け、軽く肩をすくめる。

 「非力は否定しませんが、弱者というのはどうなんですかね」

諸星が苦笑しつつ、久遠の白衣のポケットを指さす。

 「いつもそこに何か仕込んでいるでしょう? そんな人間を俺は弱者だとは思いませんがね。弱者は天然産です。」

 「フンっ。それを知ってるお前も末恐ろしいな。ただの自作の護身用だ。気にするな」

それを聞いた諸星は興味深そうに口端を上げた。

 「委員長―――! 準備終わったよ―――!」

久遠と諸星が声の方を見ると、荷物を積んでいる辺りから、加那がこちらへと手を振っていた。

 「分かりました―――!では、バスに荷物を積み込んで下さい―――!」

 「了解―――!」

加那が、再び段ボールを抱えて、バス車内へと消えていく。

その後ろを、静かな杏花と言杜が追って同じく消えていく。

 「――さて、俺たちも行きましょうか。そろそろ出発としましょう」

諸星が笑みを浮かべ、バスへと向かう。

 「あぁ、そうだな」

久遠も壁から離れ、後に続いて歩き出した。

 

*     *     *     


久方ぶりに大型バスに乗り込んだ加那達は、出発前からすっかり上機嫌になっていた。

 「皆さん、おはようございます〜。本日は諸星観光バスをご利用いただきまして~ありがとうございます~!」

備え付けのマイクを手に取り、伽那が調子のいい声を響かせる。

 「あははっ! 雰囲気でてる!」

ナナが腹を抱えて笑う。

 「人の名前を勝手に使わないでください!」

入口から、諸星の大きな声が飛ぶ。

 「クククっ……まぁ……クッ……そうカッカしなくても、いいじゃないかっ」

 「そうだよ。別に著作権もプライバシーも侵害してないじゃないか」

不満気な視線を向けられた諸星は、溜息を一つ、眼鏡を押し上げた。

 「そういう問題ではないのですが……まぁいいです。

   勿論、準備はちゃんとできているんですよね?」

 「そりゃ勿論。流石に終わってなくて遊びはしないよ」

当たり前、といわんばかりに胸を張る加那。

 「私も既に終わっている。準備万端だ」

 「なら結構です。もう出発しますよ」

諸星が少し真剣な表情を浮かべながら、自身のメガネを指で弾いた。

 「分かった。あ、そういえば、誰が運転するの?」

 「あぁ、そのことですか。運転手はちゃんと用意しています。まぁ、免許は持っていませんが」

 「え……免許ないの?」

ナナが不安げにそう呟くが、諸星は問題ないです、と言う。

 「どうせ免許なんてもう意味を成しません。運転できればいいんです。運転できれば」

 「……委員長らしからぬ発言だね」

加那が苦笑しながらそう言うと、

諸星も自身でそう思っているのか、苦笑いしながら頷いた。

 「まぁ、そうですね。しかし、今回の運転手は腕は確かです」

 「腕は……?」

 「そうです。なんでも、実家がF1レーサーの家系だそうです」

 「へぇ、いったいどんな人なんだろうね……!」

ナナが目を輝かせた、その時―――

 「たぁのもぉー!」

 「ぁ、小谷君……駄目だよ……そんな態度じゃ……」

バスの入口から大きな声と小さな声が木霊した。

 「あ、噂をすれば」

諸星が入口へと視線を向ける。

それにつれ、加那達も視線を入口へと向ける

 「紹介します」

入口から通路へと上がってきた二人に手を向け、諸星は言う。

 「こちら隣町の、小谷君と石川さんです。今回同行していただくことになりました」

 「おう、よろしくな」

紹介された小谷は、笑顔で親指を立てる。

 「よろしく……です」

石川は、恥ずかしそうに下を向いて言った。


*     *     *     *


 「それじゃ出発するぜ~。お、オートマか。ミッションが良かったぜ」

小谷がそう言いながら、アクセルを踏んだ。

バスが唸り声を上げながら、その重たい体を動かし始める。

その中、通路に立つ諸星はメガネを押し上げた。

 「では、北海道に向けて出発と行きましょうか―――」


ここから第三章です。第三章からは実質本編と言っても過言ではないので、頑張って書いていきます( ´∀` )

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